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オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第3章「殺害の理由はいつだって生首に口づけするようなものだ」
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第48話「戯け話」

 *


「んー! 美味しー!」


 刺身を頬張った犬養さんが幸せそうに声を上げる。その横では無言で食べ進める狼谷君がおり、温度差が激しいように思えた。


 二人を見比べながら勧められるがままに私も見目麗しい料理を口に運ぶ。刺身に鍋、彩り豊かな小鉢には、写真でしか見たことのないような料理が並んでいた。写真を眺めながら、どうせ美味しくないんだろう、なんて思っていたから驚きだ。とても美味しい。舌鼓を打つ私を、犬養さんが優し気な眼差しで見つめてくる。それが少しばかり気恥ずかしく、私は目線を落としていた。


「どうだ?」


「とても美味しいです」


「だろ? ココは料理も最高なんだ。是非、陽正にもって思ってたから連れてこれて嬉しいよ。最近は物騒な事件が立て続けに起きてたしな。ゆっくり羽を伸ばせ」


「明日香のせいで、そうもいかなそうだけど」


「そ、そんなことないです! ゆっくりしてますよ!」


「明日香のことは心配じゃないって」


「そんなこと言ってないでしょ!?」


 一々、揚げ足を取ってくる狼谷君を睨めつける。彼が素知らぬ顔で刺身を咀嚼しているものだから余計に腹が立った。そういえば先程から刺身ばかり食べている気がする。そんなに好きなら全部食べて意地悪してやろうか、と思うくらいには心が荒んでいた。


 緊張や焦りもあったのかもしれない。私は自身を落ち着かせようと小さく呼気を吐き出してから、小鉢の料理を口に入れた。


「いやぁ、なんか悪かったね。アタシのことは気にしなくていいからさ。陽正は、ゆっくり休みなよ。大体のことは自分で何とか出来るしね」


「嫌です」


 固い声で彼女を見据える。凛とした声音に、犬養さんは少しばかり驚いているように見えた。


「仲間を守りたいって言ってくれたのは犬養さんじゃないですか。そんな犬養さんが狙われているのなら、私だって力になりたいと思いますよ。私一人だけを蚊帳の外に捨て置かないでください」


「悪かった。そんなつもりじゃなかっ……」


「すみません! 私のです!」


 犬養さんの言葉を遮るように着信音が流れる。慌ててスマホを手に取れば、蟹江君からだった。


「いいよ、出な」


「はい、失礼します」


 軽く頭を下げ控えめに「もしもし」と告げる。電話口からは焦った声が響いていた。


『悪いな日辻、猿島警部って、そっちにいるか?』


「猿島警部? いないけど……」


『そうか』


「何かあったの?」


『夕飯の時間になっても戻ってこないんだよ。あの人、鍵忘れてっちゃったから部屋から出るわけにもいかないし、電話にも出ないし……!』


「どうかしたのか?」


「猿島警部が戻ってこないみたいで……」


「猿島が?」


 苛立ちと焦燥が伝わってくる。異変に気付いたらしい犬養さんが箸を置き、此方を見据えてきた。


「そっちにも行ってないってなると……」


「探しに行こう」


「きゃー!? 誰か!! 誰か来てー!!」


 茶羽織を羽織った犬養さんが襖を開ける。扉を開けると同時に劈くような悲鳴が聞こえた。

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