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オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第4章「欲しいものが貰えないからプレゼントというのだ」
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第90話「空」

「誰でもいいってのは嘘だよ。俺だって愛した人に愛して欲しい」


「意外と一途なんだ」


「元々、一途なんだよ。口が勝手に動くだけでね」


 今の一言であらゆることに納得がいった気がする。彼は、いつだって心と言葉が一致していなかったのだ、と。それを擦り合わせる作業は大変に違いない。本音で話すというのは、常人にも難しいのだから。


「自分を守る為に吐いた嘘で攻撃されてたら世話が無いよね。だから、これからは信じるに値すると思われる人間になりたいと思う。信じるのは、まだ怖いから」


「怖い、か……」


「どっかの馬鹿正直を見ていて思ったんだよ。馬鹿って伝染するんだね」


「もー、ひどいな」


「でも、アンタみたいに何でも信じる人がいるんだって知ることで、救われる人間もいるんだろうな」


 まさか褒められるとは思っておらず羞恥が込み上げる。朱い顔を隠すように、私は先程、運ばれてきたチーズケーキに手を伸ばした。震える指先でフォークを握り、一口大に切り分ける。それを口に放れば、チーズ独特の薫りと甘さが広がった。けれども、甘いだけで美味しいのかどうかが分からない。


「美味しい?」


「あ、う、うん!」


 無言でケーキを食べ進める私に彼が問う。先に嘘を吐くなど笑い者じゃないか、と引き攣った笑みを浮かべていれば笑われた。


「下手くそ」


「なっ! んで、刑事になりたいんだっけ!? なんでそうなったの?」


「犯罪がない世界にしたい」


「それは御両親のことがあって?」


「ううん……いや、それも理由の一つかな。もしかしたら今迄起きたこと全てが理由なんだと思う。犯罪を犯す人間には二種類いて、それはやっても反省しないような極悪人と、それ以外に選べなかった一般人なんだ。だから俺は、それを未然に防げたらいいなって思ってる」


「どうやって?」


「この力を使って」


「……利用するのは嫌じゃないの?」


「死んで後悔するなら、生きてるうちに後悔をなくさせた方がいいんじゃないかな、って思ったんだよね」


 爽やかな口舌がコーヒーと共に薫ってくる。それは若芽の息吹のようで胸が温かくなった。


「いいと思う。狼谷君にしか出来ないことだね」


「アンタなら、そう言ってくれると思ってた」


「うん、勿論。私に出来ることなら全力でサポートするよ。でも、こういうことなら犬養さんに訊いても良かったんじゃない?」


「陽正が良かったんだ」


「どうして?」


「明日香は俺を信じてくれた初めての人だけど、陽正は俺の嘘を初めて咎めてくれた人だから」


「え?」


「俺に生きてもいいって言ってくれたんだよ」


 それは、どの事柄を指すのだろう。抽象的過ぎて理解出来ない私に、彼は『分からなくていいよ』と告げた。嘘ではない。それでも、この真実は少しばかり居心地が悪く思えた。


「それで? 刑事になるには何をすればいいの?」


 ——それはね。

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