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天の空に輝くうたかたの  作者: 篠華 楓
1/6

第一話~『始まり』~

「幸せってどんなものだろう・・・」

昔、少し前の俺が思ったことだ。

この世界は幸せに満ちている。

そのときの俺は、―天野叶(あまのかなえ)ーはいつ知ったのだろうか。

世界が滅びようとも、世界が戦争になることも、俺には関係ないことだった。

幸せを知らない俺にはそうだった。

でも・・・あの時の気持ちは今でも覚えている。

暖かい温もりと、暗闇の中から差し伸べてくれた人の優しさ・・・。

それがなければ、今頃俺はこの世には居なかっただろう。

暗闇の世界から助けられた分の恩返しを俺は返さなきゃいけない。

世界が幸せに満ちていく。

今まで見ていた景色が一変していく。

世界は幸せに満ちている・・・。

こんなにも世界が幸せに満ちていく。

・・・昔に見ていた景色は、もう何処にもないのだ。


                      ※


「・・・荷物はこれで、片付いたな」

俺は、荷物の整理を終えて一息ついた。

雪が解け、新しいことが始まろうとする4月。

住んでいた山から出たときは、日はまだ空に昇っていたのに今は、沈みかけている。

生活に最低限必要な物は揃っているので、大丈夫だ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ぐるりと、小さな六畳間の部屋を見渡す。

布団と小さな机、空っぽの棚と、自分が持ってきた荷物だけであった。

「・・・久しぶりだな。山以外での部屋は・・・」

こうした立派な建物の中で衣食住するのは久しぶりであった。

12歳の時に家を飛び出し、半年後に山に篭った。そこで5年間、自給自足の生活をしてきた。

「天野君?荷物の整理は終わった?」

外から名前を呼ばれた。

窓から顔を出して、下を見ていると女の人が手を振っていた。

これから住む家の大家さんだ。

「今終わりました」

返事をして、大家さんの所へ向かう。

・・・これから、新しい生活が始まる。

どんなことがこの先起こるのか・・・。

「これから、食材を買いに行くから、手伝ってくれないかしら?」

「分かりました」

大家さんと一緒に買い物へ出かけた。

 

                    ※


「かなり買いましたね」

「ええ。今日は初めて下宿生が来たから、豪勢に振舞うつもりよ?」

黒川みさきさん。

俺が住む下宿の大家さんだ。

町へ着て、住むところをに困っているときにみさきさんと出会い、彼女が所有している家に下宿させてもらったのだ。

「あの時にみさきさんに会ってなければ、今頃大変でしたよ。今日はありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそ。私は、住む学生さんを探していたからいいのよ」

見ず知らずの俺を快くしてくれたみさきさんは優しい人だなと思って見ていた。

「そういえば、天野くんは、何処の高校に行くの?」

「え~と、確か、桜花学園に行きます」

「桜花学園に!?偶然だわ。私はその高校の教師なのよ」

そうなんですか?これからよろしくお願いします。みさき先生」

いやぁ~もう、ここで先生って呼ばれるのは恥ずかしいから学校でね」

「はい」

みさき先生と話をしながら下宿の家へ向かった。


                    ※


「ごちそうさまでした。はぁ~とても美味しかったですよ。先生」

「先生は学校でって言ったでしょ。ここでは、みさきさんでいいわよ。私も久しぶりに料理してよかったわ。天野君、美味しく食べてくれたからね」

買い物を終え、みさきさんが豪勢に料理を振舞ってくれた。

みさきさんはにこにこと笑っていた。

「あの~、みさきさん。気になったんですが、ここの下宿はかなり綺麗で過ごしやすいのに、下宿生が来ないんですか?」

自分が住む部屋を細かく見ていた。ほこりがなく、ちゃんと環境が整っている。これほど気持ちのいい下宿は中々ないと思う。

みさきさんの表情が曇る。

「・・・・・・天野君は、ここの噂話は聞いたこと・・・ないかな?」

しばらくの沈黙をして、重い口を開いた。

「この家、『撫子荘』は幽霊が出るって言う噂があって、そのせいでこの場所には来ないの」

悲しそうに俺にこの家のことを語ってくれた。

「みんな、この撫子荘を怖がって入ろうともしないの。幽霊に襲われたくないって理由でね。

・・・・・・この家は、私の祖父の時代に建てられた物なの。築100年は超えている建物で私の思い出が詰まった所。5年前、私の父が亡くなって、この家をどうするかっていう話になったのよ。やっぱり、売ってしまおうという声が上がってきた。かなりの税金がかかるし、邪魔だってね・・・。 でも、私はそれに反対したの。私の父が言ってくれたことがあるの。私の祖父が残した遺言には、『この家は手放したらだめだ。私の大切な人が居る』って。

