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異世界復讐代行『その恨み、晴らして見せます』  作者: 馬汰風
番外編『アリスは名探偵!緑髪の白の神官とアリスの推理』
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ルーファスの推理~犯人の名は

 この殺人事件は悪霊の仕業ではなく、リジィを殺害することは可能だ。別の考えがある、と言ったルーファスは皆から注目をされる居心地の悪さを感じつつも、自分の推理を披露し始めた。


「ご存知かと思いますが、この館は塔よりも高くできています」

「そうね、確かにそうだわ」

「そして、ロープが張ってある高さなら『墜落』の魔方陣の効果はうけません。

下から登っていくのは無理でも、上から落下しながらなら侵入できるのではないでしょうか?」


 下が駄目なら上から、ごくごく当たり前の理論回帰だが、それを聞いた人たちは落胆の気持ちが隠せなかった。


「白の神官さん、それは無理だ。

窓枠に近づくことができても、そのころには『墜落』の効果が強すぎて中に入ることは恐らく不可能だ」

「試してみなければわからない」

「人では試せない」

「そうですね」


 ルーファスの推理にロビーが異議を唱え、反論をしてみても、あっさりとあしらわれてしまった。もっとも、それはルーファスにとって想定内だったため、あっさりと自分の意見をひっこめた。物分かりが良いルーファスに、訝し気な表情が集まる。


「ですが、水平方向へ強い力がかかっていたら……可能性は高いと思いませんか?」

「横向きに飛ぶってか? できるかもしれないけど、失敗したらどうなるかわからねえ……ロビーの言う通り、試せねえよ」


 諦め悪く持論を唱えていると見たか、アンガスは揶揄するように言った。もちろん、その意見もが想定通りだ。


「ええ、ですが物ならどうですか?」

「なに?」


 予期していなかったのかアンガスは驚きの声をあげる。


「そう、リジィさんは刃物傷による殺傷痕がありましたね……その傷に会うようなナイフなら……。

例えば、メリル信徒が使える『魔弾』のような魔法さえ使えれば。練習さえできれば、十分に実現可能なんじゃないでしょうか?」


 メリル神の加護は、緑色の髪に出る。メリル神の加護が強いルーファスは、緑色が鮮やかな髪を持ち、アンガスも海藻のような緑の縮れ髪だった。投擲物をコントロールする『魔弾』の魔法が使えることも先ほど見た。

 『墜落』の魔方陣の影響外からナイフをほぼまっすぐ投擲し、『墜落』の効果を加味すれば、窓の中に突入させることは可能なはずだ。『墜落』の影響さえなければ、『魔弾』である程度はコントロールが利くようになる。上向きに開く窓だが、十分可能だろう。


「おい、俺を疑っているのかよ……」

「なるほど、遠距離から凶器を投げる……それは想定していなかったな」


 アンガスが追い詰められたかのように無意識に一歩下がると、ロビーがルーファスの意見に同意した。


「はぁ!? ふざけんなよロビー、そんなの出来っこねえよ」

「だが、人間が入るよりかなりマシな回答だと思わないか?

そこの少年は刃物の反射光を見て、悪霊だと思ったのかもしれん」


 ロビーはルーファスの推理が気に入ったのか、援護するようなことを言う。


「でも、どうやって凶器を消したの?

現場に刃物はなかったわ」


 一方で、タニアはルーファスの推理に懐疑的なのか、疑問の声をあげた。


「そ、そうだ。タニアの言う通りだ、どうやって消したんだ」

「まあ、例えば溶けてなくなる氷の刃とか……。もしくはこれでもいいですね、『圧縮された空気は強大な圧力を持つ。『風の刃』』」


 支援を得られ、アンガスが強気に言うが、ルーファスは二通りの解釈を持ち出し、問題を解決する。なお『風の刃』とは空気を圧縮して刃物を作る魔法で、不可視のナイフとも使えるし、剣にまとわせることで、振るうだけで周囲を切り裂くかまいたちにもなる。最近の裏稼業で、ルーファスが用心棒の体を切り裂いた時に使用した魔法でもある。


