第二十四話。次鋒戦開始! (執筆ラビリンスコーヒーLv1)
アナウンスの指示に従い、リングサイドに入った勇気は同じくリングサイドに入った荒川優を見て、思わず「でかいな」と呟いた。
勇気は今まで様々な不良たちと闘い、更生したがその闘った中でも一番の大きなガタイをしていた。
荒川優はゴングが鳴る直前、背中を反って天を見上げるような仕草をした。
ゴングが鳴らされると同時に、荒川優は一直線に突っ込んできた。
「速いっ! だが、それだけだ」
相手はプロレス研究会。勇気は真吾の試合から、相手がタックルを仕掛けてくると思い、タックルを警戒した。
しかし、相手はタックルを仕掛けてこなかった。
代わりに相手が繰り出した技は。
「張り手か?」
勇気はまさかの予想外の張り手に躱すことが出来ず、もろに側頭に相手の張り手を受けてしまった。
強烈な一撃で脳を揺さぶられ、勇気の意識が一瞬吹っ飛びかける。
勇気は咄嗟にサイドステップでその場から離れ、相手と距離を取る。
「ふっしゅしゅ。どうですか。ぼくの張り手の威力は」
心底嬉しそうに笑う荒川優。
「君達プロレス研究会じゃなかったのかよ」
まだ若干頭がぐらつく勇気が相手に聞いた。
「そうっす。ぼくらはプロレス研究会っす。でも僕はまだプロレス研究会に入ったばっかりなのっす。ぼくはこの研究会に入る前は相撲をやっていて学生横綱にもなったことがあるっす」
「くそ、とんだフェイントだな。プロレス研究会に所属する元相撲選手か。でも何で君は相撲をやめたんだ?」
「何で? だって僕がいっつも髪の毛を掴んだり、両耳を同時に両手で張ったり、みぞおちを突いたり、相手の指を掴んで折ったり、張り手や、かち上げや、ダメ押しをして、相手を怪我させていたら監督とか対戦相手とががいっつも文句を言ってきてうるさかったからやめてやったっす。ほんっと情けない奴らっすあいつらは。格闘技なのに文句を言いやがって。ふしゅるふしゅる」
荒川優は鼻息を荒く、独特の呼吸をしながら言った。
「なるほどな。つまり君は学生横綱にはなれたがそれは君自身の力ではなかったっていいうことだな。君が学生横綱になれたのはただのまぐれ、ただ反則技を繰り出しそれが単にばれなかったっていうだけだ。あるいは君に怪我をさせられて、このままでは今後相撲が出来なくなる可能性があると思った相手が引いて、その萎縮した相手に君は勝っただけか」
「何が言いたいっすか」
「つまり君は正々堂々と相撲で闘っては相手に勝てないから、相撲から逃げたわけか」
「何を言っているんすか」
荒川優の顔が歪みはじめる。
「決められたルールの中で競い合うのがスポーツだろう。君は自分の弱さを認めたくないが為に、そのルールを破り、相手に勝ち、自分が強いと思い込もうとした。君は反則がなければ相手に勝てない負け犬です」
「お前に何が分かる」
ふしゅるしゅるると、まるで犬のように口から漏らす荒川優。
「来い! 僕がお前を更生してやる」
すると、荒川優は垂れた胸の下にある空間から警棒を取り出した。
「警棒……か。どこまでも腐った男だな」
勇気が吐き捨てるように言った。
「何とでも言うがいいっす。この世は勝ったもん勝ちっす。この世は焼肉定食っす!」
勇気は、それを言うならば弱肉強食だ、という誤字を訂正する気にもなれなかった。
「さあ、あんたも今まで相撲界から葬り去ってきた奴らと同じく、二度と格闘技が出来ない体にしてやるっす」
「あの野郎!」
それを見ていたリングの外の俊哉がリングに上がり、荒川優を止めようとするが、それを由佳子が静止した。
「由佳子! 何するんだよ! このままじゃ勇気の奴が危ねぇ!」
「大丈夫! 勇気は負けない!」
由佳子が力強く言うと、俊哉は「そうだな。あいつがあんな反則野郎に負けるはずがないな」と言った。
荒川優がまるで闘牛のように足を、何度も蹴る仕草をした後、勇気に突っ込んで行った。
「感謝を込めて。心眼気合手刀!!」
勇気の一撃が荒川優の眉間にクリティカルヒットし、荒川優は大きな音を立てて、巨体をリングに沈めた。
「1、2、3、……10」
レフェリーが試合を止め、勇気は勝利した。
「では、中堅、前へ!」
会場のスクリーンに、足立卓郎vs綺麗川キララと映し出された。
リングに上がってきたのは黒髪を腰まで伸ばしたパリコレにでも出てきそうなモデル体型の美形の人物だった。
「まさか次の相手は女か!?」
俊哉が驚愕して言った。