私の祖父、父はその大切な人を見たといったの。私は祖父たちが見たその大切な人を見てみたい。守ってあげたいって思ったから反対したの。親族からはかなりの批判があったけれど、この家を残すことができた。・・・・・天野君はここに住むのが怖くなったかな?」

俺のほうへ目線を向けた。

「それぐらいで、住みたくありませんって言いませんよ。みさきさんは、俺が住むところに困っていたから、声をかけてくれたんですよね?それを断るなんて男として失格ですよ。こんな美人な大家さんなんだから」

「―――――――!!」

みさきさんは、顔を赤く染め、俯いた。

「・・・天野君、ありがとう。つい照れちゃった」

さっきまで暗かった雰囲気はなくなった。

みさきさんも笑顔になっていた。

「さっきの話なんですけど。その大切な人には会えましたか?」

 いえ、まだ会っていないわ。父たちはその人は美人さんだって言っていたわ」

「そうなんですか。会えるといいですね」

「ええ」

こうして、みさきさんとの食事を終え、自分の部屋へと戻っていった。一つの違和感を感じながら。


                     ※


部屋に戻って、寝る支度をしていた。俺には食事をしているときに、違和感を感じていた。

「あの違和感は・・・人の目線。みさきさん以外に誰かもう一人いたのか?」

山で暮らしているとき、目線というか、動物たちの気配を感じることができるようになった。昼夜問わず、襲ってくること動物が多かったので、殺気や気配を感じられるようになってしまったのだ。

「・・・・・・まぁ、いいか。気のせいだな。今日は疲れたし、寝るか」

布団に横たわり、力を抜いた。久しぶりに柔らかい寝床で気持ちが良かった。

 

                     ※


ぎしっ・・・ぎしっ・・・ぎし・・・。

深夜になった頃、上ってくる足音が聞こえた。その足音は、こっちへ向かっていた。

「・・・・・・誰か来る・・・」

静かに起き、手に愛用の武器を持って、布団へ戻り、寝ているフリをした。持った武器は山に住んでいた時に使っていた自作の木刀だ。刃物などの武器は荷物から出していない。相手が人間だった場合、大変なことになってしまう。

