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オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第4章「欲しいものが貰えないからプレゼントというのだ」
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第68話「泣き出しそうな空模様」

 *


 蟹江君は全面的に罪を認めているそうで、新聞に載ることはなかった。一課の不祥事に緘口令が敷かれたらしい。一つ空いた席は物寂しく、私は溜息を堪える毎日だった。


「はぁ……」


 勿論、堪えきれず時折漏れてしまうものだから周りの視線が痛い。あの後、猿島警部には説教されるし、犬養さんには頭を下げて謝られるしで散々だったのだ。狼谷君とは連絡先を交換したものの使用するには至っていない。連絡したところで塩対応されるのが分かりきっているのだ。気軽に連絡など出来そうもなかった。


「陽正! ちょっといいか?」


 扉を開け放った犬養さんが手招きしてくる。先輩に頭を下げ出迎えに行くと、廊下に引っ張り出された。


「悪いな。ちょっと付き合ってくれないか?」


「三課にですか?」


「ああ。万引きで捕まった子なんだけどね。超能力で人を殺したって言っててさ」


「超能力?」


「ああ。誰かを彷彿とさせるだろう?」


「そう、ですね」


 頭の片隅で憎らしいポーカーフェイスが浮かぶ。すぐさま脳漿の隅に追いやれば、犬養さんが話を続けた。三課への道のりは遠くない。少年を保護しているだろう部屋は目の前だった。


「コンビニでお菓子を万引きしたみたいでね。親が迎えに来れないってことで警察で保護することになったんだ」


 説明しながら扉を開く。先に入るように促された為、室内へ足を踏み入れた。中には折り畳み式の簡素なテーブルと椅子がある。パイプ椅子に腰かけてお菓子を貪る小学生男子は生意気そうな顔つきをしていた。


「名前は土岐(とき) (はるか)君。小学三年生だ」


 正直な話、一人っ子の私に子供の扱いは分からない。唐突に紹介されても困るのだが、そんなこと言える筈もなく、ぎこちない笑みを作るほかなかった。


「初めまして、永君。私は日辻です」


「おばさん、この人も刑事さん?」


「そうだぞ! 一課の敏腕刑事だ!」


「一課って?」


「殺人事件を捜査するところなんだよ。なるのがすごーく難しんだ」


「へぇ、ドラマとかで出てくるやつ?」


「そうそう!」


 おばさん、だと!? こんなに美しい犬養さんをおばさん!? などと衝撃を受けるも、当の本人は気にしている様子もない。子供の扱いに慣れている彼女にとっては些末な事象なのだろう。永君も懐いているように見える為、不思議だった。


「お姉さんは今も殺人事件の捜査してんの?」


「こーら! アタシにはいいけど、他の人には敬語を使いなって言ってんだろ?」


「あ、いえ。犬養さんに敬語を使ってないのに私が使われるわけには……」


「だってさ! お姉さんがいいって言ってんならいいよね?」


「悪いね、陽正」


「いえ、それにしてもどうして犬養さんがわざわざ? 万引きで、しかも子供なら生活安全課の仕事じゃ……」


「この子が超能力を使えるって言ってたからさ」


「でも普通……」


 そこまで言いかけて口を噤む。此方をジッと見据えてくる黒の双眸が怖くて、口を閉じるしかなかった。

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