第二十六話。第二回戦開始。 (執筆ラビリンスコーヒーLv1)
「では第二回戦、第一試合を開始する。先鋒前へ!」
由佳子達は対戦の順番は一回戦と同じで変えなかった。
茨高校は制服をびしっと着こなし、髪の毛もぴっちりと揃えられて、一寸の乱れもないかのようだった。
一回戦と同じく、先鋒で真吾がリングサイドに入ると、茨高校の一人が「ちょっと、待ったー!」と審判に声をかけた。
ちなみに茨高校の対戦相手は皆同じように制服をぴしっと着こなしているので、遠目にはまるで五つ子のように見えなくもない。
「何だね? 茨高校よ」
審判が申し出をした茨高校の生徒に聞いた。
「僕達の情報網によると、僕達の相手は気功というのを使えるらしいな!」
「うっ、どこでその情報を……」
由佳子の心臓がどきっと跳ね上がった。
「僕達の情報網を甘く見るなよ。そう言えばそこの君、勇気君と言ったかな。君は僕達の高校に入ろうとしたんだってね。僕達の高校に入って風紀委員になって不良を更生しようとしていたんだってね」
「ああ」
「どうして茨高校に入学しなかったの?」
由佳子が聞いた。
すると勇気は、「ただ単に入学テストに不合格だっただけだ」と表情を変えずに言った。
「何だよ。勇気、お前実はあんまり頭良くないのか?」
俊哉が言うと、「うるさいな」と勇気は少し、むくれた様子で返事をした。
「その通り、僕は茨高校に入って、風紀委員になろうと思ったけど、それがどうしたんだ?」
「いや、風紀委員っていうのは、規律を守り、正す委員だ。君も僕達の学校の風紀委員を目指していたなら分かるはずだ。風紀委員っていうのは生徒の指針でなければならない。つまりズルはだめってことだ」
「何が言いたいんだ?」
「つまり、君達のメンバーは皆気が使える。で、僕達は使えない。これは平等ではないのではないか?」
「はあっ? どんな論理だよ」
俊哉が頭に指を当てて、くるくると回す仕草をした。
「君は口を出さないでもらえるかな。僕は勇気君とさしで話をしているんだよ」
「つまり、どういうことだ?」
「だから、僕達は気が使えないのだから、気を使わないで闘うか、別の方法で君達と闘いたい」
「何言っているの? 茨高校」
流石に由佳子もあきれ果てて言った。
「別の方法?」
「ああ、そうだ。君達と僕達が平等に戦える方法だ」
「勇気! そんな奴の相手なんかするな」
俊哉が言ったが、正義感の強い勇気は平等という言葉に踊らされたのか、相手の話に耳を傾けていた。
「例えば将棋……とか」
「将棋? 地下格闘技大会なのに将棋で勝負しようというのか? そんな馬鹿な話があるか。こっちは将棋をやったことある奴なんていないぞ」
すると、俊哉が「将棋か……面白そうだな」と呟いた。
「はあ? 俊哉どうしたの? 面白そうだな、なんて。まさか相手の口車に乗るつもりじゃないでしょうね。あんた将棋やったことあるの?」
「ああ、実は俺、将棋の大会で結構いい所まで行ったことあるんだよな」
「嘘でしょ? でも、私はもちろんのこと、弟の真吾も将棋なんて出来ないし、勇気君も話を聞くと将棋は出来ないし、あっ、卓郎君は将棋出来るの?」
卓郎は無言で首を横に振った。
「ほらっ、俊哉以外将棋誰も出来ないじゃん。もし、これで将棋対決になったりしたら、それこと相手の言うように、平等じゃないわ」
すると、その声が聞こえていたのか、茨高校の先鋒が言った。
「では、これはどうでしょうか? 一対一の一回勝負です。勝った方が三回戦に進出するというルールです」
「え? 一発勝負で二回戦を決めるっていうの? でもそんなのルール違反なんじゃないの? だいたいこの大会は地下格闘技大会なのよ? そうでしょ。審判!」
由佳子が必死に審判に訴えると、審判は「確認します」と言って誰かと遠隔で会話をし始めた。
しばらくして……。
「OKです。特別ルールとして許可します。第二回戦は将棋対決に決まりました。勝負は一回です。勝った方が三回戦に進出です。では対戦する選手、前へ」
「姉ちゃん、嘘だろ? 本当に将棋対決になっちゃったよ。ここ格闘技大会だよね」
「本当だわ。そんなことってあるのかしら。一体この大会の取締役は何を考えているのかしら」
由佳子が言うと、審判が「将棋も頭脳の格闘技ですから」と言った。
「上手い。座布団一枚」
卓郎が言うと、由佳子が「全然上手くないわよ」と言った。
そして、リング中央に並べられた将棋盤と将棋駒の前に茨高校の一人と俊哉が座り、向かい合う形となった。
「レディー? ファイト!」




