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オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第4章「欲しいものが貰えないからプレゼントというのだ」
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第81話「空前絶後」

「俺は元々、隠してなんかいない。アイツが隠せって言うから、そうしていただけだ。真空も、その方がいいだろうしな」


「狼谷君、ですか?」


「アイツは、俺が犬養を振ったと思っているんだ。そして元サヤに戻らないのも、子持ちだからだと思ってる。犬養は、ただの後見人なのにな。でも、それでいい。アイツが幸せならそれでいいんだ。まったく……あの嘘吐きが治れば、犬養も少しは過ごしやすくなるというのに」


「狼谷君は、どうして嘘を吐くんでしょう」


「それが分かったら、もう治ってるな。アイツの生い立ちは知っているか?」


「少しなら」


「強盗殺人に遭って両親と死別。遺体の第一発見者はアイツだ。大人に助けを求めにいったが、誰も助けてくれず、両親は失血死。その後、施設に預けられるも、犬養が後見人を申し出る。あとは知っての通りだ」


「犯人は狼谷君の証言で?」


「ああ。その後もアイツは事件をいくつか解決している。幽霊が視えるとか言ってるみたいだけどな。

 気の毒だとは思う。でも、嘘吐きのまま幸せを求める方が間違ってるんだ。嘘吐きの羊飼いは、最後に泣く破目になるんだしな」


「幽霊が視える、というのは嘘ではないと思います」


「驚いた。お前も犬養と同じことを言うんだな。アイツの嘘は、所謂、自分を守る為の嘘だ。何故そこまでして狼谷は自分を守ろうとしてるんだと思う?」


 正答が見付からない。黙りこくった私に、彼は小さな溜息を吐いた。溜息は苦手だ。彼の厳しさの裏に何があったのか分かった今も肩が撥ねてしまう。


「愛されたいからだよ」


「愛され、たい?」


「愛されること、というのは、注目されるのと似通ったところがある。アイツは嘘を吐くことで、自分を見てもらいたいんだ。元々、虚言癖があることで両親にも疎まれていたらしい。愛されたくて吐いた嘘で、結局愛して貰えないってのは皮肉だな」


 猿島警部の言葉を反芻する。狼谷君が言っていた〝普通〟と、そうでないものの違いとはコレだったのだ、と気付いた。


〝愛されていたか〟〝愛されていないか〟もしもその二択が、彼に真実を口にしないことを選択させたと言うのなら納得できる。けれども、彼は犬養さんに、あんなにも愛されているじゃないか。それが分からないほど、彼は阿呆なのだろうか。


「休憩は終わりだ。貸しということで協力してやらんこともない。何かあったら声をかけろよ」


「はい! ありがとうございます!」


 喫煙室を出て行く猿島警部が、眼鏡のブリッジを上げている。私は穏やかな笑みを返し、思惟に耽った。

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