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オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第3章「殺害の理由はいつだって生首に口づけするようなものだ」
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第53話「戯れ人」

「男二人、起きてるだろう」


「あ、あれ、ばれてました?」


「当たり前だ。下手な狸寝入りで騙せると思うなよ」


「あはは、いやぁ、まさかお二人が恋人同士だったなんて思いもよりませんでした」


「ゴホンッ! 一時の気の迷いだ。忘れろ」


「ああ、一時の気の迷いだ。こんな女を俺が好きなわけがないだろう」


「それはこっちのセリフだ!! こんな猿にアタシが惚れるわけないだろ!? 猿のアプローチがしつこかったから仕方なくだな……」


「ほぉ、お前は猿と付き合うのか」


(おさむ)は黙ってろ!」


「失礼致します。あ、お目覚めになられたのですね」


「女将さん、なにからなにまですみません」


「いえ、此度は当館で誠に申し訳ございませんでした。お客様をこのような目に……」


「女将さんは悪くありません。我々が犯人を捕まえます。それまでご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます」


「ふふっ、すっかり立派な刑事さんになって」


 犬養さんの謝罪に、入室を果たした女将さんが頭を下げた。畳に額を擦りつける様は、まさしく大和撫子である。それに異議を唱えたのは猿島警部だった。彼は凛とした眼差しで力強く口舌を発する。それに女将さんは柔らかく笑むと、着物の裾を口元にやった。


「私が若女将の時から、お二人は変わりませんね。いつまでも仲睦まじくいて欲しいものです」


「いえ! ですから、この猿とは別れたと何度も!」


「いつもそう仰りながら仲直りしていかれるではありませんか」


「ですから数年前に!」


「はいはい。夫婦喧嘩は犬も食わぬ、とはこのことでしょう」


「女将さん、なにかあったのでは?」


 上品な笑声に犬養さんが喰い付く。その様に溜息を零した猿島警部は、助け舟を出すかの如く割って入った。


「はい。先程、警察の方から雪かきが終わり次第、此方に向かう、と連絡があった為お伝えに。それと包帯の替えです。救急車も、まだ出せないとのことで」


「救急車は結構です。このまま捜査の方に移りますので」


「え? ですが猿島様は包丁で刺され……」


「傷は深くない筈。多少痛みますが、犯人を捕まえてから病院に向かいます。そうだろ、犬養?」


「ああ。傷は深くないから死に至るような傷ではない。早めに病院に行った方がいいのは確かだがな。お前は療養していろ。犯人はアタシ達で捕まえる」


「断る。この程度の傷、動ける」


「迷惑だ。慢心は身を滅ぼすぞ」


「お前のようにか?」


「アタシが、いつ身を滅ぼした」


「犯人は分かっている。真空、お前だろ?」


 表情筋をピクリとも動かさない猿島警部が、鋭い眼光で狼谷君を射貫く。壁に寄り掛かり入口近くに腰を下ろしていた狼谷君は不敵に笑んでいた。

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