「みさきさんはもう寝ているはずだし、この家には俺以外の下宿生はいないはず・・・誰だ?」

段々と近付いて俺の部屋の前に止まり、戸を開けた。

「!!・・・・・・・」

戸を開けた瞬間、目を疑うものが映りこんでいた。

そこに立っていたのは少女。女の子だ。

「・・・・・・・・・・・」

その女の子の姿は美しかった。それ以外の言葉では言い表せないほど美しかった。

髪は銀色に近い白い髪。

吸い込まれそうな紅い瞳。

服装は袴で上は丁子色、下は真紅のごとく紅い袴だった。

部屋の周りを歩きながら見て、俺を見た。

「・・・・・・・・」

女の子は何も言わず部屋から去っていった。

その夜俺は眠れずに過ごした。


                    ※


「天野君、おはよう」

「お、おはようございます」

「どうしたの?目が真っ赤だけど・・・大丈夫?」

「はい。大丈夫です・・・」

あの後は、一睡できなかった。

夜に来たあの少女のことを考えていたら、夜が明けてしまった。

あの女の子がみさきさんのお父さんたちが言っていた。大切な人なのだろうか。

女の子が去った後、くまなく家を調べたが、何も手がかりは無かった。

あの女の子は一体・・・。

「天野君?」

「え、あ・・・はい。なんですか?」

「本当に大丈夫なの?ぼーっとしてたけど・・・無理はしないでね」

「はい。分かりました。ありがとうございます」

「そういえば、昨日の話になるんですけど、この家『撫子荘』の由来って何ですか?」

昨日は色々と話していて聞く時間が無かった。

「この家の名前は言ったとおり撫子荘って言うの。父から聞いた話では、祖父が大切な人からつけた名前だって聞いてる」

「そうなんですか。それが聞けてよかったです。ありがとうございました」

「どういたしまして」

みさきさんとの話を終え、二階にある自分の部屋へと戻る事にした。

階段を上がりながら、いろいろと考えていた。

あの女の子は何なのか・・・。

何故俺の部屋に来たのか・・・。

疑問があふれ出てくる。今まで山で過ごしていたときも、心霊現象じみたことが多々あったが、今回みたいにはっきりとして、姿を現すことなんて一度も無かった。

昨夜のあれは何だったんだろう。だが、その疑問よりも遥かに超えたこと出来事が自分の部屋で起きた。

部屋の中に女の子がいた。

髪は銀色に近い白い髪。

吸い込まれそうな紅い瞳。

服装は袴で上は丁子色、下は真紅のごとく紅い袴を着た女の子。

窓から入る風にたなびく長い髪が、色鮮やかな着物の上に軽く掛かっている。

整った綺麗な顔に浮かぶのは、微笑み。

入り口にいる俺に向けていた。

紅い瞳の視線が交じり合い、離れなかった。

俺はただ、その場に立っているしか出来なかった。

目の前にいる女の子は外からこの建物に入ったわけではない事だけは、よく分かっていた。

「こんにちは。初めまして。天野叶さん・・・でしたね?」

「・・・ああ」

綺麗な声に首を振ることしかできない。

少女はくすりと微笑んだ。

「昨夜はいきなり貴方の部屋に入って驚かせてすみませんでした。私は貴方と話がしたかっただけなのです。どうですか?」

「・・・わかった」

「あら」

頷くと少女は首を傾げた。

「素直に話を聞いて下さるとは思いませんでした。何か理由でもあるのですか?」

いや、そういう訳じゃないけど、話をしないと事情が分からないし、何もできないからな」

「なるほど。そうですか。分かりました」

「私は、撫子(なでしこ)といいます。この建物、撫子荘と同じ名前です。貴方は昨日の夕食のときに、私の視線が気になっていたんですね。昨夜のあの時に少々観察させてもらいました。改めて驚かせたことに謝罪します」

少女――撫子は深々と頭を下げた。

「それに、私の姿が見えて、声が聞こえることを嬉しく思います」

「・・・・・あ、ああ」

驚きから体が動くようになって、やっとの思いで出した声は、そんな言葉だった。

撫子はそんな俺を見て微笑む。

「改めてお名前を伺っていいですか?」

「ああ。そうだな。自己紹介しないとな」

「俺は天野叶だ。この春休みが終われば、桜花学園に入学することにしたんだ。・・・・って名前を呼んでいる人に自己紹介は妙に変や気分だな」

ぎこちない自己紹介を終え、撫子へ目を向ける。

着ているのは着物・・・いや、袴だ。正月や成人式で女性が着る着物とは違う。剣道や弓道など服装に似ている。

でも、それよりも華やかで女の子らしい。

袴を日常で着ているのは少々目立つが、彼女とこの撫子荘にはよく似合っている。

・・・・・・妙に落ち着かない。

長い間、社会から抜けて、人との関わりを持つことが無かった自分だ。今、初めて会った人と不思議に受け入れて会話をしている自分に驚いている。

撫子は、友好的な態度かつ、丁寧な物腰だから、慌てるよりも先に落ち着いてしまっている。

収まりの悪い奇妙な感覚が付いて来る。

「叶は、どうして桜花学園へ行く事になったのですか?」

「・・・・それは・・・・・・今は言えない」

「・・・なにかしらの理由があるのですね」

「・・・・・・・・・そうだ。話す時が来れば、話そう」

俺がいきなり山を降りて学校生活をすることになった理由・・。それは誰にも話したくない。それを聞けば、俺は・・・・・・。

「どうなさいましたか?」

「いや、なんでもない。大丈夫だ」

そんなことよりも撫子のことだ。

「撫子はいつからこの建物にいるんだ?」

「それは・・・みさきさんの祖父がこの建物を建てたときからです。

祖父、黒川昇一郎(くろかわしょういちろう)と、この場所で私と出会いました。昔、この場所には何も無くて桜の木が一本とたくさんの撫子の花が一面に咲いていた場所なんです。今でもその面影があるはずです」

この家の前には樹齢200年以上の桜、枝垂れ桜がある。そして、その周りには撫子が一面に咲いていたのを思い出した。

「そのときの私には名前が無く、撫子という名前はこの場所に咲いていた撫子から昇一郎がつけてくれました。長い間、私の姿は誰にも見えなかったのです。でも、あの日に昇一郎が私を見つけてくれたのです。昇一郎が亡くなる少し前に『撫子にも住むところがないとだめだ』という事でこの建物、撫子荘を建てたのです。

そうして、昇一郎が亡くなり、この家を継いだのは息子、みさきさんの父親も私の姿を見ることが出来たのです。彼が亡くなって5年、その時間がとても永く感じました。でも今、私は嬉しいのです。こうして私と話していることや姿を見れていることに。私という存在をみていることに・・・」

