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決戦、初モンスター戦

 村長さんが街に行った次の日は、朝から青龍を素振りしたり、余材置場の丸太を試し切りしたりしてみた。

 それで分かったのだが、青龍はもの凄い切れ味だった。

 直径20㎝位の丸太なら難なく真っ二つにしてしまった。

 試し切りをした後も、素振りやら、かたやらをしてみた。

 青龍を貰った日も思ったが、いやに手になじんでしっくりくる。

 何年も前から使っていたみたいだ。

 なんだかとても良い物を貰ったみたいで少し申し訳ない。

 そんなこんなで、時間が過ぎて昼になり、昼食をとっていると、街から村長さんが帰って来た。


 村長さんは渋い顔をして、帰って来てそうそう村人を集めると、渋い顔の原因を村人たちに話し始めた。

 村長さんが言うには、今この国は北にある帝国と小競り合いをしていて、 それがかなり大きくなって本格的な戦争になりそうなんだとか。そして、侍達はその応援というか王国からの依頼で紛争地域の偵察などの仕事を受ける者が多くなっているらしい。その方が報酬が良いからだ。

 なので、これまでの一般的な仕事を受ける侍は少数になり人手不足に陥っているそうだ。

 ましてCランクの侍でも失敗したような依頼を受ける者は皆無らしい。

 という訳で、アイアンクローについては自分たちで何とかするか我慢するしかないとの事。


 そんな村長の話を聞いて村人たちは大騒ぎとなった。

 「我慢するって山に入らないと冬を越せない。」とか「自分たちで何とかする。ってまた村人総出で山狩りしてもアイアンクローに勝てるのか」などその日は夕方まで村長さんの家で激論が繰り広げられたが、結局何もしないと冬が厳しいという事でもう一度村人総出で退治に行こうという事になった。

 次の日は準備に充てて、明後日にアイアンクロー退治を行うこととなった。もちろん俺も参加する。


 次の日は午前中はアイアンクロー退治に向けて青龍で素振りをしてみたり型を一通りやってみたりと感覚を取り戻して青龍に慣れるようとしてみた。

 一昨日、ドクトルさんに譲って貰った後にも思ったが、いやにしっくりとくる。

 もともと青龍で練習していたみたいだ。よほど相性が良いらしい。

 午後からは村長さんの家で行われた作戦会議に参加した。

 そこで決まった作戦の内容は、簡単に言うと、まず全員でアイアンクローを捜索してアイアンクローに遭遇したら主力部隊のいる方に逃げる(おびき寄せる)。

 その後、アイアンクローが主力と遭遇したら、その他の者でアイアンクローを取り囲みアイアンクローが周囲に気を取られる状況を作り出す。

 その中で主力がアイアンクローを攻撃し倒す。という物だ。

 因みに主力はドクトルさんとリンさん(いずれも大火力らしい)と狩人の2人(弓使い)それに又五郎さん(兵役を経験者)と俺らしい。

 俺は見たことの無い剣の使い手で他国で騎士をしていた経験が買われたという。

 たしかに、此処では珍しい刀の使い手?だし、一応陸自の士官だったから他国の騎士にはなるが…チーム戦が大切でかつ初めての対モンスター戦(アイアンクローのような上級の獣をモンスターと呼ぶらしい)で主力扱いされるとは思わなかったが、現在の村の状況を考えると断ることは出来なかった。



 そしていよいよアイアンクロー討伐の日の朝を迎える。村人たちは俺たち主力を取り囲むように3~4人のグループで山に入って行った。

 そして、俺たちも山を登り始める。

 山を登る前、村でドクトルさんに会った時、ドクトルさんが大火力と言われた理由が分かった。

 ドクトルさんは自分の身長よりも大きい大剣を肩に担いで現れたのだ。

 そんな重そうな大剣を持って山を登ること等出来るのかと思ったが、人間でなくドワーフのドクトルさんには造作もないことらしい。

 因みにリンさんは攻撃魔法も使え、中でも赤魔法のファイヤーボールの威力が凄いらしい。

 そんなこんなで、俺たち6人の主力も山を登り始める。しばらく山のぼりを続けていると先発部隊が例の沢の所で輪になっていた。

 その中に俺たち主力部隊も合流すると、集まっていた原因が水道橋であると分かった。

 村人たちには一応話していたが、この水道橋自体はこの世界にない俺の世界の技術である。つまり、この世界にしてみればオーバーテクノロジーである。

 その場で村人たちに色々質問攻めにあいそうになったが、俺の居た国の技術と俺の黄色魔法で作成したと簡単に説明後、ドクトルさんのまずはアイアンクローの事が先という一言で進軍?が再開した。

 水道橋の上を渡ってまたしばらく登ると水路の端まで来た。4日前にアイアンクローに出会った場所だ。

 ここで作戦通りに主力と探索部隊に分かれてさらに山の奥を目指していく。俺たち主力は水路に沿って山を登り始めた。



 散開してからしばらくして、「アイアンクローだ!」と言う悲鳴にも似た大声が辺りに響いた。声がした方向は右斜め前方で俺たちはその方向に走り出した。

 走りの早さからか先頭は俺(やはりチートのせいか普通の人よりも速いらしい。)続いて狩人の2人、その次に又五郎さんで、大剣を担いだドクトルさんと軽装だが体力系ではないリンさんはやや遅れていた。

