第二十八話 相性最悪⑧
俺は下にいるおっさんに向かって飛び降りた。着地と同時におっさんの頭を掴み、再び飛び降りて顔面を地面に叩きつける。そういう考えだったが、不測の事態が起きた。
着地の衝撃でおっさんの座っていた枝は耐えきれずに折れたからだ。さらにおっさんの頭を掴むこともできなかった。
咄嗟に俺は指を木にめり込ませて落下の勢いを殺し、ゆっくりと着地した。それに対し、おっさんはそのまま落ち背中を地面に叩きつけていた。
「あとは任せた。戦うも餌になるも自由にしろ。ただ、逃げたら殺す」
返事は返ってこなかった。そのまま動かないつもりなら獣に殺されるだけ。
俺は再び木に登り、適当な枝に座っておっさんと獣を見下ろした。
ピクリともしないおっさんの頭を掴もうと獣が手を伸ばす。が、おっさんは咄嗟に飛び起き獣から距離をとった。それからすぐにどこかから黒い何かを出した。
ドロップキックされたり背中から落ちたのに何故あそこまで動けるんだ?
「なあ、私がこの獣倒してやるから一つ頼みを聞け」
何言ってんだこいつ。頼みを聞く気なんて一切ないが、正直に言えばまた面倒くさくなりそうだな。
「考えておく」
そう言うと、おっさんは「そうか。分かった」と返事をした。それと同時に、手に持っていた黒い何かを俺に向かって投げた。
それを取ろうと手を伸ばしたが、黒い何かは俺の足首辺りの高さまでしか飛ばず、キャッチはできなかった。
もう少ししっかり投げろ。
ため息を吐きながらそれが落ちていく様子を見ていると、突然消えた。
黒い何かもだが、その近くでゆらゆら揺れて落ちていた木の葉も。俺の座っていた木の幹も。
幹の一部がくり抜かれ消滅した事で木が倒れ始める。
咄嗟に近くの木の飛び移ったが、移った先の枝がミシッと音を鳴らした。
早く移らないと。そう思い跳ぼうとしたが踏み切った瞬間枝は折れ、力は枝にほとんど伝わらず空を切った。
これは流石に死んだか。
自分の死を受けいれ、頭から落下していく中で、目に映る景色を眺める。
獣の姿はない。死角にいるのか?
おっさんは何を考えているのか、俺の方へ駆け寄ってくる。落ちてくる俺をお姫様抱っこでもしてくれるのだろうか。それとも身を呈して俺のクッションになってくれるのだろうか。
……ありえないな。
おっさんは走って近づいてきたかと思うと、大きく跳び俺の顔面にドロップキックをかました。
顔面に綺麗に決まったからか、おっさんのドロップキックの威力が異常に強かったからか。落下の勢いが大分減らされた。
そして地面に顔面を擦りつけるようにして地上に落ちた。




