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異世界復讐代行『その恨み、晴らして見せます』  作者: 馬汰風
第二部「アニェーゼ、騎士の娘をかくまう」
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第五話「異世界で大貧民」

 アニェーゼ、ラーフィリス、そしてルーファス。彼ら3人を率いる日本人、藤村圭(ふじむらけい)はソロヴァ王国内においてめずらしい賃貸住宅に住んでいた。

 職人や商人などはラーフィリスが住む家のように、1階を職場にして、2から4階を生活スペースにしていることが多い。弟子も住み込みで働くため、すべてが1つの建物で完結する。そのため、職場と異なる場所に住む人は少なかった。

 賃貸住宅に住むのは、その日暮らしのモグリや冒険者といった職業の者。もしくは、神殿に勤めているが、住み込みでない場合などがあげられる。

 それらの賃貸住宅で重要なのは顔役と呼ばれる、取りまとめ役だ。住人たちをまとめ上げ、仕事の斡旋や生活を世話してくれる顔役がいるかいないかで、その住宅の収益は大きく変わる。

 賃貸住宅のオーナーが顔役をやることも多いが、コネ以外にも腕っぷしなども重要になってくるので、大抵は住み込みで顔役をやってもらう相手を探すことが多い。


 西南地区にある賃貸住宅の顔役である日本人、藤村圭は顔役らしく、賭博を開いていた。1階の食堂で圭が作った料理を食べ終わった後、暇な人物が多かったので、圭は久々に賭博をひらいた。


「はーい、2のダブルカードですよ! 誰も出せねえだろぉ?」

「じゃあ、ジョーカーのダブルで」

「嘘やろぉ?」

「次はスペードの3であがり!」

『どぼじでぇぇぇえええ!』


 本気で金もうけのために賭博をやっているのではなく、ストレスの発散やこの住宅でのコミュニケーションを重視して圭は行っていた。また内容もオリジナリティを出すことで、普通はできない遊びをできていると優越感を抱かせることに成功している。

 今回、圭が提供した賭博事、遊びは『大貧民』だった。『大貧民』ないし『大富豪』というゲームを知らない読者のために説明すると、トランプを用いたカードゲームである。詳しくは検索サイトを用いれば良くわかると思われる。

 幸いも、この国にはすでにトランプが存在していたため、遊びとして使用する際のルールを説明するだけでよかった。なお賭けとしては大富豪の総取りで、カードの交換ルールを生かして参加費を役職で変更させることで公平感と一発逆転を楽しめるようにしている。レートは、大富豪がソロヴァ大銅貨、富豪がソロヴァ銅貨4枚、平民がソロヴァ銅貨3枚、貧民がソロヴァ銅貨2枚、大貧民がソロヴァ銅貨1枚という風に、参加費が変わっていく。


 このルールの場合、大富豪をいかに続けるかが儲けるためのポイントになるのだが、先ほどから猫耳の少女──プリムがずっと大富豪を続けており、彼女が勝つたびに参加者の男たちからは悲鳴が上がっていた。


(コイツ、運がいいな)


 単純に運が良いのか、要領が良いのか、こういったゲームにプリムはめっぽう強かった。


「プリムジョーカー持ちすぎ」

「ジョーカー強すぎ」

「修正されろ」


 不平不満を言う男たちは冗談交じりであるが、半分本気な気配も感じられた。1人勝ちが余りにすぎると逆にストレスがたまり、顔役としての圭の面目に関わる。テコ入れが必要だと判断した圭は、手を叩いて自分を注目させた。


「じゃあルール追加するか。スペードの3があるだろ?

