第三十八話。地下格闘技場に行く。 (執筆ラビリンスコーヒーLv1)
地下格闘技の試合に向かう為、由佳子と真吾は卓郎と合流する為、猫柳師範の道場へと向かった。
「ああ、由佳子さん。ようこそ」
道場では足立卓郎が空手の型の練習をしていた。
「あれっ? 猫柳師範は?」
真吾が姿が見えない猫柳師範について卓郎に聞いた。
「ああ、猫柳師範なら骨折を少しでも早く治す為に、家で安静にしているよ」
「そうなんだ。その方が良いわね」
由佳子は言ったが、実は猫柳師範が骨折していたとはいえ、犬神に負けたことがかなり悔しくて、骨折している箇所以外の所を重点的に鍛え治す修行をしていたのだ。しかしそれは卓郎は知らなかった。
「じゃあ、行きましょうか」
「うん。そうだね。行こう。でも地下格闘技か……一体何をするんだろうか。余興って」
卓郎が呟くように言った。
「余興だから、腹芸とかドジョウ掬いとかそんなことでしょうか」
「「「うーん………」」」
三人は同じように口をそろえて考え込んでしまった。
「そういえば、俊哉君は?」
「俊哉に携帯電話かけたんだけど、繋がらないのよね」
実は俊哉は荒っぽい性格の為、よく携帯を壊すのだ。そしてまた新しい携帯を壊したばっかりで俊哉は今、誰とも連絡つかない状態にいた。
「家にはかけたのかい?」
「うん。家に電話をかけたら、お母さんが『俊哉は今バイトに出かけたのでいないの、ごめんね。由佳子ちゃん』って言われたわ」
「そうか。でもまあ俊哉もバイトをしているんだったら、俊哉はいいか。地下格闘技には俺達だけで出よう」
「そうね」
「とは言っても余興だけどね」
そんな会話を交わしながら、三人は今度は勇気の家へと向かった。そして勇気と合流すると4人で地下格闘技の行われる場所へと向かった。
地下格闘技の行われる場所へ到着すると。
「あっ、俊哉じゃない!」
「おお、由佳子! どうしたんだ? こんな所で」
「俊哉こそ、こんな所で何しているの?」
「俺? 俺はバイトっていうか、金稼ぎをする為に、ここへ来たんだ。この地下格闘技で優勝すると、賞金100万もらえるらしいぜ」
「ああ、知っている。でも僕達は地下格闘技の前座の余興の為に来たんだ」
「前座の余興? どういうことだ?」
「うん。なんか前座の余興で盛り上げたら、あのチケット譲ってくれるんだってさ」
「まじで? へえっ。じゃあ優勝する必要はないわけだ」
「まあね。でももし100万欲しいのなら参加したらどうだい? 俊哉君」
「そうだな。じゃあ俺だけ参加するか。それにもし海外に行くんだったら皆の旅費も必要になるしな」
「確かにそうね。だってあのチケット参加だけのチケットのようだし。旅費はまた別に必要かもしれないわね」
というわけで俊哉は試合に出場、そして由佳子達は前座の余興をすることになった。
会場に着き、名前を言うと、イベントの企画担当者が出迎えてくれた。
「あなたたちですね。待ってました。ささ、どうぞ中へ」
言われて個室へと通される由佳子達。
「ところで私達は何をすればいいの? 余興って」
「ええ、実はあなたたちのことは私知っていたんですよ。この間の大会に出ましたでしょう?」
「ああ、あの格闘技大会?」
「ええ、魔堕天と闘い、惜しくも敗れましたが素晴らしい試合でした。それであなたたちは空手か何かをやっていらっしゃるんでしょう?」
「ええそうね」
「なので瓦割りなどをやってもらおうと思っています。あとはもしよろしければですが、魔堕天との試合で使った気功などを披露して頂きたいのですが」
「気功を? まあいいけど」
「ありがとうございます。これで前座は大いに盛り上がることでしょう」
担当者は言ってにっこりと笑った。
そして、いよいよ前座の余興が始まった。
「緊張するな」
卓郎が言う。
「ええそうね。ふふふっ、まるでライブ開始前の歌手のような気分かしらね」
「さあ、皆さんぱっぱと終わらせて、チケットをもらいましょう」
勇気の言葉に、皆「うん」と頷いた。
格闘場に出ると、異様な雰囲気が漂っていた。
「すごいな。金網か」
卓郎は独特の雰囲気に多少飲まれていた。
