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オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第4章「欲しいものが貰えないからプレゼントというのだ」
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第77話「四大空に帰す」

 *


 時刻は十八時前、小雨の中、土岐家の扉が開き、中へ入って行く男性を確認した。


「綾崎でしょうか?」


「どうだろうね。外に出てきたところで声を掛けよう。真空は先に出て……」


「寒いから嫌」


「さいですか」


 片頬を吊り上げた犬養さんが苦笑を漏らす。彼女に倣うように眉を上下させていれば、真剣な表情の狼谷君が土岐家の扉をジッと見つめていた。


「どうした?」


「当たりだよ」


「誰が憑いてる?」


「お爺さんだね」


「老人? おかしいなアイツは孤児の筈だぞ」


「身内とは限らないよ。出てきた」


「随分と早いな」


「いくら何でも早すぎる。おかしくないか?」


「まぁ、そんなもんは二人で聞いてよ」


 捨て台詞を吐いた彼が降車していく。綾崎と自然に擦れ違った彼は物陰に消えていった。


「アタシ達も行くぞ」


「は、はい!」


 私を挟まず二人で会話する様に出遅れ感を覚える。慌てて降車する準備を整え、楚々とした背を追い掛けていくと、大袈裟に反応した綾崎と視線が絡んだ。


「綾崎和眞さんですね。私、こういう者ですが少しよろしいでしょうか?」


「……どういった理由で?」


「少しお話を伺いたいだけなんです。土岐さんの家で何をされていたんですか?」


「別に何も……」


「何も、ということはないでしょう。貴方は加害者、土岐さんは被害者遺族なのですから。もしも〝何か〟あるなら署の方でお話を伺いたいのですが」


「どうして今なんです?」


「どういう意味でしょう?」


「何故、今更あの親子に関わるんですか、と訊ねているのです」


「お聞きになっていないのですか?」


「私は、あの親子と親しくありませんから」


「永君が万引きをしました。そしてアタシに、こう訴えたのです。綾崎和眞を釈放して欲しい、と」


「え……?」


「釈放、だなんておかしいですよね。アナタは執行猶予がついて捕まってなどいません。ましてや永君は自分が父親を超能力で殺した、なんて言ったのです」


「まさかハルが……」


「『ハル』? 随分と親し気な呼び方をされているんですね」


「呼び損じただけです」


「そうですか。貴方は永君に会っていないのですね」


「当たり前じゃないですか。私はあの家族から父親を奪ったんですから」


「アタシも考えたんですよ。何故、永があんな嘘を吐いたのか、を。そしてあの子の言葉を信じるなら、第一として貴方が罪を犯していない、というのを前提として考えなければいけませんでした。

 深夜の徘徊、濃い隈。あの子は恐らく貴方を探していたんですよね。そして万引きをすることで、警察を呼べることに気付いた。おかしなことを言えば、もう一度捜査して貰える。そうしたらいなくなった貴方を探して貰える。浅はかですが、もう一度貴方に会いたかったのでしょう」


「先程と仰っていることが矛盾していますが?」


「そうですね。永は知っていたんでしょう。あえて〝釈放して欲しい〟ということで、アタシ達の興味を誘った。それで永には会いましたか?」


「いいえ。ですから何でもないと言ってるじゃないですか」


「では何をしに行ったんですか?」


「言わないと帰して貰えませんか?」


「そうですね」


「……ゲーム機です」


「ゲーム機ですか?」


「はい。以前、永君が鍵を忘れた時に、家へ入れてあげたことがあったんです。その時に貸したゲーム機を見つけたみたいで、殺人犯の物なんか持っていられないから、と」


「連絡先を交換していたんですか?」


「いえ、ポストに紙切れが入っていたんです」


「おかしいですね」


「何がですか」


「貴方は自宅に寄ってすらいないじゃないですか」


「……どこから見ていたんですか?」


「初めからです」


「明日香、そこらへんにして」


「真空、どう……」


 犬養さんを無視した狼谷君が綾崎の目の前に立つ。警戒したかのように身を固くするす彼は、どこか怯えるように狼谷君を見やった。

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