第十話 俺式安眠方法
俺は飛び起きてリュックの中を手で探る。
やっぱりだ。左手がない。盗まれた……?
盗まれたところで何も感じないと、そう思っていたが実際に盗られると腹が立つ。が、またどこかで獣を殺せばいい。
今はゆっくり休もう。無駄なことで体力を使いたくない。
おやすみ。
俺は大きく息を吐いた後、リュックを枕にして眠った。
ぐっすり眠った、はずだ。なのに何故扉を開けた先の空は暗いのだろう。足元は明るいのに何故まだ朝にならないのだろう。
神経質になっているのか? なんでもない物音ひとつで目が覚める不便な体になっているのか……?これだと疲れがとれない。
いつ襲われるか分からない状況ならこれほど役に立つ体質はない。だが、今の俺には邪魔なものだ。
ポケットから聖者の涙を取り出す。安眠をとるか、聖者の涙をとるか。
しばらくにらめっこした後、俺は家の中に戻り寝転がった。
初めは九個あった聖者の涙も今は一つだけ。いつどこでまた手に入るか分からない。
だが貴重だからといって使わないのが一番もったいないことだ。
俺は聖者の涙を手の届く場所に置いた。そして手のひらで両耳を叩いた。
鼓膜を破った。これで音が気になることはない。
耳から血が流れていたが、気にせずに目を閉じた。
――寝れない。
俺は何も見えない中、手を伸ばして聖者の涙を掴む。
痛くて寝るどころじゃない。それに耳鳴りがする。うるさい。
両耳の中に三滴ずつ垂らしてからしばらく、痛みと耳鳴りが消えた。
振り出しだ。今のまま寝てもまた物音で目を覚ます。だから、次に俺は自分の首を強く絞めた。
死ぬかもしれない。でもこうして意識を飛ばさなければ安心して寝られそうにない。
苦しい。だんだんと意識が遠のいていく。あと少しで寝れる。そう思った時、俺の意識は完全に落ちた。




