前語り
私の友人が行方をくらませたのは、今からおよそ七年ほど前であろうか。立花京介という名前のやつで、私が彼と知り合ったのは中学生の時である。
スポーツ万能、眉目秀麗、頭脳明晰。彼はいわゆる超人と呼ばれる類の人間であった。しかしそんな彼にも、何かしらの悩みがあったということだ。
消息を絶ってしまったのだから、きっと生半可な悩みではなかったのだろう。
それにしても、何故私が七年も経った今頃、彼のことを思い出したのかというと、それは私宛に送られてきた一通の手紙が原因である。
差出人を見て、私は思わずギョッとした。
と言うのも、何を考えてのことなのか知らないが、遠い昔の記憶となっていた彼から手紙が送られてきたのだ。
けれど、彼の手紙はボロ雑巾のように小汚く、昨日今日で書いたものではないということがすぐにわかった。
どんな手段を使ったのかは知らない。だが、七年前の、あの行方をくらませる時点から七年後の現在へと向けて手紙を書くのは、不可能ではないはずだ。
私の思いつく限りでは、誰かに頼むという方法が一番容易く、確実であるように思える。
何はともあれ、奇妙な形で私と彼は再開を果たした。
手紙の内容について論じたい気持ちで山々であるが、しかし、実に良くできた文面であるため、私の口を通してしまっては興醒めであろう。
さて、手紙を公開する前に、軽く彼の人物紹介をしておこうか。まあ、紹介と言っても数行ほどで済んでしまうので、あまり身構えずに読んでいただきたい。
立花京介は先にも述べたが超人である。顔も頭も性格も運動神経も良いので、彼は男性からも女性からも絶大な人気を誇っていた。けれど、私だけは知っていた。立花京介という一人の人間は、既にこの世には居ないということを。彼は多種多様な仮面をその場に応じて使い分け、そうして自分の心を偽り続けていた。しかし私はすぐに見抜いた。彼は本心を一度だってみんなに見せたことがない、と。それからというもの彼は、私にだけは本音をぶちまけるようになった。中学、高校と共に過ごし、もう知っての通り彼は消えた。
ここまで読んだ読者は、もしかすればピンときたかもしれない。
私は彼の本性を見抜き、暴いたと思っていたのだけれど、その実は、私も他の人間と同じように、彼の精巧な仮面に騙されていたのだ。
私がクラスメイトに馴染めず一人で孤立しているのを見かねて、彼は優しい嘘で私を騙してくれたのである。
これより先は語らない。
自らの目で、確かめて欲しい。




