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天の空に輝くうたかたの  作者: 篠華 楓
2/6

第二話~『刹那』~

「――――」

俺が誰かと話している。

「―――――――」

何を言っているのか分からない。

「――――――――」

何だ。何を言いたいんだ・・・。

「・・・・・・」

突然、喋る声が聞こえなくなった。

長い沈黙が続く。

「―――貴方のせいで私は死んだ」

「!!」

はっきりと聞こえた声。その声、言い方には覚えがあった。

あいつだ・・・。あいつの声だ。

「死んだ」

やめてくれ・・・。

「貴方のせいで・・・」

俺が悪かった・・・。

「死んだ・・・」

もう・・・やめてくれ・・・。

「死んだ!!」

やめてくれ!!!


                     ※


「!!!・・・はぁ・・・・・はぁ・・・」

そこで目が覚めた。

「・・・・・・夢、か・・・・・・」

久しぶりの悪夢を見たせいで体は汗でびっしょりだった。

「どうしたのですか?かなりうなさえていましたが大丈夫ですか?叶?」

「撫子・・・すまない、大丈夫だ。心配ないよ」

見ていた夢は俺の昔の記憶の断片。

俺が山へと行くきっかけとなったあのときの記憶。

「こんな日に見るとはな・・・」

俺にとってトラウマなのかもしれない。

あの時に・・・俺が・・・。

「そうならなければいいんだがな・・・」

俺も心は不安に満ちていた。

また、あの時みたいになってしまうのではないかと・・・。

「・・・・・・・・・・」

黙々と準備を進める。

撫子がこちらをずっと見ている。

「撫子。さっきのがまだ心配か?大丈夫だ。なんともないから」

「叶。・・・叶がそういうのであれば分かりました」

「あぁ。それじゃあ、行ってくる」

「いってらっしゃい・・・」

部屋を後にし、撫子荘から出た。

気持ちはまだ不安が残っていた。


                       ※


 撫子view

「・・・・・・」

叶が学校へ向かった。

「叶・・・」

私は今まで長い間、人を見てきた。

叶はかなり無茶をしていることがすぐに分かった。

とても大丈夫ではないはずだ。

「見ていた夢はかなりのものなのね・・・」

叶の服はかなり汗で濡れていた。

寝言で『やめてくれ』とつぶやいていた。

「貴方はどんな人生を送っていたの・・・」

心配で心が苦しかった。

あの時もそうだった。

いつも私に関わった人はそうだった。

そのときの姿は、無残な姿。

「私はもう・・・あんな思いをしたくない・・・あんな思いは・・・」

畳の上に一つの雫が落ちた。

「叶・・・・」


                     ※


 叶view

撫子荘を出て、入り口で待っていた凪姉ぇたちと一緒に登校していた。

「こうして歩いてると嬉しいな~。こうしてみんなが揃って歩けるなんて夢みたいだよ」

「榛名、もう何回も言っているぞ」

「だってぇ~いいじゃない~叶~♪」

「ふふっ。榛名ったら」

「あはは」

「ふふっ」

人と話して笑ったのは久しぶりであった。

こうして、新しい生活が待っているのだ。

その時だった。

「泥棒ーー!!」

道の先で窃盗の現場に遭った。

被害者はどうやら、うちの学生の女性。

犯人はバイクに乗って逃走していた。

「どうして俺の周りには面倒事が起きるんだ?・・・ハァ~~やめてくれよ。こういうのは嫌いなのに・・・仕方ない。榛名。俺の鞄持ってくれ」

「え?叶?もしかして、バイクを追うの!?無理だよ!」

「大丈夫だ。すぐに終わる」

体制を整え、バイクへ視線を向ける。

「ふっ!!」

「え?」

榛名たちから見れば、俺は瞬間移動したかのように見えるだろう。

この技は、山にこもって手に入れたものだ。

そして、一瞬でバイクと並んだ。

「何だお前!!!」

「それはこっちが聞きたい」

すばやくバイクに蹴りを入れ、体制を崩し、横転した。

「ぎゃあ!!」

犯人は二回転して、止まった。

「ち・・・ちくしょう・・・」

それでも犯人は逃げようとしていた。

「は~い。逃げな~い」

「ひぃっ!!」

犯人を素早く押さえた。

「さっさと鞄返してくれないかな~?」

「何を偉そうに・・・」

「立場考えろ」

「ぎゃああああああーーーーー!!!!」

少し締めるとすぐ犯人は叫んだ。

「鞄を返してもらえないかな」

「だから・・・」

「いい加減にしろ」

「ぎゃああああああーーーー!!!!!」

このやりとりは警察が来るまで続いた。

「ご協力感謝します」 

「ああ」

犯人は警察に任せ、盗られた鞄を持ち主に返しに行った。

「ほら」

「あ、ありがとうございます」

「名前は?」

鈴峰梗華(すずみねきょうか)です」

「いい名前だな。これから気をつけろよ」

「はい!あの!貴方に名前は?」

「天野叶だ。また会える事を祈るよ」

「叶!やばいよ!遅刻しちゃうよ!」

遠くから榛名の声が聞こえた。もうそんな時間か。

「いけねっ!またな」

俺はこの場を後にし、学園へ急いだ。

 

