第二十二話 相性最悪②
また同じように加勢しても聖者の涙を無駄に消費するだけだ。しかも聖者の涙は残り一つしかない。触れないことが絶対条件。
だがひとつ疑問点がある。何故おっさんの短剣は溶けない? 触れている時間が短ければ溶かされないのか? それとも……まあどうでもいいか。俺が考える必要はない。勝ち筋はある、とおっさんは言ったのだから。
俺は俺のやりたいようにやればいい。
適当に燃えている薪を掴み、獣に向けて投げつけた。
薪は獣に触れても溶けず、体毛に火が移った。このまま燃え広がってくれれば、と思ったがそう上手くはいかなかった。
獣の呻き声が空気を揺らし、身体についた火を消した。人間から獣になった時も同じようにして身体の火を消していた。
こんな簡単に消されるのなら、この方法は使えない。本当に勝ち筋はあるのか不安になる。
「おい、右手は治った。勝ち筋ってやつを教えろ」
「少し待て。こいつの相手で手一杯なんだ。今話す余裕はない」
「余裕がないならこの声はなんだ?」
「理解しろ!」
少しからかっただけなのにそこまで怒るか。
「お前から注意をそらさせればいいんだろ」
「あぁ、頼む」
方法ならひとつだけある。上手くいくかは分からないが。
獣はさっき、俺の溶けた手を舐めていた。腹が空いているのかもしれない。
同じ条件にするためにハゲの溶けた顎を獣の前に出すべきなのだろう。
だが俺には触る勇気がない。触れたら変な病原菌が伝染る、絶対に。




