第二十三話 相性最悪③
俺は気味の悪い液体に触れないようにしてハゲの死体を掴み、獣の近くに投げ捨てた。だが、おっさんという目の前の獲物に夢中なのか、死体には見向きもしない。
できることはこれだけ。
「やる事はやった。あとはお前がなんとかしろ」
「だから私は余裕がないって言ってるだろ! あんたがどうにかしろよ!」
「お前が標的になっている。お前がどうにかするしかない」
「私が標的になってるのは分かりきったことだろ! その辺もどうにかするのがあんたの役目だろうが!」
「そもそもだが、獣の殺し方を俺に話す必要はない。標的になってるお前が倒せばいい」
「その作戦は私一人じゃ無理だ」
奴隷のくせに何を言っている?
「お前がやれ!」
俺はおっさんの顔に向かってドロップキックを決めた。それからすぐ立ち上がり、俺はおっさんの体を担いで獣から離れる。
投げ捨てたハゲに獣が食いついたかどうかは分からない。そんな事を確認している時間はないのだから。
走ってできるだけ距離を稼ぎ、適当な家に隠れた。
「暗いな」
おっさんを壁に寄りかからせ、外にあった灯りを手に取り室内を照らす。
ようやく話ができると思ったが、部屋の隅に見知らぬガキがいた。膝を抱え震えながらこちらを見ている。俺は首を握り潰してガキを殺した。
「よし」
邪魔な人間は消した。にしても、まだ獣が近づいてくる気配がない。上手く餌に飛びついたか。
「おい、時間は用意した。早く教えろ」
返事が返ってこない。それどころか、おっさんの身体は力なく倒れている。気絶でもしているのだろうか。
両肩を掴み「起きろ!」と何度も言うが、全く返事をしない。
はっきり言って、別に獣を殺せなくてもその場から逃げられればいい。だが追いかけてきた場合、俺には手の打ちようがない。
だから殺す手段があるなら殺すに越したことはない。そう思っていたが、このままでは逃げる道しか残されていない。
逃げるならおっさんはここに置いていく。いても邪魔なだけだ。
ここに置いていけばおっさんは恐らくあの獣に殺される。
だからその狼の被り物は俺が貰う。ついでに顔でも見ておくとするか。




