第三十四話。決勝戦決着する。 (執筆ラビリンスコーヒーLv1)
まさか、カンピーネが女だったとは。
実は卓郎は今まで空手に打ち込んできていて、女子とは疎遠な学生生活を送ってきていたので、由佳子は別として、それ以外の女子とはあまり話す機会がなく、会話をしようものなら、どぎまぎして、「な、ななななななんだ?」などと噛み噛みになってしまうほどの苦手意識があったのだ。それが例えクラスメイトの女子だとしても。
だから、相手のカンピーネが女子だと分かってからは、最初は試合に没頭していた為、たいして異性として意識をしていなかったのだが、徐々にホールドした時の感触を思い出し、カンピーネを異性として意識し始めた卓郎はカンピーネに対しての戦闘モードが低下してしまったのだ。
「頑張れ卓郎!」
メンバーがリング外から声援の声を送るが、卓郎の耳にはあまり届いておらず、額から脂汗が流れるばかりだった。
どうしようか。卓郎はカウンターに対する唯一とも思える秘策が使えなくなり焦った。
「ほら、早くかかってきなよ!」
カンピーネが卓郎を挑発する。
「黙れ! お前の作戦には乗らん」
卓郎は言うが、内心は目の前にいる対戦相手の女子に、そして先ほどの状況に感触に卓郎も思春期の男なので内心、どきどきして試合どころではなくなっていたのだ。
「行けー! 卓郎。カウンターなんか気にしないで、カウンター食らっても相手ごとぶちのめせ!」
俊哉が言うが、卓郎は攻撃に移せないでいた。
「どうしたの? 卓郎」
由佳子が心配そうに声をかける。
しかし、卓郎は動かない。
動かない卓郎と、カウンターを狙っているカンピーネ。試合は膠着状態が続き……必然的にこうなった。
「タイムアップ! 試合終了! 判定に入りたいと思います」
「は、判定!? 判定なんかこの大会にあったのかよ」
勇気が驚きの声を上げた。
「本当だわ。私もそんなルール知らなかった」
由佳子も勇気に同意する。
「皆さん。ルールブックぐらい読んでおいて下さいよ」
真吾が言う。
「お前は知っていたのかよ。真吾。じゃあ、皆に言っておけよ」
俊哉が咎めるように真吾に言った。
「いえ、僕も今初めて知りました」
「お前も知らなかったんじゃねえかよ」
「す、すいません」
「おい皆、判定が始まるぞ!」
勇気の声に皆の視線がリング中央へと向けられる。
リング中央には勝ち誇った表情をするカンピーネと青ざめて下を向いている卓郎がいた。
「ほっほっほ。この勝負私の勝ちね。私には彼のパンチは当たっていないわ。対して私はカウンターによる有効打が彼にクリーンヒットしているわ。他にも投げも決まっているし、ハイキックも決まっている。私の勝ちは100%間違いないわね」
「くっ!」
卓郎も自分が負けたと思っているのか、悔しそうに下を向いている。
「これで私達、魔堕天チームの優勝が決定したわね」
カンピーネは右手人差し指を天に向けた後、その人差し指にキスをし、もう一度その人差し指を天に向けた。
そして、レフェリーが判定を告げた。
「以上、判定の結果……引き分けとさせて頂きます。というわけで両者チーム優勝!!」
ウォオオオオオオ!!!!
轟音とでも呼べそうな声が会場に響き渡り、会場全体がまるで揺れたかのようだった。
「ちょ、ちょっと納得できないわよ。どうして引き分けになるのよ。有効打は私の方がとっていたはずでしょ?」
カンピーネは信じられないと言った感じでレフェリーに詰め寄る。
「いえ、有効打はカンピーネさんですが、積極性で卓郎さんの方にポイントが入りました。なので、両者引き分けで、両チーム優勝ということに決まりました」
すると、「納得出来ん!」と声を荒げて観客席からリングに入って来たのは、魔堕天の監督だった。それは以前街中でいざこざがあった時にいた五暴連から先生と呼ばれていた、謎のじいさんだった。
「な、何ですかあなたは……」
レフェリーは突如の出来事に困惑している。
「こんな結末納得できるわけがない。だいたい両者優勝ならば、優勝の商品はどうなるというのだ。まさか半分にするとか言うんではないだろうな!」
「そ、それは……」
レフェリーが戸惑っていると、魔堕天の監督が「延長戦をしようではないか」と言った。
「え、延長戦? で、ですが大会運営に確認をしなくてはならないですし、第一選手はもう疲労困憊で戦う状況じゃありません」
レフェリーが言うと、魔堕天の監督がにやりと笑って言った。「私と猫柳がいるではないか。なあ猫柳?」
魔堕天の監督が会場から見守っている猫柳師範に上を向けた手のひらの、指をくいっと動かし猫柳師範に言った。




