第十二話 ちゃん付けするな
人間を人間でない何かにする輩だ。狂人以外の何者でもない。
「人間でなくなるなら何になる?」
「良い質問だ。教えてやろう。燃え盛る炎の中でお主は自我を失った獣となる」
「獣? 神授でもない限り人間が獣になることは不可能だ」
「確かにそうだ。だがここは違う! この森の主はそれを可能にしたのだ!」
興奮気味に話す村長ははっきり言って気味が悪い。俺に顔を向けているはずなのに、目がどこを見ているか分からない。洗脳でもされてるのかと疑ってしまう。
それはそうと、人間を獣にする事は不可能だ。もし村長の言うことが本当ならぜひともこの目で見てみたいものだ。
「どうやるんだ?」
「教えずとも身をもって知ることになる」
そう言い残して村長とその他数名が俺から見えないどこかへ消えた。
代わりに俺の目の前に来たのはハゲだった。売っていないはずの聖者の涙を手にして。
「これが何か分かるよな? お前が俺に見せようとしてたのはこいつだろ?」
「何故持ってる?」
「んなもん決まってるだろ? お前から奪ったんだよ。だがよぉ、こりゃ何だ?」
「教える気はない」
「はぁ? お前今の状況分かってんのか? 口答えするな。これが何なのか教えるだけでいーんだよ、クズが」
「……怪我を治す液体だ。さっさと返せ」
「だから口答えすんなっつってんだろ! どーせ知性の欠片もねぇ獣になんだ。俺が使った方がこの回復液ちゃんも喜ぶだろーよ」
下品な笑い声を上げ、聖者の涙を頬ずりしている。
聖者の涙の涙を返してほしいが、ハゲの頬ずりで瓶が汚れていそうで気持ち悪い。それに、ただの道具を「ちゃん」付けて呼ぶところにも気持ち悪さを感じる。早く目の前から消えてほしいものだ。
と思った矢先、ハゲが煽るように俺に言った。
「おー、村長が来たぜ。ようやくだ。生意気なお前の泣き叫ぶ姿が楽しみだ!」
ハゲは後ろへ下がり、村長とその他が再び俺の前に立った。その中でも村長だけが身の丈ほどの大鉈を担いでいる。
「待たせたな。さて始めようか」
そう言った村長は俺に大鉈の刃を向けた。そしてその大鉈が俺を貼り付ける木ごと右腕を切り落とした。