撫子の瞳は、遠くを見つめてどこか寂しげな瞳だった。

撫子が幽霊なんて信じられなかった。

まるで、生きているような感じであった。

「撫子、今日は話をしないか?まだお互いは知り合ったばっかだ。まだ知らないところもある。どうだろうか?」

「はい!喜んで!」


                       ※


日はもう南へと昇っていた。朝から撫子と話をしていたら昼になってしまった。

「これから、俺は外に出るけど、撫子は出れるのか?」

「いいえ、私はこの家から出ることが出来ないのです。結界みたいな物が張っているようでそこから出れないのです」

「そうか・・・。なんかすまないな」

「いいえ、大丈夫です」

「・・・また・・・会えるよな?」

 はい。叶がこの撫子荘に帰ってくればいつでも会えますよ」 

「分かった。ありがとう。それじゃあ、出かけてくる」

「はい。いってらっしゃい」

撫子は笑顔で見送ってくれた。

撫子荘を後にし、外へ出た。


                       ※


「・・・・・・この町を見るのは5年ぶりか」

あの山での生活から5年。もう降りることは無いだろうと思っていた。俺が生まれ育った町、華咲町へと。

辺りを見回し、俺は歩き出した。

「やっぱり、5年も経てばいろいろ変わるものだな」

予想していた通り、かなり風景が変わっていた。

5年前までの風景は、完璧な田舎という感じで、自然に溢れていた風景だった。

今ではショッピングセンター、コンビ二、レストランなど、見かけない建物が立ち並び、昔の面影は少ししかなかった。

この5年間でかなり近代化が進んでいた。

「あの風景が昔は好きだったのだが・・・今はもう見れないのか・・・」

昔の頃、俺の家には朝日、夕焼けが見れる絶好の場所にあった。そのときの風景はまさに、絶景と言っても良いほどだった。

その風景に何回心を励まされたのだろうか・・・。

「まぁ・・・仕方ないか。時の流れには逆らえないし・・・」

この町をのんびりと歩き続けた。

 

                       ※


「ここは・・・」

俺の前にある建物は学校。

「ここが・・・俺が通う学校。桜花学園か」

その規模は普通ではない。立派な鳥居があり、それが校門だと言うのだ。

校舎は今では珍しい木造4階立て、敷地が10ヘクタールという広さを誇る学園。

私立桜花学園。

創立10年という新しい学校だ。前にもあったらしいが、戦争のときに焼けてしまったと言う。それを新しくしよう言う声で建てられたのがこの校舎だ。この学園の特徴。ここの校風は類を見ないものだ。

「自由」

「生徒第一」

これがそうだ。本来、先生たちがいろいろと学校の方針を決めていくのだが、ここは生徒たち、生徒会と風紀委員がそれを決めていくのだ。先生たちはそれに対して反論をしない。

そして自由。流石に法に触れる事はだめだが、ほとんどのことは許されているのだ。

服装は自由。髪型も自由。進路も自由。勉強するしないのも自由。と何も縛りの無い学園だ。

普通の学校ではありえないことだ。この校風に憧れて受験する生徒も多い。そのおかげで毎年倍率が10~15倍になることが当たり前になっているほどの人気だ。

「・・・学校か・・・」

学校に行くのは5年ぶり。長く暮らしていた環境から、人の多い環境、物がある環境へと変わる。

そのことで不安になっていた。

「あと、2日で登校か・・・・・・この先どうなることやら」

 学園を後にして、歩き出した。


                      ※


町の中心地、繁華街へやってきた。

やはり午後になっているからか、人が多かった。

「はぁ~人ごみは嫌なんだよなぁ~」

嫌々ながらも繁華街の中へ入っていった。

中はとても綺麗に装飾され、噴水もあった。さすが繁華街だ。

「ここでついでだし、日用品を買っていくか」

俺は日用品を買うことにし。

 

