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オオカミ少年の真実【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
第3章「殺害の理由はいつだって生首に口づけするようなものだ」
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第37話「戯れにくし」

 時は幾許か遡る。非番の日だからと褥に潜り込んで惰眠を貪っていた午前八時、着信音で私は現実に引き戻された。

 力ない声で電話に出れば、相手は犬養さん。途端に覚醒した意識を携え、私はベッドの上に正坐していた。


「おはよう、陽正」


「お、おはようございます!!」


「今日は非番だったよな? ちょっと付き合って欲しいんだが構わないか?」


「はい! 大丈夫です」


 犬養さんからのお誘いが唐突であることなど、いつものこと。彼女は私の非番の日、あちこち連れまわすのが趣味のようだった。


 ある日は服屋へ、ある日はジムへ。行先はいつも着いてからのお楽しみ、というやつで教えてくれることはない。だから今回も深く詮索することはなかった。いつも通り近場を連れまわされるのだろうと思っていたのだ。


「良かった。じゃあ、一時間後に迎えに行く。一日分の着替えを持って待っていてくれ」


「着替え? どこに行くんです?」


 スマホ片手にベッドから降り立ち、冷蔵庫へ向かう。片手で取り出したミネラルウォーターの封を切りながら、私は疑問符を浮かべた。


「秘密」


「え? 犬養さん!?」


 耳介をなぞる無音が怖い。その前に聞こえた艶やかな声も、私の恐怖を煽った。


「相変わらず切るの早すぎだよ!!」


 そう叫ばずにはいられない。思わず落としそうになったミネラルウォーターが空を遊び、結局フローリングを鳴らした。一口も飲んでいないそれが床を侵していく。慌てて拾い上げるも、小さな水溜りが今起こった出来事が現実であることを告げていた。









 ということで、私は現在、行先も分からぬまま雪深い土地へと連行されている。


 温泉旅行とは言われたものの、どこの温泉に連れて行って貰うのかは全く知らされていないし、もっと言えば何故ココに狼谷君が居るのかも、てんで理解出来なかった。いつも犬養さんと二人きりなのだ。動揺するのも当然だろう。狼狽を引き摺っていても、あまり突かないで欲しい。いや、いつも通り弄られているあたり、焦燥を覚えているのは私だけなのかもしれないが。


 胸懐で自問自答を繰り返す私に、犬養さんが、あーでもない、こーでもない、と話し掛けてくる。私はそれに、から返事を返しながら踏み荒らされていない銀世界を、ぼんやりと眺めていた。

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