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<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ルイーゼ=バラライカ嬢の婚約

ルイーゼ=バラライカ嬢の婚約破棄

作者: 暁(藍石)

R15は保険です。

 ご機嫌よう、異世界の皆さま。私はルイーゼ=バラライカ。バラライカ侯爵家の長女でございます。只今、皆さまの世界で人気の絶賛婚約破棄中でございます。


 「……というわけで私、アルフレッド=シギュン第一王朝後継者はルイーゼ=バラライカ侯爵令嬢との婚約破棄する。後継はリブリール公爵家三女カレン=リブリール嬢とする。」


 ここは王宮、百合の間、あらゆる契約を処女神に誓う聖なる場所。当然、見届人もあらゆる名士の方々ばかりで、簡潔に申しますと針のむしろに座らされた晒し者ですわね。

 

 「キーワード、婚約破棄を確認イタシマシタ。称号、次代勇者ノ父ヲ剥奪。災害ガ王宮ヲ襲イマス。カウント、300秒……」


 「えっ!?」


 皆様が私を振り向きます。ですが、分からないのは私とて同じこと。当惑を隠せません。

 

 「申シ遅れマシタ、私ハ王室守護精霊(ガーディアン)ヨハン。迎撃シマスカ?」


 私は反射的に頷きました。

 

 「アクション、心カラノ土下座ノ後、正拳ヲ甘ズルデスコア50000を獲得シテクダサイ。」


 「あのっ、正拳を甘んずるはどのような技(?)なのですか?」


 私はヨハンに問いかけました。

 

 「相手ノ拳ヲ避ケルコトナク顔面デ受ケ止メ、前歯数本ヲ代償トシテ相手ノ怒リヲ静メル技デス。」


 視線は一気に同情に変わりましたが、物凄い音が近づいて来ます。震えるな私の膝!


 「カウント、60秒……」


 えっと、謝るのは多分、この人にで良いよね……

 

 「アルフレッド王子、今までごめんなさい!!」


 「ウチの孫になにしてくれてんじゃ、ボケェ!!!」


 王子が吹っ飛びました。白いものが欠片となって飛び散ります。絶対、数本では済んでない。


 「災害級人物ニシテ、当代勇者、イリアス=バラライカ前侯爵来訪。ルイーゼ嬢スコア450。コマンド、火ニ油ヲ注グ発動ニヨリ効果値-9000。アルフレッド王子スコア1000。同ジク、コマンドニヨリ効果値1。リトライシマスカ?」


 出来るわけがありませんわ!

 現在進行形でボコボコにされる王子と青くなっている見届け人たちと私に、さらにヨハンは言いました。


 「勇者ノ八ツ当タリ発動マデアト300秒、退避ヲ勧告イタシマス。」


 体の良い言い訳が出来たため、見届け人たちは次々と百合の間を辞去していきます。


 「カレン嬢ハ残ッテクダサイ。貴女ハ当事者ランクA、マタ、暫定王妃候補者デス。」


 カレン様の足が止まりくたくたと崩れ落ちた頃に無情なアナウンスが告げられます。


 「対象0。ヨッテ、勇者ノ八ツ当タリ、回避。」


 残ったのは、アルフレッド王子とカレン様と私とおじいちゃん。

 

 「おじいちゃ~ん、どうしてそんなに怒ってるの~?」


 「決まっとろうがい、この糞ジャリがお前を泣かすようなことやり腐ったからじゃい。」


 おじいちゃん今、王子のこと糞ジャリって言った。いつものおじいちゃんじゃない。


 「大体のう、王家が儂を見つけてからに、無理矢理叙勲、無理矢理婚約。果てはこのジャリ、リブリール嬢を娶ってからに、お前も側室に召し出す魂胆じゃい。そんなに勇者の血が好きなら、一の姫を差し出さんかい。直系の血筋きっちり残したるわ。」


 おじいちゃん、それって世間で何て言われてるか知ってる~?(ヤーンーデーレー!!)

 

 「やめてよ、おじいちゃん。私、婚約なんてどうでも良い、私のために争わないで!!」


涙が落ちる。今はもう、悲しいだけ。

 

 「キーワード、私ノ為ニ争ワナイデ確認。涙3ml、トータルスコア60000。ルイーゼ嬢、称号王宮ヲ救イシモノ獲得。マタ、コノ事件ニヨリアルフレッド王子並ビニ、ルイーゼ=バラライカ嬢ノ婚約が正当ニ破棄サレマシタ。」


…………


 それから私は猫の子のように首筋を取られて竜に乗せられました。


 「おじいちゃん私、びっくりしちゃった。王室守護精霊(ガーディアン)んて本当にいるんだね。ちょっと、空気読めないけど。」


 おじいちゃんは悪戯っ子のように少し笑ってこう言いました。


 「そんなもん、あそこにはおらんわい。」


 「えっ?」


 「ヨハンナを覚えておるかの?行儀見習いのヨハンナ。お前が七つの年にお前を庇って死んだヨハンナじゃよ。」


 そう、私は泣きました。馬車から私を庇って死んだ、黒髪のヨハンナ。いつも暖かくって静かに笑っていたヨハンナ。でも私はずっと彼女の暖かさを感じてましたわ。


 「あやつは出来損ないでの、そなたの母が女として創ったに男に生まれ、そなたに恋慕しよった。そなたの婚約が決まった時、ヨハンナは死を願い、聖水晶にデータを封じられた。そなたの首の首飾りがそれじゃ。呼びかけみよ、答えるわい。」


 「ヨハンナ?聞こえているなら答えて?いいえ、貴方は本当に生きているの?」


 「ええ我が身は貴女の胸元に、ご主人様(マイ・ロード)。私は守護型有機ゴーレム、ヨハネ。以後ヨハネとお呼びください。」


 ヨハンナ、いえヨハネは前よりずっと優しいテノールでそう答えてくれました。


…………


 それから私は魔法学院でゴーレム学を専攻して中の上の成績で卒業。二十歳の年に通りすがりの冒険者と熱い恋に落ちて結婚。一年後に勇者、ルイ=ヨハネス=バラライカを生んだのはまた別のお話。

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