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オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第4章「欲しいものが貰えないからプレゼントというのだ」
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第80話「机上の空論」

「アイツにとって最優先なのは〝心〟次いで〝命〟最後に〝真実〟もしくは〝犯人逮捕〟だ。俺は全く逆。お前は命が一番なんだろ?」


「はい」


「そして三つ並んで〝真実〟〝心〟〝犯人逮捕〟ってところか」


「正直その三つに優劣は付けられません」


「ケースバイケースってことだろう。新人にはよくある。どう並べるのが正解ってのはないんだ。でも刑事をやる以上、信念がないと続けていけない。だから訊いた。犬養は人としての正解。俺は刑事としての正解。お前の答えは、何に対しての正解だと思う?」


「……分かりません」


「だろうな」


「ですが、どれも同じくらい大切なものだと思います。先ほどは〝何が一番か〟と問われた為、そうお答えしましたが、どれをとっても大切なことに変わりはないと思います」


「そうか。ならそれを貫けばいいんじゃないか? 蟹江の母親とも呼べる人が亡くなった時、俺は刑事としての自分を選んだ。犬養がやるだろう。そんな甘えもあって、俺は学生だった蟹江を突き放したんだ。結果として犯人は逮捕した。けれども、蟹江には俺を責める権利がある。アイツの言い分も、また正しかった。でも、それを認めてしまえば、あの日の俺が全て否定される。曳いては亡くなった命をも、否定することになるんだ。だから、自身を貫くべきだと思った」


「本当は覚えてらっしゃったんですね」


「忘れるわけがないだろう。全て俺の不手際だ」


 こんなにも冷たそうに見えるのに、そんなことはないのだ。彼は、自分にも、他人にも、厳しいだけなのかもしれない。


「でも、正直分からない。俺も昔は〝麻痺しているぞ〟と、人を叱っていたのに、今では同じ穴の狢なんだからな。

 人の生き方に正解ってもんがあんのなら、俺は刑事としての正解を追い求め過ぎて、人としての不正解を突き進んでしまっているんだろう。犬養は逆だな。だから俺達は、いつの間にか道を違えてしまった」


「犬養さんは良い人です。ですが一緒に捜査をしていると……」


「悩め、日辻」


 真摯な眼差しに射貫かれる。私は、この人をちゃんと見ることが出来ていただろうか、と不安になった。


「女でキャリアってのは辛いだろう。犬養も、それで散々苛め抜かれた。何を都合のいいことを、と思うかもしれない。正直、俺は、お前にこういうことを伝えるつもりはなかった。でも、叩きあげた部下が無惨にも失墜したりするところは見たくないんだ。犬養のことがあって、俺もお前に肩入れし過ぎていたんだろう。強く生きて一課を背負って欲しかったんだ。

 アイツの一番は息子だ。それが分かるから、俺は戻ってこいとは言わない。同僚としても、恋人としても、一番になれないのなら意味がないんだ」


「もう隠さないんですね」

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