表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死者  作者: 紫崎 蒼
第一章 彷徨の森
13/47

第十三話 即座には使えない止血法

「おい、ふざけるな。服が破れた。責任を取れ」


 俺の言葉が届いているはずなのに誰も何も返事をしない。俺は文句を言う気が失せた。

 切断面から血が流れる中、落ちた右腕を村長の後ろに立っていた男が回収した。

 俺の左側の火で焼きコテを熱していた男が、村長から大鉈を受け取り、代わりに焼きコテを渡している。

 何をするのか。聞こうとする前に村長はその焼きコテを俺の傷口に押し当てた。


「これは何だ?」


「……焼灼止血法と言ってな、お主から流れる血を止める技術だ。血液不足で死なれては困るからな」


「瞬時に使えない辺り、なんとも言えないな。今後、聖者の涙節約のためにその止血法を活用しようかと思ったが、正直いらない知識だ」


「安心しろ。お主に未来はないのだからな」


 傷口から焼きコテが離される。既に血は止まっていた。

 次は何をするのだろうか。あとどれだけの工程を経れば俺は獣になるのだろうか。

 村長は焼きコテをそばにいる村人に渡す。そして小さな器に獣の左手から絞り出した血を注いだ。村長は血の注がれた器を俺の顔に投げつけた。


「これも必要なことなのか?」


「ああ、大切なことだ。そしてお主を囲む火。この火に身を包めば晴れてお主は知性のない獣だ」


「すぐに獣になるのか?」


「それは分からない。獣化は相性もあるからな。死の間際まで変わらない者もおるし、すぐに変わる者もおる」


「他はないのか?」


「それだけだ」


 つまらない。儀式と言うからどんなものかと思っていたが拍子抜けだ。

 俺は紐で縛り付けられている手と足を軽く動かそうとする。だがどれだけ動かしても緩む気配がない。


「逃げようとしても無駄だ。キツく縛ったからな」


「くだらない」


 俺は腕を前に突き出すような感覚で左腕に力を込める。

 少しずつミシミシと音を立てていた紐がゆっくりと千切れた。両足を縛り付けている紐も手で引きちぎる。

 手首と足首に縛り付けられた跡が残っていることから、相当キツく縛られていた事が俺以外の目から見ても分かるだろう。

 俺は近くに立っていた大鉈を持った男の腹部を殴る。男の腹の肉が潰れて拳が腹中に入った。そして腸を掴み一気に引きずり出す。

 村人達に拳を突き出してその腸を見せた。


「動くな」


 動けば内臓を引き抜く、という警告のつもりで言った。だが言葉の意味を理解していない一名はその場から逃げ出した。

 全力でそれ?

 もう歳だからなのか、逃げたジジイの足の速さは絶望的に遅かった。これで逃げ切れるとでも思ったのだろうか。俺はすぐに追いかけて首根っこを掴んだ。


「おい離せ!」


「少し待て」


「今すぐ離せ、この余所者!」


 逃げようとしているのか、必死に暴れまわり暴言を吐いている。

 それを見て、内臓を抜くという行為は見せしめとして無意味だと気付いた。

 しっかりと見ていなかったのか、印象が薄すぎて記憶に残らなかったのか。このジジイには何が起きたか理解できなかったのだろう。

 本当の見せしめをどうやるか。何も浮かばなかったが、ふと面白いことを思いついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