第三十五話。猫柳師範の闘い (執筆たつきさん)
「いいじゃろう……」
猫柳師範は、リングに颯爽と上がった。
「久しぶりだな、猫柳。我龍先生の元で修行した以来だ」
魔堕天の師匠、犬神師範は言い放った。
「気は充実しているようじゃな」
猫柳は、低い体勢で構えた。
「お互いな……」
犬神は、高々と両手を上げ、構える。
「それではっ! レディッ! ファイト!」
レフェリーの声と同時に、猫柳はリング全体を使い、くるくると移動する。
「ふふふ。武者修行の果てに辿り着いたのが、その程度か?」
犬神は不敵に笑うと、両手で気を練り始めた。
「ふん。お主の気は邪気で満ちているから好かん」
猫柳は、距離を置いて、様子を見ている。
「震脚!」
犬神は震脚で、足元に気を込めた。
「な、なんだ?」
観客たちがどよめく。
会場全体がぐらぐらと揺れたのだ。
そんな中、猫柳と犬神だけが、シャンと立っている。
由佳子たちは、なんとか立っていられてが、大半の観客は倒れた。
「ふん。ワシに気功はきかんぞ」
「だろうな……少し威嚇しただけだ」
犬神は、信じられない速さで、猫柳の背後に回った。
「死ね。武術使い……!」
犬神の手刀は、確実に猫柳の首を狙って、両の腕から放たれた。
「ぬるい!」
しかし、猫柳は残像をうまく利用して、窮地を免れる。
「ほう……昔のままの動きだな。だが、今のワシは、昔以上の動きだ!!」
犬神は、猫柳の残像に惑わされず、実像に深く迫る。
距離を詰めてから、猫柳の服の裾を握る。
さらに、足で猫柳の踵を強く踏み、動きを封じる。
「なっ! アイツ。きたねぇ技ばかり使いやがって!」
神竜寺俊哉が熱くなって叫んだ。
「だが。あれも、武術だ」
本元勇気は、悔しがりながらも認めた。
田中卓郎は、黙って猫柳師範を見ている。
「はぁっ!!」
ドゴォという凄まじい音とともに、犬神の前蹴りが、まともに猫柳の腹に入った。
「ぐはっ」
血を吐いて、猫柳師範は倒れた。
すぐに起き上がったが、犬神の追撃は緩まない。
右ハイキック、左ミドル、左右のインローからの渾身のボディブロー。
老人離れした動きに、会場全体が恐怖すら覚えた。
猫柳師範は、顔面血だらけになっている。
「ドクターチェックを行います!」
ドクター達が一旦、試合を止めようとするが、犬神の暴走は止まらなかった。