                      ※


 ???view

「あの構えに、あの速さ・・・まさか・・・」

現場を見て、昔調べていたことを思い出していた。

「あいつが・・・驚いたな。どおりで正体不明で消息不明ってなるわけだ・・・」

「お手並み拝見としましょうか。『刹那』よ」

これで、やっとここに面白い風が吹いてきそうだ。

 

                      ※


 叶view

昼休み。

「はぁ~疲れた~。こんな事になるなんて予想もしなかったな」

学園へと入り、どうにか間に合い、始業式に出れた。

そこで、校長からの祝辞で今朝のことを話され、俺は壇上へ上がり、そこで俺を紹介したのだ。

1200人もの生徒が俺に注目して拍手を送っていた。

出来ればもうあんなのは勘弁してもらいたい。

自分のクラスは40人構成。

10クラスあり、学年400人となる。

クラスには榛名がいて安心できた。

転校して来た俺はすぐに質問攻めされた。

好きな物、趣味、懲戒の話、そして彼女はなど・・・面倒な物ばかりだった。

「人気者は辛いね~。叶」

「最初だけだ」

榛名と話していると、クラスメイトの一人が近付いてきた。

「天野君。ちょっといいかな?」

「何だ?」

「屋上へ来てくれるかい?ここではちょっと・・・」

男は言いづらそうに俺の耳元で言う。

「・・・分かった」

男の話を承諾し、席を立つ。

「ん?どしたん?」

「ちょっとした男の話ってやつさ。来るか?」

「!!行かないよ!ばか!!」

赤くなりながら叫ぶ榛名を無視し、人が居なさそうな屋上へと向かった。

 

                     ※


「よし。ここでならいいかな?」

「で、俺をここに呼び出して何だ?俺に変な視線を送ってたやつよ」

「あれ?気づいてた?流石だな~」

「あんな変な視線送ってればすぐ分かる」

今朝のあのときに、一人だけ違う視線で俺を見ていたやつがいた。それはこいつの視線だ。

「何か話したいんだろ?何だ?」

「まず自己紹介からだ。私は東条明彦(とうじょうあきひこ)。以後お見知りおきを」

丁寧に礼をする。

「何から話そうかな~?天野君。いや、『刹那』って呼んだほうからいいかな?」

「っ!!お前・・・!!」

すぐに東条の首を掴み、袖から暗器を突きつける。

「何処でその名を知った?返答しだいではただでは・・・殺す」

『刹那』・・・。昔にその世界で言われた名で、思い出したくない名でもあった。

「まぁ、落ち着いて。まず、この手を離してもらえるかな?天野君?」

東条は表情を変えずに、言う。

・・・・・・ポーカーフェイスか。

「ちっ」

言われたとおりに離し、距離をとった。

「私はこの町のあらゆる情報を持っている情報屋なんだ」

「今回の件で見たあの素早さ、瞬発力・・・。情報では、昔にここで現れた刀一振りで裏世界で天下を取った伝説の男『刹那』とほとんど同じなんだよ。天下を取った後、行方をくらまして消えたあの『刹那』にな・・・」

「・・・で、俺をどうするつもりだ・・・貴様」

「なに。あんたを売ろうとは思わないさ。今伝説の『刹那』がここにいるんだから。売ったら面白くない」

「何をするつもりだ」

こいつ、東条の考えが全く分からない。

俺で何をしようとしている?

「何もしないさ。私はただ確認したかったのさ。あんたがあの『刹那』かという確認を。あそこで言われていたら大変だったろう?」

「・・・・ああ」

もしあの場で『刹那』のことを言われていたら、また、ここを去らなければならなかった。

あの地獄の日々に戻ることになる。

「そういうことだ。私の用件は終わり。またな。『刹那』」

「待て」

「なんだ?」

「『刹那』の名をこの学園で言うな。言ったらどうなるかは分かるだろ?」

袖から暗器を出す。

「おぉ~、怖い怖い。言われなくてもしないさ」

「それともう一つ」

「ん?」

「お前は情報屋なんだろう?今後俺の依頼を受け情報を提供しろ。分かったか」

「お安い御用だ。それだけか?」

「ああ」

「またな。『刹那』」

東条は屋上を後にして、帰っていった。

「『刹那』・・・か」

この名はもう聞かないだろうと思った俺の罪の名。

5年前の愚かな自分の姿。

「まさか・・・登校初日でこうなろうとはな・・・」

これではこの先がかなり思いやられる。

「この先は、何もなければいいが・・・」

蒼い空を見つめた。

この先の俺の存在。

そして、榛名たち。

俺のことで巻き込まなければいいと思う。

風が優しく吹く。

こうして、俺の学園生活が始まった。

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