ジョーカーが単体で出た場合のみ、スペード3で倒せることにする」

「まじかよ」

「神修正キタコレ」

「さっき、スペードの3ってプリムが持ってなかったか……?」


 ジョーカーを倒すことができる、しかも最弱のカードでとなると参加者は盛り上がっていった。若干1名が気づいてはいけない事実に気づいていたが。

 ついでに、圭はもう一つルールを追加することにした。


「あともう一つ。4枚出しに成功した時点で、ジョーカーを覗くカードの強さが逆転する。

通常は2が一番強いけど、その場合は3が一番強くなる。これを革命と呼ぶ」

「革命……その響きやばくないか?」

「意味は分かるけど……間違っても貴族とか騎士には聞かせられねーぞ」

「それもそうか……、じゃあ逆転でいいよ」


 あまり深く考えずに、日本にいたころの呼び方で説明したが、絶対君主制のソロヴァ王国で革命という言葉はまずかったようだ。そういう意図はなかったので、圭はおざなりにフォローした。


「よぉし……次は勝つぞ……。

稼がねえといけねえからな」

「なんでそんなに本気なんだよ」

「小金だぞ」

「無職になった」

「あほだ」

「のぞきでもしたか」


 やたら本気で金を稼ごうとしている男に、周りはドン引きで様子を見ていた。

 圭が顔役をやっているのは大家の依頼であり、無職に対しては仕事を斡旋している。ケイの記憶が正しいならば、彼はそれなりに大きい騎士団に奉公しているはずだった。


「どうした、首になるってのはよっぽどだぞ」


 場合によっては新たに仕事を斡旋するか、目をつぶれないような問題行動だった場合はこの住宅から追い出す必要がある。やさしさと非道さの両極端な考えをしながら首になった理由を尋ねた。


「わかんね、突然トラブルとかでしばらくは来なくていいって言われた」

「なにそれ」

「怖すぎるわ」


 話を聞いていた者たちが口々に感想を述べていくなか、圭は眉をひそめた。


「それはお前だけか?」

「んや、ほぼ全員。少なくとも住み込みじゃない奴は全員そういわれた」

「……住み込みの使用人ですらその対応をされたのか?」

「そうそう」


 あまりに異様な対応に圭は興味を抱いた。そおらくこの対応は、騎士団内から情報が洩れることを防ぐための処置だろう。想像するも難しい何かが起きたことを確かだった。

 黙り込んだ圭をプリムが不思議そうな顔で見ていた。この長屋にいると、様々な噂話を聞くことができるが、時折圭はこのように一つの話に執着する気質があった。そして、圭が興味を抱いた話はそのあと何かが起きる可能性が高い、プリムそう感じ取っていた。




「すまない、ケイはいるか?」


 圭が黙り込んでいる間も、賭博は続いた。そんな彼の意識を戻したのは、歓声をあげるプリムでも悲鳴を上げる男たちの声でもなく、訪問者の声だった。アニェーゼが圭を訪ねることは滅多になく、彼は不思議に思った。


「うぎゃぁぁぁあああ!!」


 アニェーゼを見た男が突然悲鳴を上げた。驚きのあまりに、全員がその男を注目する。


「イケメン連れてこないでくださいよぉ。

俺の顔が普通だってばれちゃうじゃないですか」

「いや、普通っていうのもちょっと……」

「やめろ、マジでやめろ」


 何言ってんだこいつと冷たい目で見るアニェーゼに、一部の男たちは嬉しそうな悲鳴を上げた、ここではろくな話ができないと判断した圭は、アニェーゼを連れて庭へと出た。




「珍しいな、アニ。こんなところに来るなんて」

「……頼みがあるんだ」


 明るくふるまう圭に対して、アニェーゼは歯切れ悪く言葉を出した。途端に、圭は嫌な顔をした。


「おい、厄介事じゃねえよな」

「ララのところに一緒に来てくれ。詳しくはそこで話す」

「おまえ、ララを巻き込んだのか!?」


 ラーフィリスの名前が出てきて、圭は声を荒げた。圭の反応を想定していたので、さしたる驚きはなかった。


(やっぱり、コイツとラーフィリスは何かあるな)


 彼女の名前を出しただけで、圭は平静さを失ったように見えた。少しずるいようだが、アニェーゼはラーフィリスを盾にすることで圭の力を借りることにした。


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