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ついに完成。ついでに…

 次の日目覚めるとすでに太陽は高くかなり寝坊したことが分かる。

 村長の姿はすでになく、弥々子さんも朝食の後かたずけはもちろん洗濯も済ましていた。

 俺が起きると朝食兼昼食だと大きなおにぎりを渡された。

 俺は顔を洗ってからそのおにぎりを食べるとさっそく山に行く準備をした。


 着替えて青龍を腰に差し、いつものように鍬を取りに裏に行くと鍬は初めてアイアンクローと遭遇した時に水路の端に放り出して来た事に気づいて(初めは鍬探しからしないとな)と思いながら弥々子さんに声を掛けて山に登った。

 水路の端まで行くと意外と簡単に鍬は見つかったので水路づくりを再開した。

 今日の目標は中間地点である水道橋まで行くことである。

 結構柔らかい土を鍬で掘って溝を作っていき最後に魔法で壁と底を石に変えて水路にするだけなのでそんなに時間はかからない。

 これも多分チート能力の魔力(弥々子さん曰く宮廷魔術師以上の魔力量)のおかげだろうけど。

 それから、最初のうちは結構難儀していた木の根だが、そのうち邪魔な根は青龍で切断したら良い事に気づいて建設作業は一気に加速した。

 そして、日が暮れる前に水道橋の所まで建設する事ができた。


 それから2日後ついに水路は村の門まで到達。

 山から流れる少量の湧水を利用した田畑に水を引く用水路に連結する事に成功した。

 その日の夜に村長にそのことを報告すると明日弥々子さんと一緒に水が到着するのを見に来ると言う。

 なんか授業参観のようで少しドキドキワクワクしながらその日は床に就いた。


 そして、ついに水路に水を引く日の朝。

 朝食を済ますと村の門の所まで3人でやって来た。ここで村長と弥々子さんは水が到着するのを待つらしい。

 そして俺は1人足早に山を登り始めた。

 ほどなくして、水路の始点である川からの取水口に到着すると、川と水路の入り口を仕切っていた石板を魔法で砂に変えた。

 すると川から砂を押し流しながら水が水路へと流れ込みだした。

 その流れは初めはゆっくりだったがだんだんと早くなってきて早足位の速度になる。

 そのまま水の先頭と一緒に水道橋の所までやって来て、水が無事に水道橋を渡ると、今度は早足で山を下りた。


 山を下りて村の門の所まで来るといつの間にか村長と弥々子さん以外にもかなりの数の村人が集まって来ていた。

 村長に話を聞くと、俺がついに村に水を引くと聞いて水が来るのを見届けようと待っているそうだ。

 なんだか大事になったなと少し緊張しながら待っていると遂に水が村に到着した。

 村人からは「おお~」とか「本当に来た」など様々な声を発しながらそれでも嬉しそうに水が到着するのを見ていた。

 俺もホッとしながら到着した水を眺める。


 村に到着した水は初めはゆっくりだったがだんだんとその量を増していき、最後には水路いっぱいにかなりの速さで流れるようになった。

 この分だとかなりの水量になったようでこの村の田畑に十分な水を供給出来そうである。

 水路の水量が安定したところで村長が村人たちに話し始めた。


「御覧のように、颯太さんが頑張ってくれたおかげで今年は無理だが来春からは米が増産できそうだ。

 今まで麦を作っていた畑は一部を除いてほとんどを田んぼにしようと思う。

 そうすれば来年の収穫量は倍以上になるはずだ。今年の冬は大変だろうが畑を田んぼに改造する作業を行うがみんなよろしく頼む。」


 村長がそう言い終わると村人たちは口々に「収穫量が上がれば腹いっぱい飯が食える」だの「あれが買えるこれが買えると」皆一概に嬉しそうな悲鳴を上げた。

 そんな村人の姿を見て、俺は水路作成の達成感に満ちて笑顔が止まらないのであった。

 そしてその日の夜は祝勝会ではないが、村長と村人数人とでささやかな酒会が催されて、俺も久々の酒と弥々子さんの料理に労をねぎらわれたのだった。



 次の日からの俺の目標は水車小屋を作る事であった。

 動力は昨日作った水路の最終部分。裏山へ行く門のすぐ脇に建設する予定である。

