第十一話 狂ってる
誰が何を言っているか分からないくらい騒がしい中で目を覚ました。
首を絞めてまでして無理矢理寝たのに、まったく疲れが取れていない。
まだ太陽が昇っていない。きっと寝てからまだ数時間しか経っていないのだろう。丸一日寝てればもっと体が軽くなっているはずだからだ。
それに、恐らく俺の今のこの状況も疲れが取れていない大きな原因だ。木でできた十字架に手足を縛りつけられている。周囲には一定の感覚で小さな火が俺を囲むようにいくつも揺らめいている。
何かの儀式のようだ。火のそばには村長、その後ろには村の人間達が俺を見ている。恐らく全員いるのではないかというほどの人数だ。
初めは騒がしかった村人達だが、今は誰の声も聞こえない。静かだ。
「おい、何をしている?」
そうは言いつつも、なんとなく今の俺の状況は分かっている。何かの儀式の生贄として俺は今縛られている。ただ、何故俺がそんな目に遭わなければならないのか。俺には理解できない。
「答えろ。なんだこれは?」
何も答えなかった村人達に俺はもう一度聞いた。すると村長が布の袋から獣の左手を出して俺に見せた。
「さて、これに見覚えは?」
見覚え? ないわけがない。それは俺のものだ。
「他人のものを盗むなと親に教わらなかったか?」
俺はぐるりと俺を見ている奴らの顔を見て鼻で笑う。
「あぁ、森の中でコソコソ生活してるような奴らに常識なんてないよな」
「何とでも言うがよい。私達は成すべきを成すのみ」
「お前の言う成すべきことは、他人のもの盗んで縛り付けることなのか?」
「仕方ない。お主がこうなっている理由くらいは教えてやろう」
上から目線がムカつくな。
と思うと同時に「獣を村に持ち込むな」と言っていたおっさんの言葉を思い出した。そして俺が殺される理由はそれだと気付いた。
「俺が獣の体の一部を持っていた。それだけだ。殺される理由がどこにある?」
「殺すわけじゃない。結果として死ぬかもしれないだけだ。だが、強靭な肉体と精神を持つお主のような人間であれば死ぬことは無いだろう!」
何故か村長は急に大声で叫び、恍惚な笑みを浮かべた。それを気味悪く感じながら、俺は村長の言葉に疑問を持った。
強靭な肉体と精神。
筋肉はある方だと自覚しているが、強靭と言うほどではない。精神力も大してない方だと思う。村長が何を求めているのか知らないが、恐らく失敗するだろう。
「お前の事はどうでもいい。俺に何をするつもりだ?」
俺の態度に呆れたのか、村長は大きなため息をついた。
「まあよい。そのような態度を取れるのも今だけ。この儀式が終わる頃、お主は人でなくなる」
今までも薄々感じてはいたが、おっさんの言う通りこの村の人間は狂っている。




