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オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第4章「欲しいものが貰えないからプレゼントというのだ」
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第84話「空隠れ」

 *


「しつこいですね」


 そりゃ二週間も毎日顔を合わせていれば、そんな感想も出てくることだろう。しかし、今日に至ってては少しばかり違った。剣呑な言葉が丸みを帯びているのだ。私は、それに内心驚き、耳タコだろう台詞を告げた。


「お話してくださいませんか」


 結局、狼谷君は真実を話してはくれなかった。想いは確かに届いたと思う。言葉が刺さらなかったわけではなく、彼は彼なりの信念を貫いたのだ。それを誰が責められよう。私は彼の決断に口を閉ざし、綾崎のもとへ通い続けた。それに付き合ってくれるあたり、狼谷君は相当優しい。


 犬養さんには私に任せてくれないか、と申し出た。部下を大切に思ってくれる彼女は快諾してくれたが、申し訳なさが募る。彼女は自身の手で永君を救いたかったに違いない。それでも、狼谷君には考えて欲しかった。愛されることについて。


「私が話すことで平和が一つ失われることにお気づきですか? いい加減、迷惑なんですよ。私は怯えて暮らすような生活をしたくない」


「それでも私は……」


「なんてことを何度伝えても諦めそうにありませんね」


「え?」


「真実を知っているのなら、いくらでも逮捕する機会がありましたよね。それを貴女はしなかった。……これは彼女の決断です。私には、それを止める手立てがありませんでした。どうぞ付いて来てください。私の部屋でお話しましょう」


「いいんですか……?」


「貴女は何の為に毎日通っていたんですか? 早く中に入ってください。菫さんがお待ちですから」


 アパートの階段を駆け上がり、彼の部屋の扉を潜る。私の後を付いてきた狼谷君は何一つ零さず靴を脱いでいた。


 靴を揃えてから奥へ向かう。リビングダイニングには背の低いテーブルの前に正坐する菫さんがいた。


 私の姿を見止めると深く頭を下げる彼女。それに倣うように頭を下げてから目の前に座れば、コートを脱いだ綾崎が彼女の隣に腰を下ろしていた。


「彼は高校生ですよね。何者なんですか?」


 真実を話すべきなのだろう。彼が自分の手の内を見せてくれるというのに、私だけそれをしないわけにはいかない。けれども、私の独断で狼谷君のことを話していいものなのか。考えあぐね彼をチラリと見上げる。私の隣に腰を下ろした彼は、綾崎と菫さんを見据えると唇を開いた。


「信じられないとは思いますが、俺には霊が視えます。全ては仁科さんに聞きました。この名を言えば綾崎さんには信じて頂けると思います。証明が欲しいと言うのなら、俺が聞いた貴方の過去をお話しましょう」


「やめてくれ」


「そう言うと思っていました。仁科さんにも、そう言われたので、俺は彼女にも何一つ伝えず、自ら罪を吐露してくれるように、と待っていたんです」


「仁科さん……?」


「菫さんは、ご存知ないんですね」


「やめてください。……貴方が俺のやったことを知っていると言うのなら、それを話して聞かせてください。それで証明になるでしょう」


「分かりました。では殺人事件についてお話しましょう」


「いえ、私からお話します。そうしたら自首という形で罪が軽くなりますよね」


「情状酌量の余地はあります。自首をしたということで考慮して貰えるとは思いますが、お約束出来るわけではありません。殺人事件ですから。それでもよろしいですか?」


「……私が人を殺したことには変わりありません。やっぱりあの時、自首するべきだったんです。永のことが気掛かりですが、もう決めたことですから」

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