                      ※


必要な日用品を買っていたら、もう空は夕日に染まっていた。

「もうこんな時間か。早く戻ろう」

家にはみさきさんが夕食を準備しているはずだ。

急いで行こうとした時、声が聞こえた。

「何なの!?貴方たち!」

「なぁなぁ、俺らと遊んでいかない?嬢ちゃん。いいことしてやるからよ~」

女の子がチャライ男たち3人にナンパされていた。

「あんたたちみたいな下種に遊んでる暇なんかない。・・・・失せろ」

「おいおい、そんなとこ言わなくてもいいだろう?なぁ・・・」

「触るな!穢れる!お前たちのいるところで息を吸いたくない。いい加減に失せろ。屑が」

「おい、調子に乗るなよ!!くそ女が!!」

一人の男が女の子に手を出そうとしていた。

「はぁ~、やっぱりこうなるか・・・」

買った物を地面に置き、連中に手を伸ばした。

「あぁ~?誰だてめぇ・・・」

「女の子に手を出すなんて男らしくないな。どういう教育をすればこうなるんだか・・・親の顔を見てみたいよ」

「うるせぇ!!」

男は俺に向けて振り下ろした。

「・・・・・・」

俺はすばやく避け、男の顔面に拳を入れた。

「・・・が・・・」

男はそのまま床へ倒れ、気絶した。

「この程度か・・・くだらない」

「て・・・てめぇ!!」

「兄貴をよくも!!」

二人の男はポケットからナイフを取り出し、俺へと向けた。

「ナイフか・・・しかも安物かよ・・・お前たちなぁ~」

「おりゃああ!!」

俺の言葉を無視して二人で俺を刺しにきた。

「遅い・・・」

俺はそれを避け、二人の顔にも拳を入れた。

「がは・・・」

床へと倒れ、一人は気絶して、もう一人は気絶していなかった。

「あ~あ、呆気ない」

山で戦ってきた動物たちと比べれば、かなり弱かった。

「いって~。くそっ!!覚えてろよ!!」

男は二人を抱えてその場を去った。

「覚えてね~よ。ばーか」

これで面倒くさい騒動は終わった。

「大丈夫だったか?」

「ええ。ありがとうございます。おかげで助かりました」

女の子は深く頭を下げた。

「いいって。でも、あんなやつらにああ言って、勝てるつもりだったのか?」

「それは・・・」

女の子は俯いてしまった。

「賭けたのか・・・だれか助けてくれると・・・」

「はい・・・」

俺は女の子の頭をなでた。

「いいか。女の子の体は傷つけちゃいけない大切な物だ。そう簡単に粗末しちゃいけないんだ」

「・・・・・・ごめんなさい」

「いいんだ。分かってもらえたのなら」

女の子は笑顔で返してくれた。

「そういえば、名前は?」

轟陽那(とどろきひな)です」

「陽那か。いい名前だな。」

「俺は天野叶だ。よろしくな」

「はい!」

「おっと、こんな時間か。まだどこかでな!じゃあな!」

「ありがとうございました!!天野さん!」

「あぁ!!」

陽那との会話を済まして、みさきさんと撫子が待つ撫子荘まで急いだ。


                    ※


 陽那view

「・・・はぁ~」

私はその場に座り込んでしまった。

「終わったよ~」

緊張していたせいで力が抜けてしまった。

「あの人、すごかったなぁ~」

本当に助けてくれる人が居るなんて思ってもいなかった。

今のこの世界は漫画みたく助けてくれない。けど、いたのだ。漫画のような助け方をする人を。

私が探していた理想な人・・・。

「天野叶さんかぁ~。また会えるかな?」

あの人、天野さんにもう一度会ってみたいと心から思った。


                     ※


 叶view

「すみませ~ん。遅くなりました」

「もう、遅いよ天野君。なにしてたの?」

時刻は6時を回っていた。玄関にはみさきさんが待っていた。

「え~と・・・話せば長くなるんですが・・・」

「それは、食事のときに聞くわ。早く夕食を食べるわよ」

「はい」


                     ※

 

「・・・へぇ~。そういう事があったんだ」

「はい」

俺はコーヒー、みさきさんは茶を飲みながらさっきの出来事を話していた。

「いくらなんでも危険よ。けがはしてない?」

「大丈夫ですよ。していませんから。」

「そう?ならいいけど・・・」

「で、その子の名前はなんていうの?」

「名前は轟陽那と言っていました」

「ブーーーー!!」

勢いよくみさきさんが口に含んだ茶が俺の顔へ飛んできた。

「あっ・・・ごめんなさい!!」

みさきさんは慌ててふきんを持ってきた。

「いえいえ、大丈夫ですよ。このぐらい・・・」

せっせと俺の顔に付いた茶をふき取ってくれた。

「ありがとうございます。・・・で陽那って何かやっている人なんですか?」

「天野君!?知らないの!?今人気沸騰中のアイドルなんだよ!!」

「そうなんですか」

「リアクション低っ!!」

5年も社会を離れていたらアイドルとかそういうものには興味はなかった。

「天野君すごいなぁ~。有名人と会えるなんて羨ましいなぁ~」

「みさきさんは陽那ちゃんのファンなんですか?」

「そうだよ!大ファンだよ!あんな小さな体であそこまで頑張っているのに惚れちゃっていつの間にか陽那ちゃんのファンになっちゃったの!

