第十六話。一週間後の地下格闘技大会に向けて (執筆ラビリンスコーヒーLv1)
「一週間後か」
神竜寺俊哉が呟いた。
「ああ、そうじゃ。そしてその地下格闘技の大会は団体戦じゃ5人で出場しなければならないんじゃ」
「5人かぁ。卓郎と師範が入ればちょうど、5人なんだけどなあ」
由佳子は少し不満を含ませた声で言った。
「今、言った通り、わしはもう年じゃしの。若い力に任せようと思っておる。それにわしがいたら、若い者が育たんしのう。お主達の将来を思ってのこともあるのじゃ。それにわし、見たい生放送のテレビ番組もあるしのう」
最後にボソッと猫柳師範が言ったが、小さな声だったので誰も聞こえなかった。
「面白そうですね。魔堕天というグループが存在するのですか。実に更生のしがいがありそうなグールプだ」
勇気が口の端を持ち上げて笑った。
「と、言うわけじゃ。聞いておったな。卓郎。お主もこの3人と一緒に地下格闘技大会に出場するのじゃ」
「はい、分かりました。師範!」
「けっ、お前も俺達と一緒に出るのかよ。大丈夫かあ? お前。もうお前俺には勝てないんじゃないのか?」
神竜寺俊哉が馬鹿にするように言った。
「どういうことかな?」
聞き捨てならない、と言った感じで卓郎が俊哉に聞いた。
「だってよ。俺は気のコツを学んだんだぜ。そこにいる本元勇気もそうだ。つーことはだ。俺達の方がすでにお前より、強くなったってことだろ?」
「ほっほっほ」
俊哉と卓郎のやり取りを、猫柳師範は穏やかな表情を浮かべながら見ていた。
「ふっふっふ。あっはっは」
突如として足立卓郎は笑い声を上げた。手をお腹に当てながら必死で笑いをこらえようとしている。
「何だ、何がおかしい」
俊哉が言うと、卓郎は「お前って本当に馬鹿だよな」と言った。
「何だと? それは聞き捨てならないな。返答次第では、お前ともう一度対戦することになるぜ」
「ふー、じゃあ教えてやるよ。まあ、率直に言うと、俺も気を使える」
「はあ? お前も?」
俊哉が片方の眉毛を釣り上げて、驚いた声で言った。
「ああ、そうだ」
「た、卓郎も気が使えるんだ。使えたんだ」
由佳子は知らなかった、と呆然としている。
勇気は、もう一人ライバルが出現したことにより顔を一瞬歪めた。
すると、皆の様子を窺っていた猫柳師範が口を開いた。
「うむ。その通りじゃ。卓郎は気が使える。そしてその師範であるわしも無論気が使える」
「ど、どういうことですか? 私二人が気を使えるなんて今まで知りませんでしたよ。ここはただの空手道場のはずですよね?」
由佳子は二人を問い詰めるように言った。
「ほっほ、今まで黙っていてすまんのう。実はこの道場は表向きは空手道場じゃが、その裏は気の道場でもあるのじゃ、この2つはコインのように表裏一体なんじゃ」
「そ、そんなあ。何で言って下さらなかったんですか? 師範」
「すまんのう。気の道場なんて言ったら、胡散臭く感じられて人が集まらなくなる恐れもあったからのう」
「でも、でも……」
「じゃが、まあいいではないか。どうやら由佳子? お主も気のコツを掴んだようじゃからのう。お主の体から気のオーラが溢れんばかりに流れ出ておる」
「は、はい。今朝夢で空手をマスターする夢と、気を使える夢を見たんです。そしたら気が使えるようになっていました」
「ほっほっほ、この道場での空手と気の稽古が身を結び、一気に気の才能が開花したようじゃのう。それにしてもそこの、由佳子が連れてきた二人は一体何者なのじゃ。たった一度の稽古で気を開花させることが出来るとはのう。この二人はわしの若い頃より、素質があるかもしれんのう」
「あったりめえだ!」
「当然です!」
俊哉と勇気はハモるように言った。
「ふん、二人ともあまり調子に乗るなよ!」
卓郎がどこか不愉快そうな口調で二人に釘を刺した。
「3人ともそんなことより、地下格闘技大会はたったの1週間後よ! いくら皆気が使えるからって言っても油断は禁物だと思うわ」
「ああ、そうだな」
卓郎が相槌を打つ。
「それに、猫柳師範は出場しないんだから、団体戦のメンバーが一人足りないわ。メンバーも一人探さないと」
「ああ」
俊哉が真剣な表情で頷いた。
「では、これからすることは決まりですね。1週間後の地下格闘技大会に向けて、メンバーを一人探す。そして稽古をする。だけど団体戦なんだから、個人で稽古するよりも、皆で一緒に稽古した方がいいかもしれない」
勇気が言った。
「ちっ、しゃーねえな」
あまり乗り気ではないようだか、しぶしぶと言った感じで俊哉が頷いた。




