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夢巡り、天の川号と共に  作者: ジェムシリカ
1章 夢という名の世界より
7/13

第3話 夢見る人とは

色あせた朱色の煉瓦で建てられた風車小屋。

丘を登り終わった時、既に空は暗く、夜になっていた。二人は、月と星の灯りを頼りに風車小屋へ辿り着く。

小窓からランプの灯りが見える。

中に人が居るようだ。

ミルは入り口であろうその木製の扉をノックした。

すると、中でガタガタっと音がした後に、少しひょろっとした好青年が出てきた。


「えーと……どちら様?」


ミルは少し考える動作をしたかと思うと、ただ一言、


「私達はあなたの夢の案内人です」


と言い放った。


「夢の、案内人。なるほどね」


彼はミルの言葉をすんなり受け入れた。その様子を、リンは奇妙に思った。


「ねぇミル。この人、夢見てるって分かってるのかな?」


「多分……まぁその方が、ボクも仕事がしやすいけどね。それに、ほら」


ミルはそう言って、リンに向けていた視線を前の青年に戻した。

彼女も同じ様に前を見てみると、彼は二人の服装をまじまじと見つめていた。


「やはり、僕が見かけたことの無い服……お二人が夢の中なのに、僕の知らない人達だと言うことにも納得がいく……」


「夢の中なのに?」


リンがそう聞くと、青年は軽く頷いた。


「僕が夢で会った人は、全員僕が知ってる人だったから……っと、とりあえず立ち話でもなんですし、中に入ろうか?」


そう言って、青年は二人をその風車小屋へ招き入れた。


「ほらね、こんな服装してる人、ボク達以外居ないから」


車掌は、自分と同じ格好のリンに耳打ちした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「早速僕のことについて、聞きたいことがあれば、なんでも聞いていいよ」


リンは彼の用意してくれた椅子に、行儀良く足を揃えて座った。そのまま、部屋の中を見回す。

その部屋は、たった一つのランプの明かりでも十分足りそうなくらいには狭かった。

そしてそこに置いてあるものは、どれもこれもリンの知らないものばかりだった。

しかし、壁に掛けてあるそれらの形状を見れば、彼女にはなんとなくそれが何かは予想できる。


「まずはキミの名前について、聞きたい」


一方でミルは席に座らずに、腕を組んで小窓の側の壁に寄りかかった。


「名前はヴェナーディだ」


「あの……質問なんですが」


壁に掛けてあるそれらを見回しながら、リンが口を開く。


「どうしました?」


「ここに置いてあるものを見る限り……さんは狩人か何かですよね?」


指でそれらを指すと、彼は頷いた。


「そうだ。僕は魔物を狩る職をやっている」


「魔物……」


それはついさっき二人が聞いた単語。

この世界では忌み嫌われている存在。


「けれどキミのことを、いい人間と言っている魔物がいた。ヴェナーディ」


ミルは彼の目の色を伺いながら、穏やかな声で言葉を返した。


「それは違う。選別をしているだけさ」


「選別?」


リンが聞き返す。


「そう、選別。僕達人間に危害を加えないなら、僕達からも危害を加える必要はない」


分かりきった風に彼はそう言った。

確かにそのことはミルやリンにも分かる。だがこの世界でその常識が通用しないとも、二人はなんとなく察していた。


「まあそうは言っても」


彼は椅子から立ち上がると、壁に掛けてある猟銃を触った。

まるで、昔から慣れ親しんだ相棒の様に。


「僕は、困ってるのを見たらほっとけないタチでね。この世界じゃ、全然弱い癖に」


軽く困った表情で笑いながら、彼はそう話す。

リンは彼の顔をひたすら見つめながら彼の話を聞いていた。


「だから、まあ僕の心の芯。みたいなものさ、誰かに親切にすることは」


まあ毎回上手くはいかないけどね、と彼は苦笑した。

ミルはそんな彼の言葉に、なんとなく心の中で頷いた。


「それであの、ハーピー達は……」


納得したかの様に、リンは声に出した。


「そうか、彼らと会ったのか!元気にしてたかい?」


青年はリンの方を振り向く。

リンが青年に、ここに来た経緯を含めて彼らのことを話すと、青年の顔は懐古の念が湧いた様な笑みで満たされた。

満足気に、再び椅子に座りなおすと、青年は二人に昔話——彼らと会った時のことを話し始めた。


「そう、母親と会ったのが丁度、彼女がまだ小さい時。彼らの寿命は、魔物の中でも儚い方でね。七年前、僕がまだ見習いの時だ。彼女が巣から落ちているのを見かけて……そうだ、まさに話であったその大木だよ……」


目を瞑りながら、揚々と語る彼の口に二人はじっと視線を当てた。すると、途中で彼がそれに気付いたのか、少し取り乱す様にして話を元に戻す。


「え、えっと、そんなことがあったんだ!うん、そう。で聞きたいのは僕の話だよね、すまないすまない」


「は、はい」


キョトンとした顔で、リンは相槌を打った。


「で、キミの話。あなたがここに来た経緯を教えて欲しい」


ミルの言葉に彼はしばらく沈黙し、そして口を開いた。


「すまないが、僕がここに来た経緯は言いたくない」

お久しぶりです。リアルが忙しくてなかなか書けませんでした(´;ω;`)

これからも不定期で更新していくのでよろしくですm(_ _)m

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