 その事を村長さんに話す。水車については村長さんに通じなかったが、とりあえず水路みたいに便利なものだという事はわかってくれたらしく協力を得る事が出来た。

 そして前回同様村長さんの家にある道具は好きに使わせてもらえて、材料となる木も木材加工場から余材を自由に使って良いをと言質を貰った。

 さっそく材料を集めに木材加工場に行ってみた。そこには細い木が大量に積み上げられていた。これが余材らしい。

 この村が出荷するのは直径30㎝以上の巨木でそれ以外の間引きされた木や木の先端部分や枝の部分は村人が薪にするため等に自由に使って良いらしい。

 実際に左衛門さんが青龍の鞘を作ってくれた時もこれ位の木を使っていた。

 余材置場から使えそうな材木を門の側まで運ぶ。それ程距離がないために直ぐにかなりの量を確保できた。


 次に、持ってきた材木を村長さんの家から借りてきた鉈で3枚に裂いていく。

すると幅20㎝位の板と半円形の切れ端がたくさんできた。

 細い木なので板は丸太1本に付き1枚しかできないがこの板を3枚組み合わせて凹型を作る。

 木と木の接着は釘ではなく木の棒を使った。あらかじめノミで木に穴を空けておいて、そこに木の棒を差し込むことで2枚の木をくっ付けたのである。

 そのような導水部分をいくつか作成したら今度は橋桁部分を作成していく。

 等間隔で丸太を地面に2本ずつ立てていく。

 もちろん丸太を立てる時は魔法で立てる場所の土を柔らかくしてから丸太を立てて、立て終わると石のように固くすることによって土台となる部分の強度を保った。

 そして2本の木に横木をはめれば橋桁の完成である。

 完成した橋げたに凹型の導水部分を乗せると水道橋が完成。水を通せば2m程の落差の人工の滝が出来るはずである。


 次に、水車の土台部分を作成する。

 先ほど同様に橋桁を4つ作成してそこに水車の軸となる直径20㎝の丸太を置く。

 滝の落差を考えると軸の高さは1m程、ちょうど腰位になった。

 次は水車の回転部分だ。

 2m程の長さに切り揃えた4本の丸太をちょうど等分に米型になるように組み合わせる。中心部分を少し削ればきれいに十字はできた。

 しかし米字にしようとさらに削ると強度が保てず中心部分が折れてしまう。

 仕方なしに十字の丸太を2つ組み合わせて中心に角材を打ち込むことで米字とした。


 次は2本の米字の間に2枚の板でL字型を作った物を挟んでいく。

 その後、米字の各頂点を細い丸太でつなげば水車の回転部分が完成した。

 次は軸部との接続だ。

まず軸部の先端を四角く加工して回転部分の中心、米字部分の角材と入れ替える。

 反対部分も軸にした丸太と同じような丸太を短くし、先端部分を四角く加工すれば回転部分の中心は貫通していないが軸が出来た。

 回転部分に軸がないのが少し強度的に不安に思ったので、その後米字の中心付近の股の部分に計8本の丸太を固定して強度を増した。


 その後試しに土台にのせて回してみた。

 軸が多少ずれているためか、やや左右にぶれるが問題なく回転してくれたので一安心である。これで水車のめどが立った。



 昼食後からは小屋部分の作成だ。

 まず、土台となる部分の土を固くする。そして高さ2m程の土壁を四方に作成した。もちろん出入り口となる部分は開けてである。

 材料は水車直下から昨日作成した水路までの土を移動させた。

 水車直下にはかなりの大きさの穴が出来て直ぐに水路から流れ込んだ水で池となったが問題ないだろう。

 その後板を作った時の余材の半円形の板を斜めになるように壁を調整しながら並べていき屋根を完成させた。

 北側から水路が流れている関係で小屋の西側が水車で入り口は南側となったが、そのおかげで水車小屋は昼間なら太陽光が入り口から入ってきて結構明るい感じだった。

 現在はまだ小屋の中は水車の軸が通っているだけで何もなく寂しいが明日には脱穀用の杵と石製の臼とそれら動かす機構でいっぱいになるはずである。

 そんなことを考えながら小屋を眺めていると、「たった1日でこんな小屋を作ったのか」と驚く村長が声を掛けて来たので「明日の今頃はもっと驚きますよ」等と話しながら夕食の待つ村長さんの家に帰った。



