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オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第4章「欲しいものが貰えないからプレゼントというのだ」
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第79話「空おぼめき」

 *


 朝から身体が重かった。自身が人の在り方として間違っている、など思いたくもない。


 それでも、向き合わなければいけないとも思う。それが正しい在り方だと言うなら、私はそれに背くわけにはいかなかった。


「はぁ……」


 いくつめか分からない溜息に眉を顰める。背凭れに寄り掛かり、天井を仰いでいれば、鬼のような形相が視界を覆った。


「仕事中に堂々とサボりとはな。お前も偉くなったものだ」


「す、すみません!!」


 焦りのあまり机に脚をぶつける。慌ててパソコンに向き直ると、椅子を引かれ一八〇度回転させられた。何故、椅子にはキャスターが付いているのだろう。文明の利器が恨めしい。


「何を悩んでいる?」


「え?」


「俺はお前の上司だからな。話を聞いてやるべきなんだろう?」


「え、えっと……」


「これだから、ゆとりはハッキリしなくて嫌なんだ」


「すみません……」


 平手打ちをかましてしまったあの日以来、私は猿島警部の顔が見れない。幸いお咎め無しだったのだが、いつネチネチと嫌味を言われるか分からないのだ。正直、これ以上関わりたくなかった。


「よし、尋問部屋に行くか」


「そんなのありませんよね!?」


「じゃあ一服付き合え」


「私、煙草は……」


「付き合え」


「……はい」


 般若の面に逆らえるわけもなく、壊れた玩具のように幾度となく首肯する。苦笑を携えることも出来ない私は、強張った表情のまま、猿島警部の後を付いて行った。


 尋問部屋もとい喫煙室へは、さして距離もない。脱兎の如く逃げ出したい気持ちを押し殺し、入室する。中は噎せ返るほどの煙草の匂いで溢れていた。劈くような匂いに眉を顰める。さして気にする様子もない彼は、二人きりの喫煙室で紫煙を燻らせた。


「で、どうした? 犬養とコソコソ何かをやっていたみたいだが」


「お気づきだったんですか!?」


「アイツは昔から感情の入れ込み方が違う。俺も、よく付き合わされたものだ」


「猿島警部が違法捜査を!?」


「声がデカいぞ、馬鹿が」


「す、すみません」


 驚きのあまり大口を開ける私に睥睨を向ける彼。私は辺りを確認しながら声を潜めた。


「狼谷真空に肩入れしてから余計酷くなったんだ。蟹江の件でも、最優先とされていることを放って人命を優先した」


「それは間違いなんでしょうか?」


「お前はどう思う」


「私は……人命が優先だと思います」


「成る程な。犬養に似て危ういとは思っていたが刑事の素質はあるようだ」


 初めてとも言える褒め言葉に目を見開く。瞼を下ろし壁に背を預ける猿島警部は、白煙と共に深い呼気を吐き出していた。

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