表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第3章「殺害の理由はいつだって生首に口づけするようなものだ」
46/91

第46話「悪戯っ子」

「で? なんの捜査なんだ? 誰から聞いた?」


「幽霊。なんかヤクザ関連みたいなんだけど、殺人の容疑があるんだって。で、ココに来るってのを知ったから追っかけてきたみたい」


「成る程、ヤクザ関連なら一課の管轄じゃないけど殺しとなれば、ね。にしてもアイツ自ら足を運ぶだなんて珍しい。お偉いさんに直接頼まれたのかね」


「さぁね」


 彼の視線の先には、荒れた雪原が広がっている。それが、この先の未来を示しているかのようで胸騒ぎがした。


「いいんですか? 犬養さんを襲った犯人を捕まえなくて」


「猿の結果次第だな。まぁハズレだろうけど。そうだよな、真空」


 肯定も否定も返ってこない。しかし、それを肯定と取ったらしい犬養さんは、茶菓子の封を切っていた。先程、首を絞められたばかりだと言うのに何とも胆が据わっている。私は煎餅を咀嚼する様を眺め、考えを巡らせた。


 犯人を特定するには情報が少なすぎる。そもそも動機が分からないのだ。犬養さんは「殺す気がない」と考えているようだが、〝次〟殺す気なのかもしれない。彼女は私や狼谷君の身が危ない、と言っていたが一番危ういのは、やはり犬養さんのような気がした。


 私達と猿島警部が鉢合わせたのは〝偶然〟だ。ということは、恐らくは猿島警部らは関係ない。警察を恨んでいる、という可能性も捨てきれないが、犬養さんに恨みを抱えた人物を探るのが最善の一手に思えた。


「犬養さん、心当たりは本当にないんですか?」


「心当たりがあり過ぎて分からないな」


 そりゃ、そうだろう。刑事なんてものは人から恨まれる仕事だ。ましてや犬養さんは一課にいた時に相当恨みを買った筈。そのどれもが逆恨みであるが、今はそんなことも言っていられなかった。


「最近は何かトラブルとか……」


「今、それを考えてるんだけどね。さっぱり、って感じかな。まぁアタシを恨んでる奴は割といるだろうけど、ここまできて殺そうとするほど恨んでる奴はいないだろうね。ましてやココは結構高いんだよ? 入り込んだり……従業員。確かココは住み込みで働かせてくれる筈だ。いや、でも犯人は浴衣姿だったしな。考えすぎか」


「従業員でも浴衣を着れば紛れ込める。捜査範囲を広げるのは必要だよ」


「心配してくれるのか、真空」


「当たり前でしょ。俺は二回も親を失うつもりはないよ」


 銀竹(ぎんちく)宿雪(しゅくせつ)に突き刺さるかのようだった。鋭く尖った言葉が、私達の心を突き刺す。犬養さんは顔を顰め、私もまた唇を歪めざるを得なかった。


 もしかしたら彼は事件に触れる度、過去の傷を抉られていたのかもしれない。そう思うと居た堪れなかった。やはり私は立派な大人ではない。そんな自身には、彼の近くに在る資格などないように思えた。


「犯人、捕まえましょう。このままだと私の身も危ないみたいだし……」


「分かってるよ。ちょっと黙ってて、今、考えてるんだから」


 ピシャリと冷たく言い切られ、思わず口を噤む。さすれば犬養さんが身を乗り出した。


「お前、まさか犯人が分かっているのか?」


「分かって無いから考えてるんでしょ」


「だよな。そんなに簡単に分かったら警察なんていらないし」


 警察とは関係のない狼谷君が事件解決してますよね、なんて思っても言ってはいけない。胸裏に止めた私は、煎餅の封を切った。一口目に齧り付いた瞬間、扉を叩く音で吃驚する。大きく肩を揺らし、音のする方へ目を向けると、扉越しに猿島警部の声が聞こえた。


「おい! 開けろ!」


「相変わらず乱暴だこと」


 文句を連ねながら犬養さんが扉を開ける。すぐさま入室した猿島警部は、顔を赤黒くしたまま狼谷君の目の前に立つ。凄まじい形相で睨み付ける様に私は恐怖で震えた。


「どういうことだ?」


「なにが?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