「エピローグ」
「こんにちは」
「一課の警部さんは、よっぽどお暇なんですね」
「なんでそんなことを言うのよ!」
「陽正がサボってるからでしょ」
「私は仕事をしにきたのよ!!」
午後三時過ぎの交番は閑散としている。平和の象徴であるそれに目を細め、私は喧騒溢れる街を窓越しに眺めた。狼谷君は何やら書類に書き込みをして、知らんぷりを決め込んでいる。紺の制服が似合っているあたり憎らしくて堪らない。
「それで? 陽正は何をしにきたの?」
「異動命令を言い渡しに来たの」
「陽正、直々に?」
「ええ、だって私達二人しかいない部署だもの」
「なにそれ、有り得ないんだけど……」
「その有り得ないを通してくれた犬養さんに感謝しなくちゃ」
「嫌な予感しかしない」
「狼谷巡査長、貴殿は本日付で『特殊捜査課』に異動になりました」
「何それ聞いたことないんだけど」
「当たり前でしょ。公安と同じ扱いなんだから」
「いや、そもそもそれあったの?」
「あるわけないでしょ。設立して貰ったんだもの」
主には犬養さんの働きかけによるものだ。特殊捜査課には今迄と違い、犯罪を未然に防ぐ要素も含まれている。故に、最適とも言える人材は彼しかいなかった。
「仕方ないな。上司命令なら逆らえないからね」
面倒くさい、とでも言いたげな語調で笑みを携えるのだから彼はやっぱり嘘吐きだ。けれども、それでいいのだろう。
閻魔様に舌を引っこ抜かれて済む程度の嘘ならば誰でも吐く。自分が傷付かなければいいだけの話だ。いつかの彼のように、身を滅ぼすようなことにはなって欲しくない。
未来の話をしよう。運命でも、必然でも、なんでもいい。これから先、笑顔で生きられる世界を私は作りたい。
オオカミ少年は成長する。青年になり、大人になるのだ。その過程で過ちに気付いた時、それが成長へと繋がる架け橋となるのだろう。
〝嘘〟とはなんだ。誰もが悪だと決めつける〝嘘〟とは何なのだろう。
自分を守る為のもの?
他人を守る為のもの?
それとも自他共に傷付けるものだろうか?
けれども、誰かが信じている真実が偽りで象られている可能性だってあるし、逆も然り。
ならば私達は、何を信じて生きていけばいいのだろう。砂時計のように簡単に反転してしまえる世界で信じることは難しい。だから、真っ直ぐに生きても笑われない世界を作りたい。
——笑って生きていたいから。




