第二十九話。決勝戦 第一試合 先鋒戦 (執筆たつきさん)
「よう、チビ。何だその覆面は? ふざけてんのか?」
試合開始直後から、魔堕天の先鋒の桂敬二は、真吾の鬼の覆面にケチをつけてきた。
真吾はムっとしたが、覆面をつけたままなのもどうか思い、覆面を外した。
「これでいいだろ?」
言い終わらない内に、魔堕天の桂は、ガリガリの体から、渾身の右ストレートを繰り出してきた。
そのパンチは、真吾の顔面にモロに入った。
「ぐはっ。汚いぞ!」
「へっへっへ。これも戦術さ!」
言いながら、今度は、長い手足からの左ストレートを繰り出してきた。
しかし、今度は油断せずに、上体を捻り、逆にクロスカウンターを合わせた真吾。
相手の顔面に届くはずだったが、腕の長さが足りず、届かなかった。
「くそっ」
「危ない危ない。相手がチビで良かったぜ」
「なんだとぉ!」
怒った真吾は、ガムシャラに前へ突っ込んだ。
リングの外の由佳子は、真吾にアドバイスした。
「真吾、挑発に乗っちゃダメ! 相手の作戦よ!」
しかし、真吾は試合に夢中で、由佳子や観客たちの声は耳に入らなかった。
打ち合いに賭けるが、いかんせん、相手のひょろ長い手足とは、リーチの差がありすぎた。
一方的に攻撃を当てられ続け、とうとうダウンしてしまった。
「1、2、3、4、5、6、7、8!」
「くそっ! 立て、立つんだ! オレの足!」
「9、10!」
カンカンカンカーンとゴングが鳴り、試合が終了した。
無念にも、真吾は負けてしまったのだ。
「残念だったな。坊主」
対戦相手の桂敬二は、手のひらをヒラヒラさせて、おどけてみせた。
「あの野郎!」
神竜寺俊哉は、それを見て怒り、リングに上がろうとするが、由佳子と勇気に止められた。
「大丈夫。まだ一回負けただけ。次は私が出て勝つわ」
由佳子は諭すように俊哉に言った。
「……そうだな。弟の分も、思いっきり暴れていけ!」
俊哉はそう言って、次の次鋒の相手を睨みつけた。




