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オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第3章「殺害の理由はいつだって生首に口づけするようなものだ」
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第54話「戯らす」

「なんでそう思うの?」


「そんな! 猿島警部、彼は……!」


「お前には動機がある。俺を恨んでいる筈だ」


「へぇ」


「猿島、怒るぞ。アタシの息子に変な疑いをかけるな」


「犬養、犯人を庇えば、それだけで罪になるんだぞ」


「真空は犯人じゃない」


「動機って?」


「俺が犬養のキャリアを奪ったからだ」


 ピアノ線がピンッと張ったかのような空気に息が詰まりそうになる。嫌な汗が額を伝い、背筋が粟立っていた。


 狼谷君が犯人であるわけがない。犯行時刻は私達と共に過ごしていたし、どうして彼が犬養さんを襲わなければならないのだ。推理と呼ぶには杜撰過ぎる発想に、私は憤りを覚えた。けれども上司に何が言える。思わず口から出た言葉は彼に踏み潰されてしまったし、私が言葉を発すれば機嫌を損ねるだけだ。


 何が正答なのかが分からない。唇を噛み締める私は、無駄口を叩かないよう口唇を諫めていた。


「そうだよ。明日香のキャリアを奪ったお前が憎い。だから殺そうとした。でも証拠は? 証拠がなきゃ、明日香もアンタも俺を捕まえられない。まぁ、せいぜい頑張ってよ。刑事さん」


 緩慢に立ち上がった狼谷君が、挑発するように猿島警部を見やる。妖艶な笑みが襖の向こう側に消えると、無情な音が響いた。開錠音と共に、彼が出て行ったことが分かる。呆然と畳を見つめていると、犬養さんに肩を叩かれた。


「陽正、真空を追い掛けてくれ」


「え?」


「今度はアイツが刺された、とかだと目覚めが悪い」


「は、はい!」


 慌てて返事を繰り出しスリッパに足を通す。廊下に出た瞬間、冷気が私を包んだ。朝四時では、どうやら暖房も入っていないらしい。吐いた息が白く透徹に溶けていく様は、彼に届かない私の言葉を表しているかのようだった。

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