 走り出して直ぐ50m程行くとこちらに向けて大慌てで駆けて来るオジサン3人組の後ろからアイアンクローがグングンと差を縮めてくる。

 しかし、どうやらオジサンたちが俺にたどり着く方が早そうだと判断したので走るのをやめて抜刀する。

 抜刀したところで左右からアイアンクローに向けて弓矢が放たれた。俺が止まったのを見て左右に散開した狩人さん達だろう。

 放たれた矢は一直線にアイアンクローに向かっていき、見事命中した。

 命中はしたが、よほど固い毛なのか刺さることなく弾かれてしまった。

 しかし、アイアンクローに警戒を与えたらしく走る速度が遅くなった。

 その隙に追われていたオジサン3人組は俺の横をすり抜ける。

 代わって又五郎さんが俺の右隣に並んで槍を構えた。

 アイアンクローは速度を落としたものの相変わらずかなりの速度で走って来ていた。

 このままの速度でぶつかると、いくらチートなのか力が向上しているとはいえ弾き飛ばされるだろうから第一撃は躱す必要がありそうだ。

 ドクトルさんはまだ到着してないがあの人ならこの一撃を止める事が出来るだろう。動きが止まった所を後ろから追撃するしかなさそうだ。


 そう判断して又五郎さんを見ると同じ意見なのか「避けるぞ。避けてから後ろから切りかかれ」と真っ直ぐに前を見ながら言われた。

 「ええ。」と俺も頷きながら短く答えた。

 そしてアイアンクローが3m程に接近し横に飛ぼうと身構えた時、突然横を火の玉が通り過ぎて行ってアイアンクローの顔に命中した。

 きっとリンさんが放ったファイヤーボールだろう。

 突然の攻撃に驚いたのかアイアンクローは走るのをやめてその場に威嚇する様に両手を横に広げて2本足で立ちあがった。


 チャンスだ!


 そう思った俺は横に飛ぶ為に溜めていた力を前方に飛ぶことに使う。

 アイアンクローとの距離はわずかに3m弱、普段なら中段に構えた俺の間合いの外だが、力が向上した今の俺には射程内だった。

 2本足で立ちあがって大声で吠えるアイアンクローに一気に接近すると抜き胴を放ちながら横をすり抜ける。

 無防備に手を広げたアイアンクローの腹の部分に青龍が食い込む。

 狩人の矢は通さなかったが、磨き上げられた青龍の刃はジョリっといった束ねた針金を切ったような感触で、アイアンクローの毛を斬り、その腹を切り裂くことに成功した。

 アイアンクローの横をすり抜けて振り返った時、腹を押さえながら前のめりに倒れるアイアンクローの姿が見えた。

 そして追撃に移ろうとした時、アイアンクローの胸に又五郎さんの槍が突き刺さり、さらに、頭にドクトルさんの大剣が振り下ろされた。

 結局追撃する間もなくアイアンクローは地面に倒れて動かなくなった。

 一応青龍を構えたまま警戒しながらアイアンクローに近づいていくとドクトルさんがとどめに剣を頭に突き刺したので、青龍を持って来ていた布で拭ってから鞘に納めた。


「さすがは元騎士様だな。アイアンクローの雄叫びにも怯まず一撃を与えるとは。」


 アイアンクローの下に行くとドクトルさんが大剣を背負いながら話しかけてきた。


「ええ、さすがです。私は颯太さんが斬りかかるまで動けませんでした。」


 とこちらは又五郎さんだ。


「いえいえ、リンさんのおかげで出来た隙を利用できたからですよ。」


 実際、その通りである。

 両手を広げて2本足で立っているアイアンクローなど剣道の練習の時の相手のようなもので少し距離はあったが練習のように体がほとんど無意識のうちに動いたのだから。


「隙を見逃さずに一撃を加えるのが勝利のカギ。昔そんなことを聞いた覚えがありますわよ。」


 いつの間にか隣に来ていたリンさんがそう言ってきた。

 他にも初めに逃げて来たオジサン3人やその他の村人たちも集まって来た。

 そして彼らに囲まれた俺は村に帰りつくまで質問攻めにあったのだった…。


 因みに、アイアンクローは綺麗に解体されて明日にでも毛皮や爪などの部位や肉は街に売りに行くそうだ。

 村長の家に帰ると村長に色々とアイアンクロー討伐について聞かれた後、今後の俺の事についても話し合った。

 今まではドクトルさん等数人しか俺の事を認識していなかったが、今後は村人はもちろんの事隣町や街にも、また国にまで俺の事が知られる事になるだろう。

 そうすれば、俺が異世界から来た等話せる訳がないので出生を聞かれたら困るのである。

 だから、ある程度筋書きを作っておく事にしたのだ。といっても、山から下りて来る間の受け答えとドクトルさんの説明である程度固まってはいた。

 それは、俺は遠い国で騎士をしていたが訳あってこの国に流れ着いたという物だが、それ自体は嘘ではないのでその話をもう少し進めて、俺のいた国はもうなくなってしまって、国には帰れない。

 また、この国が気に入ったのでこの国の国民になることにした。という事にした。

 この国はけっこう流民には寛大で特に能力を持った者を国民にすることになんら抵抗がないそうだ。

 また、戸籍制度などなく、村長が証明すれば村民になる事が出来、税金は一人当たりではなく村の収入(収穫量)で決まるため特に人数にはこだわらないらしい。

 なので、村長の家に厄介になっている時点でもう俺は村民として認められたようなものであり。必然的にこの国の国民になっているらしい。

 まあ、それは別にかまわないのでそのまま受け入れるとして、こんなに簡単に移民を受け入れる国というのはどうかと思ったが、基本この大陸の国はほとんどが戦争状態でいつも流民や戦争難民が発生するそうだ。

 また、兵士が戦場で命を落とすために国民は多い方が良い。

 なので、国民になりたい者は国民にする方が得でそういうことが常識のなのだそうだ。

 そうして夜が更けていったところで1日の疲れがたまっていたこともありその日はぐっすりと眠りにつくことになった。


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