しかも!!幸運なことに桜花学園の生徒で貴方と同い年なの!」

「そうなんですか?」

「そうだよ!!いいなぁ~。私も高校に戻りたい~!」

みさきさんのあの熱狂ぶりを見てかなりのファンだと分かった。

「・・・・・」

その姿を見て、昔の俺を思い出した。俺にも生きがいとなるものがあった過去を・・・。

「ん?どうしたの?」

「え、あ、いや、何でもないです。」

「それじゃあ、いつか会ったときにサイン貰ってきますよ」

「え!?いいの!?やった~!!ありがとう!!」

子供みたいにはしゃぐみさきさんを見て思い出していた。山にこもる前の自分のあの頃を・・・。

その日はその話で盛り上がり、楽しく1日が過ぎていった。


                     ※


「・・・んっ、ふわぁ~」

部屋に朝日が差し込み、その光で俺は目が覚めた。

「朝か・・・いよいよ明日だな。」

明日から新学期、5年ぶりの学校が始まる。

「何か緊張してきたな・・・。ランニングでもしてこよう」

「そんなに緊張するものですか?叶」

「あぁ・・・って!撫子!いつからここに!?」

「ついさっきですよ。『明日だな。』って言ったところからです」

「ずいぶんと前だなっ!声をかければいいのに・・・」

「なんか、叶を見ているのが楽しくて・・・」

「・・・・はぁ~~」

朝早々から疲れる。

「まぁ、いいけど。これから走りに行ってくる。それじゃあ」

「はい。行ってらっしゃい」

 撫子との話を終え、撫子荘を後にして走り出した。 


                     ※


「・・・ふう。こんなもんかな?」

走り出した俺は撫子荘からかなり離れた隣町へきた。距離は大体20キロメートル弱だろう。

「体力はちょっと落ちたかな?20ぐらいなら30分で着くのに」

山では嫌なほど体力がついた。動物たちに襲われて5時間以上も全力で走っていたことがあった。

あれは本当に死ぬかと思った。

「さて、走った事だし何か飲むか」

近くにあったコンビニへと寄った。


                     ※

 

 ???view

「・・・よし!!これで朝練はお~わりっ!」

朝早くおきて軽く走り、調子を整えるのは私の日課だ。陸上部の私には欠かせないものだ。

「さて!調子も良いし、何か買いますか!」

止まった近くにあったコンビ二に入った。


                     ※


 叶view

「何を飲もうか」

飲み物のコーナーに立ち、迷っている俺。

「う~ん・・・」

こういうのはあまり早く決めれない。色々あって迷ってしまうのだ。

「ここは、スポーツドリンクにするか」

棚にあった最後のスポーツドリンクに手を伸ばしたとき、誰かの手に触れた。

『あっ・・・』

同時に声を出した俺とその少女。

『・・・・・』

互いに固まってしまい、2秒後。

『す、すみません!!』

これも同時だった。

「あ、えっと、あの・・・」

少女はおどおどしていた。

「いいですよ。貴方にあげます。レディファーストです」

「え・・・」

少女はその言葉でおどおどするのをやめた。

「あ、ありがとう」

「どういたしまして」

少女にスポーツドリンクを渡した。その時、少女の匂いが鼻を燻った。

なにか懐かしい匂い・・・昔の友達の匂いに似ていた。

「すみません。失礼ですが貴方の名前は?」

「え、あ。私の名前は竜胆ですけど・・・どうかしました?」

「・・・もしかして榛名か?」

「え・・・もしかして貴方は・・・叶?」

「やっぱり!久しぶりだな!」

「叶!久しぶり!」

それは5年ぶりに出会った幼馴染だった。


                   ※

 

「いや~。叶に会えるなんて思ってもいなかったよ~」

「俺もだよ。」

コンビニから場所を移し、ファミレスへとやって来た。 

彼女の名は竜胆榛名(りんどうはるな)

彼女は昔から俺の知り合い。幼馴染ということだ。

小学校のときは俺とよく遊んでいた数少ない友達だ。

「5年ぶりか~。もうそんなに時が経ったんだね~」

「あぁ」

「叶は小学校のときなんか男のくせにいじめられてたっけ」

「やめてくれよ。その話はしたくないぞ」

「ごめんごめん」

昔の俺は女みたいな顔でよくいじめられていた。それをいつも止めてくれていたのが榛名だ。

榛名は気が強く、男じゃないかって言うほど度胸があった。

「もうちょっとで凪姉ぇも来るよ」

「凪姉ぇも?」

「そうだよ」

5年ぶりにあのメンバーが揃うなんて思いもしなかった。

二度とないと思っていた幼馴染に会うなんて。

「叶はこの5年間、何処に行ってたの?5年前、叶が何も言わずに転校しちゃって。私と凪姉ぇはすごく心配してたんだよ。何処に行ったっていう手がかりも無くて、死んじゃったって思ってたんだよ。何処に行っていたの?」

「・・・それは、まだ言えない。話すときが来れば話すよ」

「・・・・・・分かった。そういうことにしておいてあげるよ」

俺が5年前にいなくなった理由。榛名たちには知られていなくて良かった。俺は心から思った。いつかこの理由が聞かれたときには、榛名たちも今までの目で見てはくれない。巻き込みたくは無かった。

自分がいなくなった理由をあのときに聞いていれば、今みたいに接してくれないだろう。

「後でちゃんと話してもらうよ~」

「はいはい」

榛名はニヤニヤと笑いながら言った。

「遅れてごめ~ん!」

「おっ!?来たみたいだねぇ~。こっちだよ!凪姉ぇ!」

「榛名ちゃん!話は本当!?叶君が来たって!?」

「本当だよ~。目の前にいるじゃん♪」

「ふぇ?」

目の前にいる女性と目が合った。

「本当だ!叶君だ!久しぶり~!」

「久しぶり。凪姉ぇ。」

今やってきたのは燗凪葵(かんなぎあおい)

