第三十二話。決勝戦。副将戦。俊哉vsリンネ(執筆ラビリンスコーヒーLv1)
リンネがリングに上がると、会場は不穏な空気に包まれた。
それは彼は黒子の様に表情を隠していたからかもしれない。それと同時にどこか得体の知れないオーラを噴出しているので、会場の皆はリンネのことをブーイングするでもなく、ただ彼の不気味なオーラに会場全体が飲み込まれたかのように、静けさが漂っていた。
「うっし、行ってくるぜ!」
俊哉は意に介するでもなく、リングに上がった。それは俊哉が気を着実に覚えつつある余裕から来たのかもしれなかった。
「はあああっ!」
俊哉は気を足に集中させると、足を一歩踏み出した。
「は、はやい!」
リンネが言うと同時に俊哉のパンチがリンネの顔面をとらえた。
「ぐっ!」
リンネは吹っ飛び、リングの上でダウンした。
カウントが会場に木霊する。
「まさかこれほどまでとは……」
リンネが呟くが続いて「しかし……」とぽつりとつぶやいた。
リンネは幻術を使った。
それは催眠術の一種で、気を常に身に纏っていればかかることのないものだが、更に気を上手く使いこなしていれば簡単に見破ることが出来る類の幻術なのだが、まだ気の力の使いこなし方が攻撃に対しては上手く出来るのだが、防御に対してはあまり出来ていない俊哉は幻術にかかってしまった。
その幻術の内容は由佳子が人質に取られると言ったものや、由佳子が裸にさせられると言った類の物から、ペットがひん死になっているというものまで、俊哉にとってつらいものばかりだった。
「これは……現実なのか? それとも幻か?」
頭が混乱している俊哉の耳元でリンネは声をかけた。
「これは幻だ。この幻を解くのは仰向けになって頭を横に振るしかない」
「まぼろ……し?」
俊哉は幻であると安心しつつも、やはり目の前のこの光景に胸を痛めていた。早く幻から脱出したいと思った。それが例え、リンネの罠だとしても。それほどまでにこの幻術は俊哉にとってつらいものだった。
そして俊哉はリング上で仰向けになり、首を大きく何度も横に振った。
「幻よ消えろ! 幻よ消えろ!」
リングではレフェリーがダウンのカウントをとっているが、俊哉にはそれは耳に入らなかった。
そして……勝負は決した。
「勝者! リンネ!」
リンネは右手を上げると、俊哉にかけた幻術を解いた。
「ふっふっふ。悪く思うなよ」
俊哉は悔しさよりも、安堵が先に来た。しかししばらくすると悔しさが、自分に対するふがいなさが胸に湧き上がってきた。
「すまねえ。俺が勝負を決めるつもりだったのに」
「いいってことよ。後は俺に任せとけ」
卓郎が言って、リングに上がった。
卓郎がリングに上がると、対戦相手もリングへと上がった。
「僕の名前はカンピーニだ。僕は猫柳師範の最初の弟子だ」
カンピーニはそう卓郎に向かって言った。




