第二十話。皆でクレープを食べに行く (執筆ラビリンスコーヒーLv1)
「じゃあ、これから皆で何しようか?」
由佳子が言った。
「姉ちゃん、俺空手の王国が観たいよ」
真吾が言うと、俊哉は露骨に渋面して言った。
「いや、俺達今それを観たばっかりなんだよ」
「でも俺、空手の王国を観にここに来たようなもんだし」
「別に僕はもう一回観てもいいよ。真吾君」
勇気が言うと、卓郎もその発言に頷きながら「そうだな、良い映画は何度見ても飽きることがない」と涙を浮かべながら言った。
「えーマジかよ」
俊哉はかったるそうな顔をしたが、自分が真吾の顔を見たいと由佳子に言ったこともあり、しぶしぶ了承することにした。
こうして、5人は空手の王国を観るために映画館に入った。
俊哉はポップコーンを買って席で食べた後、映画が終わるまで終始眠っていた。
「ちょっと、俊哉! 映画終わったよ!」
「俊哉君、起きて下さい。映画が終わりましたよ」
由佳子と勇気が俊哉を揺さぶる。
「うん? あぁ終わったか」
俊哉はうーんと背筋を大きく伸ばした。
「全く、こんなに素晴らしい映画の上映中に爆睡するなんて信じられないよ」
卓郎が呆れたように言った。
「それでどうだった? 真吾」
「うん。期待以上に面白い映画だったよ、姉ちゃん」
「そう、それは良かった」
真吾も映画の内容にとても満足している様子だった。
映画館を出ると、俊哉が皆に聞いた。
「なあ、今度のストロンゲストファイターズの出場順についてなんだけど、どうする? 由佳子は大将にしようって昨日俺と勇気の間で話し合ったんだけどな。勇気」
「うん。由佳子さんは女性だからなるべく闘わないようにさせようって話になったんだ。それに由佳子さんは喧嘩慣れもしていないだろうし」
「そう。なら私は大将で構わないわ。ありがとう私のことを色々考えてくれて」
すると、勇気と俊哉の顔に朱が混じった。
「べ、別に気に住んなよ。大したことじゃねえよ」
「そ、そうですよ。女性のことを大事に扱うのは紳士として当然のことですよ」
二人は照れくさそうに言った。
「それはそうと俺とお前、どっちが副将をするかって話になったんだがどうする?」
俊哉が卓郎に言った。
「俺は別にどこでもいいぞ。特にこだわりとかはないからな。先鋒でも、副将でも団体戦として勝利出来ればそれでいい」
すると、それを聞いていた真吾が話に入ってきた。
「俺も、その大会で試合してみたいです。自分の力を試してみたいんです」
「真吾」
その様子を見つめる由佳子。
「僕は由佳子さん以外誰がどの順番でも構わない。僕も卓郎君と一緒で団体戦で勝てさえすればいい」
勇気が言った。
「団体戦って試合ごとに順番を変えてもいいんだろう? じゃあ最初の試合だけ決めておいて、後はその都度様子を見ながら順番を調整していけばいいんじゃねえ?」
俊哉の提案に皆納得した。
こうして、初戦は先鋒真吾、次鋒勇気、中堅卓郎、副将俊哉、大将由佳子に決まった。
「それはそうと、俺腹減っちまったよ。クレープ食いてえなあ。クレープ。いやアイスでもいいや」
俊哉が甘い物好きという意外な一面が分かった。
「そうね。じゃあ、クレープでも食べに行きましょう」
由佳子は言うと、「私いい店知っているの」と言って皆を案内した。
オシャレな店が軒を連ねる大通りを通り過ぎた、細い道のある一角にクレープ屋さんは店を構えていた。
「うわあ! すげえ行列!」
俊哉は目を少年のように輝かせて言った。
「でしょ! あの店、穴場なんだよね」
「へえっ」
「流石由佳子さんだ、皆があまり知らない場所まで熟知している。何て心の細やかな人なんだ」
「ちょっと、勇気君やめてよ。恥ずかしいじゃない!」
由佳子が照れて言った。
しかしその時、行列の最前列で何か不穏な動きがあった。目を凝らして見てみると、どうやら行列に割り込んでいる数人の輩がいるようだった。
「おらおら、てめえらそこをどけよ! 邪魔だ邪魔だ!」
行列に並んでいる人達を手で振り払うようにして行列を散らそうとしていた。
「何よあれ! 感じ悪い!」
由佳子は怒って言った。
「最低ですね。あいつら」
勇気はその輩の行動を見て、彼らの元に進み出ようとした。
「おい、ちょっとやめておけよ。大会前だっていうのにいざこざはまずいぞ」
勇気をいさめるように俊哉が右手で勇気を制した。
「しかし……」
すると、その輩の一人が言った。
「俺達は魔堕天だー! 痛い目を見たくなかったらさっさとこの場から、消えやがれ!」
その言葉を聞いて、行列に並んでいた人達は蜘蛛の子を散らすようにその場から去って行った。
「魔堕天? 魔堕天って猫柳師範が言っていたこの辺りで悪さをするっていう、今度私達が出場するストロンゲストファイターズにも出場するって言ってた魔堕天?」
「どうやらそのようだな」
俊哉の目が鋭くなった。