「んー、助手ちゃん。窓は誰が明けたの?」


 アンガスが言葉に詰まっていると、突然アリスが彼を擁護し始めた。予想外の伏兵の出現に、ルーファスは戸惑う。


「リジィさんに開けてもらうようにお願いしたのでは?」

「あいつが人の言うこと聞くわけねーって」

「アリスはリジィさんの事を知らないけど、雨の日に窓を開けっぱなしにはしないんじゃない?」


 辛いところを指摘され、ルーファスは言葉に詰まる。


「いや、リジィは暑がりだし、開ける可能性はある」

「そうね……雨が降っても窓を開けたまま居眠りをしてたこともあったわね」


 今回はロビーだけでなく、タニアもルーファスの側に回った。そういった前科があったからこそ、今日の夕食時に塔の中に踏み込んだのだ。


「じゃあ窓は開いていたことにしようね↑

塔の入り口は? 普通は開けているんだよね↑」

「防犯上閉めておいたほうが良い……とか」


 さすがに苦しいこじつけだったのか、これに関しては誰もルーファスを擁護することはなかった。


「うん、まあそれで塔の鍵を閉めていたことにしよっか」


 だが、アリスはそれを許容した。そして、次の疑問をぶつけてくる。


「でも、そうするとリジーちゃんはどうして鍵を握ってたのかなぁ?」

「鍵を閉めて3階に戻ったところを襲ったんじゃないか?」

「なるほど、なるほど。じゃあ、そうなるとかなりタイミングは限られるね↑

でもね……」


 言葉を切ると、アリスは内庭の窓へと近づいた。日も落ち、夜も更けてきたため、真っ暗で外は何も見えなかった。そう、何も見えなかった。


「今日はすごい雨で、夜かと思うくらい暗かったんだよね↑

きっと、お昼でもほとんど館から窓は見えなかったね↑

それに……上からだったら窓が邪魔で、中が覗けなかったよぉ」


 塔の中は館から見えない。視力を強化する魔法を使っても厳しいだろう。それに、その場合は『魔弾』と『遠視』の2つの魔法を同時にコントロールする厳しい狙撃になる。そして、ここまで話を続けてルーファス自身も気づいてしまった。


「これをやるなら、雨の日にやる必要がない……むしろ、晴れた日にやってこそ成功する」


 この方法だと何も雨の日にやることはないのだ。晴れの日の方が窓を開けるのも自然だし、狙撃の難易度はぐっと低くなる。目撃者は低くなるだろうが、そもそも高速に飛来する刃物が運よく目撃されるほうが稀だ。失敗する危険性と比べれば、曇りの日などにやるほうがずっと良いに決まっていた。


「まったく、頼むぜ白の神官さんよ……

ていうかさ、あんた本当に白の神官? メリル信徒じゃねえの?」

「失礼な、俺はれっきとしたラーサスの侍祭だ」


 失礼なことを言うアンガスに対して、ルーファスはむっとした顔で回答した。しかし、先ほど見せたメリル信徒の魔法といい、妙に詳しいところを考えると、メリル信徒にしか見えなかった。


「しかしそうなると、もはや方法は……」

「助手ちゃん、玄関が入れないなら、3階の窓だけが侵入口なんだし、そこから入ったんだよぉ↑」

「しかし、足場を搬入するのは不可能だ」

「その場にあったものを利用したんだよ」


 アリスはそういうと、手に持っていたコップを掲げた。ルーファスはそのコップを見て、あるアイディアが浮かび上がった。


「ロビーさん、ダルカード信徒ならば、物を好きな形にすることができる……そうですね?」

「当然限度はあるが、ある程度の操作はできる……あそこには花壇しかなくて階段を作ることはできないぞ」

「あるじゃないですか、花壇の下に土が」


 ルーファスの推理をロビーは否定するが、土のことを指摘されるとぐっと口をつぐんだ。


「地面の土をひっくり返して、山を作って登った……そうでしょう?」

「まて、まて、土を操作することはできるが、そんなことをしては花壇がぐちゃぐちゃになる。そんなに魔法は便利な物じゃない」

「塔の周辺の土は花の入れ替えをするのか、土がむき出しだった」


 塔の周囲は花壇を移動したかのように、栄養素が含まれている黒茶の土がむき出しになっていた。その土を操作するなら、いくら動かしても、元に戻せば気づかれることはないだろう。それに、雨の日というのも都合がいい。適度に水分を含んだ土は強度が増す。

 追及されたロビーは口を金魚のようにパクパクと開き、言葉が出ないようだった。しかし、しばらくたつと、落ち着きを取り戻した。


「……いや、やはり不可能だ」

「というと?」

「庭にある土は30センチほどしか積もられていない。とてもじゃないが山状に盛ることは不可能だ」

「山ではなく、階段状に『物質形成』をすれば良いでしょう?」

「……『物質形成』は不可逆だ。元に戻せなくなる」


 落ち着きを取り戻したのか、ルーファスの推測を次々とロビーは否定していく。しかし、ロビーなら3階から忍び込めた可能性は高そうだ。このまま追及を緩めるわけにはいかない。そのようにルーファスは思ったが、意外なところから制止の言葉がかかった。


「ストップ、助手ちゃん」

「しかし……」

「もっと、簡単にいくらでもある素材を使って階段にしたんだよぉ」


 アリスはそういうと、飲んでいたコップに指を突っ込み、ある物を取り出した。それは小さくなった氷だった。それを掌に載せて、タニアの方に差し出すように手を伸ばした。


「そうだよね↑ ターちゃん?」


 そういって、アリスは悲し気に微笑んだ。


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