彼女も榛名と同じ俺の幼馴染だ。

俺と榛名の一つ上だ。

一緒に過ごしているうちに『凪姉ぇ』と呼ぶようになった。

凪姉ぇは他の人とは違い、マイペースで天然だ。

「5年ぶりだね。叶君。見違えちゃったよ。男らしくなってる~」

「ありがとう。少し照れるな・・・」

凪姉ぇに褒められるとつい照れてしまう。

凪姉ぇは昔、俺や榛名が怪我をしてしまったときにいつも手当てをしてもらっていた。

5年も見ていないせいか、凪姉ぇがかなり大人っぽくなっていた。

「5年も経てば雰囲気が変わるんだな」

ふふっ。そうだねぇ。叶君もかなり男前になって~見間違っちゃったよ~」

「ありがとう」

「あ~もう!叶だけずる~い。私も褒めてよ~凪姉ぇ~」

俺の目の前には、5年前の俺では考えれなかった光景がある。

元気が取り柄で、茶色の髪を揺らしながら話す榛名。

おっとりとした性格で、腰まで伸びている黒いストレートの髪をたなびかせながら話す凪姉ぇ。

もう二度と会うことの無いと思っていた二人。

こうしてまた会えて、話している。

「ねぇねぇ?そういえば!叶は何処に住んでいるの?」

「・・・行きたいのか?」

「うん!」

即座に返事が帰ってきた。そんなに見たいのかよ・・・。

「・・・はぁ~。分かったよ。それじゃあ行こう。凪姉ぇも来る?」

「ええ。叶君の部屋はどうなっているか、気になるもんね」

「はぁ~・・・・じゃあ、行こうか」

こうして、久しぶりのメンバーで俺の家というか下宿の撫子荘へ向かった。

 

                     ※

 

「ただいま帰りました~」

いつもの挨拶をして帰ってきた。

あっちのレストランでご飯を済ませ、帰ってきた。

みさきさんには一応、連絡をしていた。

「あ、お帰りなさい~。天野君」

ぱたぱたと小走りでみさきさんが来た。

「お邪魔しま~す」

凪姉ぇたちも挨拶をして撫子荘へ入る。

「あらあら、天野君のお客さんね。どうもこんにちは。偶然ですね。榛名さん。葵さん」

「え?みさき先生?」

「あら?みさき先生ですか?」

「ん?凪姉ぇたちはみさきさんの知り合い?」

「そうだよ!私の担任だよ!」

「私の教科担当者です」

みさきさんと葵姉ぇたちの知り合いで、榛名は担任、凪姉ぇは教科担当者だと言う。

と、いうことは・・・二人とも・・・」

「そう。私たちは桜花学園の生徒だよ?それがどうしたの?」

「明日から俺が通うんだが・・・」

「え~~~~~!!!!!」

玄関で大きな声を上げ、驚きを隠せずにいた二人であった。

 

                     ※

 