 次の日、朝食をとるとさっそく水車小屋の作業部分を作るべく活動を開始した。と言っても昨日で大体の部分が完成しているのでそうやることはない。

 まず始めに裏山に入って直ぐの所にある岩から円柱形の石を切り出す。もちろん魔法でやったのですぐできた。

 その後、水車小屋まで転がしていって、水車小屋の前で中身を砂に変えてくり抜き、臼の完成である。

 杵は先端部分を鋸で荒削りした後、かんなを少し掛けて丸くしたら完成である。

 まず、水車小屋を貫通している水車の軸部分の中心の真下のやや手前に石臼を設置。その石臼の上に杵を置いて軸に立て掛ける。

 その後、杵を支える支柱を何本か設置して杵が上下しても倒れないようにした。

 後は軸に1本、棒を貫通させて、その棒が回転する事によって杵が持ち上がるように、杵の側にも別の棒を貫通させる。

 こうすると軸が回転したら軸の棒が杵の棒を持ち上げて、その後角度が付いたら自然と棒同士が外れて、杵が石臼の上に落ちる、という構造が出来上がった。


 機構部分が完成したので水車への導水部分に水路から水を引いて試運転開始。

 水路から導水部分へと水を引き込むと、水は思った通りに水車の上まで流れていく。そして水車の上へと勢いよく落下した。

 始めのうちは水車の回転部分で勢いよく水しぶきをあげるだけだったが、しばらくしてギギィっという音と共に水車が回り出した。

 そしてしばらくすると安定した回転と共に水車小屋の中からゴンッゴンッという音が聞こえてきた。

 水車小屋の中では杵が力強く上下していた。


 空回しするのを防止する為に、杵を半回転させて軸の棒と杵の棒が当たらないようにしてから水車小屋の周りに散らばっている丸太やら余材をかたづけて、道具をもって昼食のために村長さんの家に帰った。

 昼食時、水車小屋が完成した旨を村長さんに報告すると、目をランランを輝かせた村長さんが昼食もそっちのけで直ぐに見たいと、家を飛び出そうとしたが、それはさすがに弥々子さんに阻止された。

 そして俺は何だか急かされた様に昼食をとって初稼働の為に水車小屋に向かった。

 今回の材料は小麦が10㎏ほど。臼が大きいので小麦10㎏程度なら小麦粉に出来るはずである。

 因みに30㎏ほど入れると小麦粉にはならず脱穀されるだけである。

 これは米でも同じだが、多く入れると杵の衝撃を小麦(米)が吸収するから粒が潰れないのである。少ないと杵と臼の間に挟まれた粒が打ち砕かれるのだが。


 そんなことを村長さんたちに話しながら、水車小屋へと向かう。

 初めは村長さんと二人だけのつもりだったのだが、当然のように弥々子さんが付いてきて、その後会う人合う人が村長さんの表情(新しいおもちゃを買ってもらえる子供のような)と話を聞いて付いてきたのだ。

 水車小屋に着いた時にはギャラリーは15人程になっていた。

 そんな人々を前にさっそく臼の中に小麦を投入して、杵の向きを変える。

 すると、当然、杵は軸の棒により持ち上げられて、そして不意に小麦の入った臼にドンッという音と共に落下した。

 周囲からは「おー」と言う声がする。

 その後も何度も上下する杵を見ているうちにギャラリーも「なんで誰も動かさないのに杵が上下するのだ。」とか、「小屋の隣でくるくる回っているのはなんだ。」等の質問が相次いだ。


 一通り水車について説明をしているとついに小麦は綺麗な粉になった。小麦粉の完成である。

 小麦粉を少し手に取って村長と集まった人々に見せる。

 この時点でギャラリーは30人(村の半数以上)になっていたが皆一様に「すげー」とか、「早い、もうできたのか」とか「こんなのができたらこれから楽が出来る」とうれしい悲鳴があちこちから聞こえてきた。そんな中、村長は集まった人々に


「この小屋は、颯太さんが村人みんなの為に作ってくれたものだ。

 よってこの小屋は空いていれば誰でも自由に使ってもらっていい事とする。

 それから、この前は村に豊作を約束する水路を。また今回は、こんな便利な小屋を作ってくれた颯太さんを正式に村人として迎えたいと思うがどうだろう。」

 と唐突に話し始めた。

 もちろん、村人たちは皆反対することなく俺を迎えてくれて、俺はこの日から正式にジジカ村の一員となった。

 そして、このジジカ村の所属するサウザンエメラシー皇国の国民にも。

 その後、村人たちにこの水車小屋の使い方(製粉と脱穀の方法など)を説明した後一部の村人(村長や左衛門さん等)に水車の原理を追及されたのでそれの説明をして午後はあっという間に終わった。


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