表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界復讐代行『その恨み、晴らして見せます』  作者: 馬汰風
番外編『アリスは名探偵!緑髪の白の神官とアリスの推理』
37/78

塔の中~死体の様子と儀式魔法

 殺人現場となった塔の中は、外見から予想された通り、荘厳な様相を呈していた。壁面には六神教の神話が描かれており、当時の著名な画家が、具材に糸目を付けずに描いたことで、約100年経過した今日も、当時の色彩を維持している。

 偽りの理論を打ち立てたとして、この塔へ生涯軟禁された弟王は、この絵を見ていかなる気持ちだったのだろうか。少なくとも、この絵を描かせた人物が好意をもって描かせたとは考えにくい。この絵を書くことを許容した初代王の、弟王に対する思いが透けて見えるようだった。

 どんな経緯であれ、絵自体に罪はない。ルーファスはじっくりと見ながら、一体いくらするのだろうかと思っていた。


「助手ちゃん! 集中するのぉ↑」


 絵の方ばかり見ているルーファスに対して、アリスは抗議をするように飛び跳ねた。苦笑をしながらルーファスが子供のような仕草をするアリスを見る。そこではたと気づいたが、先ほどまで『墜落』の影響下にある魔方陣にいたのにもかかわらず、彼女は特に問題なく宙をはねている様子だった。

 ここでは『墜落』が発動しないのだろうか、そう思ったルーファスも同様にその場ではねてみるが、やはり外とは違い、『墜落』の効果が出なかった。


「ここでは、『墜落』の効果がないのですね」

「んー、たぶん『透過』とか『移動』とかの魔法で入れないようになってるんだね↑」

「なるほど……」


 魔方陣には相性があり、組み合すことができるものと、できないものがある。塔の中に別の魔方陣を描いているのならば、『墜落』の魔方陣が描けなかったのも頷ける。

 貴人が入るような場所や、王宮には『移動禁止』という魔方陣が書かれることが多い。その名の通り、外からの侵入を防ぐ魔方陣となる。『透過』や『移動』は六神教では、メリル神殿で教わることができるが、最低でも司祭以上にならなければ学ぶ事ができず、魔法の才能も高くなければ使う事すらできない。


 使用者が少ないことから、この事件にその魔法が使われた可能性は低かったが、また一つ侵入方法がつぶされたことになる。

 塔の中は『移動禁止』の魔方陣がかかっているだろうという事は、アリスは想定していたようで落胆はしていなかった。そして、予想していた侵入方法のパターンをあらかたつぶし終えた彼女は、この塔が疑似的な密室状態にあったことを認めた。


 だからと言って、死霊の仕業だとアリスは思わなかった。密室だなんてものは生きている人間が作るものだ。普段は中に人がいる際には施錠をしていない玄関が、殺人事件が起きた日は施錠されていたなど、犯人がやったに決まっている。そうアリスは思っていた。




──密室殺人は密室ではなく、その犯人はすべからく人間である




 それがアリスの探偵としての矜持である。

 1階には事件にかかわりそうなものがなかったので、2人は早々に3階にある死体の元へと向かった。


「アリスは死体を見慣れていますか?」

「いい加減敬語をやめない? 助手ちゃん」

「さすがに、旅司祭に対して対等な口を聞くのは……」

「ダメ! もっとフレンドリーに話そうね↑」

「……わかったよ、アリス。

それで、死体を見たことは」

「何度かあるし、大丈夫だよ」

「わかった」


 旅司祭に任命されるだけあり、普通じゃない人生を歩んできたアリスにとって、死体は敬遠するようなものではなかった。ルーファスは幼い少女に見えるアリスに気をつかったが、本人の発言と旅司祭だし問題ないだろうと判断した。

 ちなみに敬語をやめるようにという指示は、敬語がめんどくさかったこともあり、ルーファスは素直に聞くことにした。


 階段は金属でできており、足音が響くようにわざと作られていた。なんらかの理由で緊急事態が発生した際に、階段を駆け上がることで音が響いてそれ自体が警報になるようにできている。

 甲高い音を鳴らしながら、2階へと上がると3階への階段が正面の奥に見えた。2階を飛ばして3階に行けないようになっており、これも防衛を考えられて作られたためだった。


 塔はそれぞれの階が1つのエリアで作られており、大きな遮蔽物はなかった。密室ができていたことを認めたアリスは、3人の容疑者以外が犯人の場合も検討していた。その1つが、犯人はずっと中に潜んでおいて、3人の学士たちが玄関を開けた後に、こっそりと脱出したという説だ。しかし、隠れられる遮蔽物はなさそうだった。

 『隠密』といった姿を隠す呪文があれば問題はなさそうだったが、内部の構造に詳しく、密室できると知っている……等々、あまりに条件が増えてくるのでアリスは考えないことにした。


 3階に上がると、わずかに血の匂いが漂っていた。また、階段を上り切った場所から、リジィの死体が見えた。これならば、リジィの死体に先回りするのは不自然だろう。

 事前に死体があるとわかっていても、実際に目の当たりにすると戸惑ってしまう。彼らは一度足を止めた後、死体へと近づいた。少し近づくと、仰向けに倒れたリジィの手に鍵が握られており、手は胸元にあった。胸元が刺されているようで、服が真っ赤に染まっている。


「左胸が刺されている。傷は深く、内臓器官を抉っている事からここが致命傷かと思われる」


 ルーファスはリジィの死体の近くにしゃがみこみ、胸元を指さしながら状態を説明した。そして、リジィの体をひっくり返すと、背中を見せた。背中には2ヶ所刺し傷があった。服に付着した血は酸化しはじめ、黒くなり始めていたが、まだ乾いておらず、ルーファスの手はべっとりと血で汚れた。汚れるのも気にせず、ルーファスは傷跡を指さした。


「こちらは骨で止まったのか傷が浅い。

もう一つの傷はそれなりに深いけど、運よく内臓器官まで届いていない。

どちらも致命傷にはならなかっただろう」

「うん……」


 アリスは死体を見て気落ちしたのか、言葉少なくなっていた。やはり普通な少女でもあるのだなとルーファスは思った。

 彼女はその場に膝をつくと、聖印を握って祈りを捧げ始めた。


「手を洗ってくる」


 ルーファスは一言断ると、水場があった1階へと降りた。アリスはその場に残り、祈りをささげている。




 ルーファスが1階に降りて、祈りをささげ終わると、アリスは立ち上がった。立ち上がったアリスは、突然舞いながら、呪文の詠唱を始めた。詠唱を必要とする魔法、すなわち儀式魔法である。




「『昨日は今日、今日は昨日。

始まりは2日後の曜日、

翌日に飛んで、明後日へ、

翌日に戻り、明々後日へ、

明々後日から明後日へ、

繰り返し、繰り返し昨日へと戻り、

弥の明後日へと向かう、

最後は五明後日へと至り、私の物語は幕を閉じる。

ラベンダーの香りは嗅いだかしら?

電子レンジは回した?

サイコロの目は6が出た?

貴方を拾い上げるまで、

私は那由他の先まで繰り返す!

儀式魔法、逆さ巡りの砂時計世界、凌駕!』」




 光があふれ、収まった後に、過去を見たアリスはこの事件の犯人を知った。


「んー………」


 背伸びをして、儀式魔法で魔力を消費した体をほぐす。リジィの死体へと頭を下げたアリスは、困り顔でつぶやいた。


「………犯人は分かったけど……どうやって入ったんだろうね↑」



魔法による犯人解明

ミステリーの体裁をとるので、解決編までは犯人名は明かしません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