第二十一話 相性最悪①
面倒だ。失敗したかと思っていた儀式が成功していたことは嬉しい。だが、後始末に俺も参加しなければならない、と考えると少し憂鬱だ。
失敗すればよかったのに、と思ってしまう。というかよく考えてみれば一人目の生贄が獣になる瞬間を見ていない。
この獣は無意味な存在だ。さらに言えば姿も全く同じで面白味に欠ける。
何故生きているのだろうか。あのまま焼け死ねばよかったのに。
俺は後から現れた獣に近づき、腹を殴り拳を中に入れる。それから腸を引き抜き、ついでに空いた左手で首を握り潰した。
「終わった。そっちはどうだ?」
「少し待て。意外と強いんだよ!」
獣の爪による攻撃を短剣で防ぐだけ。片腕しかない獣に対して攻撃に転じられないおっさんを眺めながら、俺は引きずり出した腸を食べていた。
獣の攻撃は隙だらけだ。何故反撃しないのか。俺は腸片手に、加勢でもしようかと獣に近づくが「来るな」と止められた。
だが、俺が加勢しなければ状況は変わらないだろう。俺はおっさんの言葉を無視し、獣の首を掴んでそのまま力を入れて握り潰そうとした。が、突然俺の手が溶けだした。
首を握り潰すことはできず、手首から先が完全に溶けてなくなった。
「おい、これはなんだ?」
「だから来るなって言っただろ。あいつに触れると溶けんだよ」
「先に言え」
「言う前に動いたからだろ!」
「それはいいとして、どうする?」
「勝ち筋はあるが……ってかこんな状況でのんきに食事するな。それと手は治しとけ。終わるまでは私があれの相手をする」
獣は俺達に目もくれず、溶けた俺の手を舐めている。今、下手に手を出すと危険なのでは? と思いながら俺は腸を口に咥え食べながら、聖者の涙を手首に垂らす。
垂らした箇所に少しだけ肉片ができる。そしたらまた少し聖者の涙を垂らして肉片や、場所によっては骨片ができるのを待つ。それを何度も繰り返し、手を再生させる。
完全に再生した頃には、ハゲから取り返した聖者の涙が無くなっていた。
手を治すだけでこんなに消費……勿体無い。
口に咥えていた腸を噛みちぎり呑み込んだ後、ふと周りを見ると獣とおっさんが勝手に戦闘を始めていた。
余計なことを。手を出さなければ何もしないのに。多分。