金網の中に入ると、MCが由佳子達を迎えた。
「さあ、今日やってきたのは。あの魔堕天との壮絶な試合を演じた。由佳子さん達です!」
MCの言葉に会場は沸いた。
「今日やってもらうのは瓦割りです!」
すると、ブーイングが起きた。
「何よ。私達だって好きでやるんじゃないわよ」
由佳子が小声で言った。
金網内に瓦が用意され山積みにされた。
「じゃあ僕から行くよ」
まずは勇気。勇気は30枚もの瓦を一気に割った。
会場からは歓声が沸いたが、しかしそれはまばらだった。
次に由佳子、次に卓郎、次に真吾だった。
皆が瓦を割り終えると、観客から掛け声がかかった。
「気功! 気功!! 気功!!!」
「おっと、会場から気功コールが起きました。どうでしょう、やってくれますでしょうか」
MCが由佳子達に問いかけて来たので、由佳子は「分かりました」と頷いた。
「おぉおおおおお!!!!」
会場のボルテージは一気に上がり、割れんばかりの歓声が会場内に響き渡った。
「これだけ盛り上げればチケットは間違いないな」と勇気。
そして由佳子達は気功を使い、分身、変わり身、神速、威嚇、空中浮遊、遠隔倒し、様々な種類の気功を客に見せた。
「素晴らしい気功ありがとうございました!!」
MCは満足げに言った。
すると、「ちょっと待てぇ!!」と金網の外から声を荒げて向かってきたのは、なんだかガタイの良い、プロレスラーのような風貌をしているマスクを被っている男達4人組だった。
「な、何でしょうか?」
MCは困惑しているような言い方をしているが目が若干にやけている。
「もしかして、俺達はめられたのかもな」
卓郎がため息を吐き出しながら言った。
「どういうこと?」
由佳子が聞くと、勇気が卓郎の代わりに話し始めた。
「たぶん、もともとケチをつける予定だったんですよ。由佳子さん。そして僕達と闘わせるつもりだったんですよ。瓦割りとか気功の披露とかは関係なしで、こっちをメインにする予定だったんですよ」
「嘘っ、そんなの卑怯よ!」
「でもそれが大人の社会って奴なのかもしれないね。姉ちゃん」
「何、悟ってるのよ! 真吾!」
「やれやれだな」
「ええ、やれやれですね」
「やれやれだぜ」
「そうね。やれやれね」
四人ともジョジョのような言い方ではあっとため息を盛大に吐き出した。
そして案の定、金網の中に入って来た男4人組は由佳子達に挑戦状を叩きつけた。
「その気功とやら、手品かなんかじゃないのか? 本当にそんなのがあるなら、俺達と対戦して、証拠を見せてもらおうじゃないか。それとも嫌なのか? ああん? ああん? あああんあん?」
微妙な威嚇だったが、由佳子達は「分かったわよ」としぶしぶ了承した。これもチケットの為だと思い。
そして由佳子達チームと乱入4人組との試合が始まった。が、瞬殺で由佳子達が乱入男達をのして、勝利した。
会場内は大いに盛り上がった。
試合後、由佳子達は個室に呼ばれた。
「何だか騙したようで悪かったですが、どうか許して下さい。ですが、会場は大いに盛り上がりました。感謝しています」
企画担当者が頭を下げた。
「良いのよ。でもそんなことより。約束のあれを早く頂戴あれを」
「あ、チケットですね。すいません。ただいま用意します」
言って、個室からダッシュで出て行った、担当者は数分後、個室内に戻ってきた。
「これが約束したチケットです」
「ありがとう」
由佳子達はチケットを受け取った。
「はあっ~、やっと終わったわ」
「そうですね。あっ、でも俊哉君の試合がまだ残っていますよ」
「あら本当ね」
由佳子達は俊哉の試合を見るために、再び今度は客として地下格闘技の席へ着いた。ちなみに席は無料でいいとのことだった。
俊哉は気功を使い、相手を次から次に倒し、そして優勝を果たした。
「やったぜ! 由佳子! 100万円ゲットだぜ!!」
ポケモンをゲットした時のような言い方で俊哉が言った。
「は、恥ずかしいわ。俊哉の奴……」
由佳子は恥ずかしくて顔を下に向けて呟いた。
そして100万円とチケットを手にした由佳子達メンバーは世界大会が行われる半年後に向けて、修行を開始することとなった。




