第十七話 鬱くしい作品
陽が昇り朝が来た。灯りのない場所も今ならよく見える。こちらに向かって歩いてくるおっさんの姿もよく見える。
俺は食事をやめ、生焼けの肉を持って立ち上がる。
「遅かったな」
「あんたがくれたキノコ、不味かったしどう考えても毒だ。夜中に腹を壊したからな」
昨日の俺の腹痛はそれが原因か。
「……俺も腹を壊した。お互い様だ」
「別にあんたを責めちゃいない。おかげで一睡もできなかったがな」
どう考えても俺を責めてる。一睡もできなかったのは俺のせいだと言っているようなものだ。
謝る気はない。お互い不幸だっただけだ。
「あまり気にするな。これでも食え」
生焼けの肉をおっさんに渡した。生焼けとは言っても、まだ口をつけていない肉の中で一番焼けている。
「すまないな。だがその前に聞きたいことがある。これはなんだ?」
「肉だ」
「そういうことじゃない。この状況についてだ」
「一から説明しろと?」
「ああ」
「俺を殺そうとした。だから殺した」
「……もう少し詳しく」
面倒だな、と思いながらうつ伏せに倒れている村長に座り肉を食べる。
とはいえ隣に立たれては食べづらい。頬張った肉を呑み込んでから、おっさんに「とりあえず座れ」と促す。ついでに「それは生焼けだ。焼いておけ」とも言っておく。
おっさんは言われるがままに座り、手にしていた肉を焼き始めた。
このまま肉を食べながら適当な会話をしていれば、面倒な説明をしなくてすむ。
「肉はまだある。遠慮するな」
「ああ。そんな事よりもあんたは何をしたんだ? どうして殺されそうになった?」
「その頭を取らなきゃ食べられない。外せ」
「お気遣い感謝する。だがまだ肉は焼けてない。取る必要はないだろう。それで、私の質問には答えてくれないのかな?」
しつこい。
「どうしてそこまで聞きたがるんだ?」
「あんたはあれを気にならない人間がいるとでも?」
十字架に吊るされたジジイと、十字架に縛り付けられ右腕を落とされた男二人。その二人は頭から血を被っている。そんな彼らに顔を向けながらおっさんはそう言った。
確かに気にならない人間はいないだろう。
腸を首吊りの紐とし、十字架を使って骨と皮しかない老いたジジイを絞殺した芸術作品だ。
「直感で作り上げた美しい作品だ。芸術家になれる気がする」
「美しいってより鬱くしい作品だな」
「何を言っている? 俺は初めから美しい作品だと言っている」
「字が……いや、なんでもない。あんたの行動をまとめると、殺されそうになったから村の連中を芸術作品にした、ってとこか?」
「そんなとこだ」
食べ終わった肉の骨をその辺に捨てて立ち上がり、敷物のように扱っていた村長を軽く踏みつける。
「これが逃げないように見てろ」
「そいつ、生きてるのか」
「ああ。必要な人間だからな」




