第十話。由佳子、校舎裏の壁から二人の様子を窺う (執筆ラビリンスコーヒーLv1)
放課後、由佳子が校舎裏に行くと、すでに本元勇気と神竜寺俊哉が相対していて睨み合っていた。
「転校早々、なめた態度かましてくれんじゃねえか」
俊哉が指の骨をぽきぽきと鳴らしながら、すごんで言った。
「僕は正しいと思ったことを口にしたまでです」
いたって冷静な口調で勇気は言った。だが、それは逆に俊哉の神経を逆撫でする結果となった。
「今回は注意だけで済ませようと思ったが、どうやら痛い目をみないと分からねえみたいだな」
俊哉が肩を揺すりながら一歩前に踏み出した。
「僕も、穏便に解決しようと思っていましたが、この様子を見ると、そうもいかないみたいですね。どうやらあなたも弱い心の持ち主のようだ。仕方がありません。あなたも極悪高校の不良たちと同じく、更生させるしかないようですね」
「上等だ、コラ!」
勇気と俊哉は相手との間合いを徐々に詰め、臨戦態勢に入った。
「うわあ、あの空間、やばい空気が流れているよ」
野次馬の一人が声を震わせながら言った。
由佳子はこのままではまずいわ、と思った。どうしようかしら、私があの二人を止めに入ろうかしら。私は空手をマスターしているし、私だったらあの二人を仲裁、というか力ずくで止めることが出来るわ。
由佳子はそう思ったが、すぐに別の考えが頭に浮かんだ。
「そうだわ。今日体育のバスケのシュートで使った外気功を使えばいいんだわ。我ながら名案だわ」
由佳子はポンと自分の左手の平を握った右手で叩くと、太極拳のようなポーズをとった。
と、同時に勇気と俊哉が動いた。
互いに利き足を力一杯踏み込むと、相手へ向かって拳を繰り出したのだ。
「今だわ!」
由佳子は今日の体育の授業で使った外気功を勇気と俊哉へ向かって解き放った。
!!??
すると、勇気と俊哉、二人の動きがぴたりと止まった。
「な、何だ? か、体がう、動かねぇ。お、お前何しやがった」
俊哉が勇気に向かって怒鳴り声を上げる。
「くっ、ぼ、僕も体が動かない。一体何が起こっているっていうんだ?」
勇気の方も動揺の色を隠せずに言った。
それを見ていた由佳子は、ほっと安堵のため息を吐き出した。
「はぁー、良かった」
由佳子は安心したが、すぐに再び外気功の構えをとり、二人に更に外気功を発した。
二人はまるで操られたマリオネットのような動きをしながら互いに近づいて行き、そして抱き合った。
「は、離れろよ。気持ちわりぃ」
「ぼ、君の方こそ、離れてくれよ。僕は男色趣味なんかないんだ」
二人は離れようと、もがくが、もがけばもがくほど、互いに絡み合うかのようだった。
「良かった、良かった。これで仲直りね」
一件落着と言わんばかりに由佳子は、にこっと笑った。




