表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第3章「殺害の理由はいつだって生首に口づけするようなものだ」
47/91

第47話「戯れ言」

「アイツが犯人だと言ったから俺達は……!」


「誰が犯人なんて言ったの? 心当たりがあるって言っただけだけど」


「クソガキが……! ふざけるなよ!? 捜査は遊びじゃないんだ!!」


「遊びじゃないのに俺の言うこと真に受けたの? 馬鹿じゃん」


「お前!?」


「離してくれない? 苦しいんだけど」


 猿島警部が狼谷君の胸元を締め上げ持ち上げる。目を剥いて制止しようと立ち上がった時、傍らを人影が通り抜けた。


「ちょ、猿島警部!? ダメですよ!!」


「うるさい! 此奴は昔から人のことを馬鹿にして……」


「ダメですって!!」


「猿島、真空を離せ。一体、何があったって言うんだ」


「え、っとですね……」


「部外者に漏らすな!! もういい、行くぞ!! 犬養!!」


「なんだ?」


「一人で出歩くなよ!! また襲われたら敵わんからな!!」


 地震でも起こすのでないか、と言うほど、けたたましい足音を立て台風の目が去っていく。それを追い掛ける蟹江君の裾を掴めば「あとで話すから」と囁かれた。そう言われてしまえば解放せざるを得ない。私は厳つい背を見送り、なんとも言えない胸の内を諫めようと必死だった。


「あの様子じゃ聞かなくても分かるな」


「そうですね」


「気にしても仕方ない」


「〝次〟を待ってみるのもアリかもよ」


「次って……それじゃ危ないんじゃないの?」


「危ないけど、今の状況じゃ犯人の目星を付けるのも難しいし、突発的な衝動だったなら〝次〟は起こらないかもしれない」


「もし〝次〟が起こってしまったら?」


「その時は犯人の目星を付ける手掛かりになる。もう一度、明日香が狙われたら明日香狙い。陽正か俺が狙われたら、やっぱり明日香狙いってところじゃない?」


「そうだな。執拗にアタシを狙うなら、それはそれで安心だ。二人に危害が加わらない方がいいに決まっている」


「そんな……もし犬養さんが殺されそうになったら……!」


「そうならないように一緒に行動して防ぐんでしょ。陽正は刑事なんだから、しっかりしてよね」


「分かってるわよ!!」


 肘掛に肘を附き、手の甲に顔を乗せている。やたら賺しているように見える為、苛立ちが顕著に表れた。今なら先程の猿島警部の気持ちも分かる。正直「クソガキが!」と思わざるを得ない。


「悪いな、陽正。推理力が磨かれた代わりに、可愛くない言い方ばかりするようになってね。アタシが後でお灸を据えておくから許してくれ」


「犬養さんが謝ることではないです!」


「お灸とか勘弁して欲しいんだけど」


 狼谷君の言葉に犬養さんが噛みつく。やはり仲良さそうな二人には親子以上の絆があるように見えた。それは血が繋がっていないからでもあるのだろう。血が繋がっているからと言って何でも分かり合えるわけではない。実のところ、家族とは血が繋がっていないくらいが丁度いいのかもしれない。


「吹雪いてきたね」


 徐に窓の外を眺めた犬養さんが呟く。私はそれに「そうですね」とだけ返し、何も起こらないことを願ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