「いや~そっか~。そういうことだったの」

「そうだよ」

俺はみきささんとの今までの経緯を話していた。

「住むところに困っていて、偶然みさき先生と会ってねぇ~」

やっと榛名は理解をしてくれた。

凪姉ぇはすぐに理解してくれたが、榛名は中々納得してくれなかったのだ。

ニヤニヤとこっちを見る榛名。

「この一人屋根の下でみさき先生と叶だけってことは・・・」

「ことは?」

「ヤッたの?」

「はぁ!?」

「ブーーーーーー!!!!」

みさきさんは飲んでいた茶を吹き、俺はボトルを落としてしまった。

「ひゃああ~~~~!!!ごめんなさ~~~い!!」

みさきさんが吹いた茶はまた、俺の顔に掛かってしまった。

「やっぱり・・・」

「ねぇよ!」

「ありません!!」

即答で答えた。まだ会って数日しか経っていない人に手を出すなんて・・・。

「二人とも~そんなに顔を赤くして~♪本当に・・・」

「だーかーらー!!!」

「・・・ごめんなさい」

俺たちの威圧に気押され、からかうのをやめた。

「まぁ、そう勘違いされるのも仕方ないもんね。ここは噂で住みたくないっていう人ばかりだし」

「仕方・・・ないですよね」

みさきさんは悲しそうに笑顔で答えた。

「そういうなよ榛名。みさきさんにとってこの建物は思い出がたくさんある。そういう事は言うな」

「天野君・・・」

「・・・いつもの悪い癖が出てるぞ」

「はっ・・・いけない!先生!ごめんね!」

「いいですよ。大丈夫ですから・・・」

榛名は思ったことをすぐに言ってしまうのだ。そこが榛名の悪い癖だ。

「それ、直さないと友達減るぞ」

「以後、気をつけます・・・」

榛名も反省しているようだ。

「ジーーーーーー」

凪姉ぇと榛名の視線がかなり痛い。

「な、なんだ?」

「叶君は相変わらずなのですね・・・昔からの貴方の癖」

「え?」

「自然に他の女性を口説いてる・・・」

「あ・・・」

「昔からこういうのには叶君は鈍感ですね」

「私もそう思う」

榛名と凪姉ぇの二人からの指導を受ける。

「だから、いつまで経っても男になれないんだよ」

「それは関係ないだろ」

昔から知っている人では何も言えない俺だった。

昔の俺は彼女が欲しいと馬鹿なことを言い、二人からかなり女性のことについて教え叩き込まれた。

しかし、それを使うのは榛名と葵姉ぇ限定と言う訳の分からない制限をされていた。

「先生!叶に何回口説かれた?」

榛名はみさきさんに訳の分からない質問をしていた。

「え?え?えっと・・・その・・・す、数回だと思います」

「何で答えるの!?しかも!そんなにやっていない!」

「そんなに・・・?」

「あっ・・・」

しまった。つい変なことを言ってしまった。

「へぇ~・・・」

二人の視線がやけに殺気がこもっていた。

「叶・・・」

「叶君・・・」 

顔は笑っているが何故か恐怖を感じる。

「こっちに来て、説教です~」

「や~め~て~!!!」

俺は成す術なしに二人に引きずられて行く。

「天野君・・・がんばってね!」

みさきさんは助けてくれず、ニコニコしながらお茶を啜っていた。

手はグッドサイン。

「え~~~~~!!!!」

こうして、二人の説教は始まった。

この説教が終わったのは、陽が傾き、カラスが帰る時間まで続いた。


                   ※


「はぁ~すっきりしたね~!凪姉ぇ!」

「そうですね~榛名♪」

 二人はニコニコと部屋を出て、その後にゲソッリとした俺がいた。

「つ、疲れた・・・」

二人に長時間正座され、その体勢でずっと尋問をされていた。

「はぁ~~~~」

久しぶりの再開をして幸せだと思ったが、疲れる一日となってしまった。

「それでは、私たちは帰りますので」

「じゃあね~叶!」

「あぁ。もう説教は勘弁だ」

「それは無理」

「ですよね」

即答で返された。

もう疲れきった俺にはもう反論する気力はもう無い。

「またな」

「まったね~また明日~!」

二人は挨拶をし、帰っていった。

「元気でしたね。二人とも」

「そうですよ。昔からこうなんです」

「そうなんですか~」

夕食でこの話で盛り上がった。

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

いつものように食べ終わり、部屋へと戻り明日の準備をする。

「遅いです」

「撫子・・・すまん」

「他にいう事は?」

「申し訳ありませんでした。撫子さん」

「はい。よろしい」

「・・・ってなんでこうなるんだよ!!」

「ふふふ・・・」

いつものノリでやってしまった・・・。

「まぁ、今日は仕方ありません。今日は久しぶりの人に会ったんですから」

「すまないな」

「いえいえ、いいですよ」

撫子は微笑んだ。

「あ~そうだ。撫子。明日から俺は学校が始まるから、日中はいなくなるぞ」

「え!?そんな!私はどうすればいいのでしょう・・・」

よよよ・・・と悲しむフリをする撫子。

「撫子・・・葵姉ぇたちの真似をしているのか?」

「はて?なんのことでしょう?」

顔を逸らしながら言う撫子。しかも棒読み・・・。

「分かってるんだぞ。お前が日中のやりとりを見ていたの」

葵姉ぇたちと話しているときに撫子がそれを見ているのは分かっていた。

「いつからですか?」

「最初から」

「そうだったのですか!?」

「バレバレでした」

「ついでに言っておくと、凪姉ぇたちのまねしても無駄だ」

「え~~~~」

撫子はぷく~と頬を膨らませて拗ねていた。

「撫子は凪姉ぇたちのまねをしなくていいんだよ。撫子は撫子が良いんだ」

「えっ・・・」

撫子は顔を赤く染めて、顔を背けた。

「・・・・・」

「撫子?」

「えっ?な、何でもないですよ!」

「本当にか?」

「はい!大丈夫ですから!」

「じゃあ。おやすみ。撫子」

「お、おやすみなさい!」

電気を消し、俺は眠りについた。

明日の学校生活はどうなるんだろうと期待しながら・・・。


                      ※


 撫子view

「・・・寝たかな?」

やっと眠りについてくれた。

「・・・・・」

それにしても、何であんなことをスラって言えるのか不思議だった。

「それにしても、どうしてこんなにも私を気にかけているのかなぁ」

私は幽霊なのに、生きている人と同じように接してくれる。

「優しすぎるよ。叶は・・・いずれ・・・私も本当のことを言わないといけないね・・・」

私は叶の寝ている姿をずっと見ていた。

月明かりに照らされながら・・・。

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