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オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第3章「殺害の理由はいつだって生首に口づけするようなものだ」
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第52話「戯ける」

 *


 結局、凶器は見つからず犯人の目星も付かなかった。


 従業員にも客の中にも二人に関係ある者はいない。八方塞がりの私達は、猿島警部が目を覚ますの待つべく部屋に集まっていた。皆、代わるがわりに睡眠を取り、今は私の番である。午前四時を指す時計を横目に、私は猿島警部の横顔を見つめていた。


 顔を合わせると嫌味しか飛ばして来ない為じっくり見たことが無かったが、彼も寝ている時は大人しい。眉間の皺は相変わらずだが、いつもよりは穏やかな表情をしている。私は布団を持ち上げると、そんな彼の肩まで掛けてやった。


 暖房は効いているが少し肌寒い気がする。早く目覚めないだろうか、と身を案じていると、先程まで固く閉じられていた瞼がゆっくりと持ちあがった。


「猿島警部……?」


「うっ……ここは……」


「旅館です。何があったか覚えていますか?」


「えっと……」


「陽正……?」


「犬養さん! 猿島警部の目が覚めました!」


「なんだと!? おい、大丈夫か?」


「あす、か?」


「意識が混濁してるな」


 犬養さんが目覚めた為、彼の傍らを明け渡す。脈を測り囁いた瞬間、猿島警部が凄まじい勢いで身体を起こした。


「おい!? 急に起きるな! 傷口が……」


「明日香……明日香……無事で良かった……どこも怪我はしてないか?」


「大丈夫だ。それより……」


「なら良かった」


「おい!? 人の話を聞け!?」


 犬養さんを抱き寄せた猿島警部が、喉に詰まっていたかのような言葉を吐き出す。掠れた声音は愛しさを隠すでもなく、空気を震わせた。何が起きたのか分からず様子を伺っていると、両の掌で犬養さんの顔を包む。彼女が問いに答えれば、再び腕に誘い愛しいと告げていた。


 なんだこれは。二人は犬猿の仲だと思っていたのだが、そういうわけではなかったのだろうか。まるで恋人同士のようなやり取りに、私は頬を染め困惑していた。


「明日香……」


「離せ! 私はもうお前の恋人じゃないんだ!」


 ピシャリと言い放つ様に、猿島警部の動きが止まる。緩慢に身体を引き離すと、頭に手を添え辺りを見渡していた。


 一瞬目が合った為、肩を撥ねらせる。気にした様子もない彼は再び犬養さんに視線を戻すと、ばつが悪そうに舌打ちをしていた。


「すまない。少し記憶の混乱があったようだ」


「そうみたいだな。元気そうで良かったよ」


 居心地が悪そうに言葉を酌み交わす二人が、どういう関係だったかなど言わずもがな。見ている此方が恥ずかしくなるようなささめきことに、身体が熱くなった。

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