身体能力もチートですか?
4日目の朝、朝食をとった俺は家の裏にあった鍬を持ってさっそく登山を開始した。
そして直ぐに中間地点の沢に着く。
「よし」と軽く気合を入れた後、一辺が1m程の正方形の石柱を思い浮かべて、その石柱を反対側に通して橋にするイメージを乗せた魔力を足元の地面に送り込む。
ちなみに、材料は地中の広範囲に存在する石ころから頂くことにしていた。
で、魔力を送り込んだ直後から、足元から対岸に向かって石の柱が伸びていき、「ズン」という音と共に対岸に到着。石で出来た柱型の橋が架かった。
そして、出来上りを確認する為に、手を地面から放して立ち上がった瞬間、石柱は真ん中あたりから折れて沢に落下した…。
「…………。」
沢に落ちて砕け散った石片を見ながら、石柱が長すぎて強度的には確かに難しいわなと思う。
そして、今度はきちんとした橋を造ることにした。
まず、沢の下に下りて、沢の両側の端からアーチ状の石柱を頂点が沢の両側の壁と同じになるように造る。
材料はその辺にゴロゴロしている岩や石だ。
今度は、柱をアーチ状にしたので崩れることはなかった。確か、アーチ状にすると力が分散されて強度が増すはずだ。
その後、沢の上に上がって、周囲から砂鉄を集める。集めた砂鉄を鉄筋にして、今度こそ石の柱を対岸に渡した。
もちろん、柱の中央部はアーチの上辺にも乗っかっているのでさらに力は分散されるはずだ。
次に、対岸に渡った石柱をU字型にくり抜く。
と言っても中心部を空洞にするように左右底辺の壁の密度を高くするだけだ。
これにより、橋の強度はさらに上がり、水が乗っても大丈夫であろうU字型のアーチ状水道橋が完成した。
出来上がるのに実に1時間も掛かっていない。魔法とはなんと便利なんだろう。
元の世界でもこれだけの物を造るとなると、重機を使っても丸1日は掛かるだろう。コンクリートが乾くのを考えるともっとか。
そもそも、此処まで重機を入れるのも大変だが。
その後は、もう一度沢の下に下りてから水道橋付近の崖が崩れて水道橋が壊れないように、付近の壁を石の様に固く固めてから先に進んだ。
水路の始点の目印の竹が立ててある川辺にたどり着くと、まずそこに石板の壁を作成する。
これが小さな水門替わりで、水路が完成するまで水路に水が入ってこないようにする。
そして、その壁から鍬をいれてまず初めに水路の溝を作った岩まで進む。ただ土を掘って小さな溝を作っていくだけだが、途中に木の根が邪魔をしたりで、直ぐそこの岩に行くのに結構時間が掛かってしまう。
鍬で出来た小さな溝が完成すると、今度は魔法でその溝の両側と底を石のように固い物に変換する。
この際の材料は溝の両側と底の土なので、出来上がった水路は、鍬で作った溝よりも大きくなった。
まあ、予想通りではあるが。そうして作った水路が岩の溝とつながった時点で昼食にする。
今日のお昼は弥々子さんが作ってくれたおにぎりである。
大きなおにぎりが2つ竹の皮に包まれた物を持たせてくれたのである。それを腰にポシェットの様に布で巻きつけていたのであるが、それを例の平たい岩の上で食べる。
昼食後は、岩の水路の上に溜まっている砂を除けてから、岩の先へと水路を伸ばしていく。
そして、日が傾きだした頃、水路は沢の水道橋まで後半分程の所まで完成した。この分だと水路全体の完成には後三日程あれば良い計算になる。
日が落ちる前に家に帰った俺は、村長さんにそんなに早くできるのかと喜ばれながら夕食を取り、夕食後も俺が来てくれた事を感謝すると散々お礼を言われた。
まだ水路は完成していないのに…まぁ、獲らぬ狸のなんとやらにならないように頑張りますが…
次の日も弥々子さんが持たせてくれた特製おにぎりと鍬を片手に、おっちらえっちらと山を登って水路の端まで来て鍬を入れ始めるが、今までと少し山の雰囲気が違うことに気が付く。
なんだか、やけに静かなのにザワザワしていると言うか、そう、山全体が緊張感で包まれている様なそんな雰囲気だ。
昨日まではピィチクパーチク鳴いていた小鳥たちも今日は影を潜めている様だ。
そんな辺りを見渡していると突然右手の方でバキバキと大きな音がして木が倒れた。
倒れた方を見ると、なんと背の高さが3mはあろうかという大きな熊がこちらに向かって大きく両手を広げていた。
その熊の大きさはもちろんの事、そのクマの爪は熊手よろしく1mはあるんではないかと思われるぐらい伸びており、先端は鋭く尖って曲がっていて、そんな熊などあちらの世界では見たことがない。
そして、その熊は左目に刀傷らしい傷があり、そのせいで使い物にはなっていないと思われるが、その恨みが俺にでも向けられたのか大声で吠えるといきなり俺に向かって突進してきた。
慌てて鍬を投げ出して必死に山のふもとに向かって走り出す。もちろん全力疾走だ。火事場の馬鹿力なのか、今まで経験したことの無い位のスピードで木々の隙間を駆け抜ける。
ふと後ろを見ると、さっきのデカ熊も同じくらいのスピードで追いかけてくる。
「速っ」下りだからか、なかなか息切れはしそうにないのが救いだが、このままだと追いつかれそうだ。
そう考えていると中間地点の沢に出た。そして、目の前には昨日造った水道橋がある。俺はその水道橋を駆け抜けて沢をこえて村を目指す。
ふと後ろを見ると、デカ熊は沢の手前で立ち止まっていた。
助かった。そう思ったが、とりあえずこのままの速力で村まで戻る。ほどなくして村の門をくぐった俺は、門の扉を閉めるとその場に座り込んだ。
不思議な事に汗は凄くかいていたが、息切れはそれ程ではなくこの世界に来るまでは考えられない位体力がついているようだった。
もしかして、これもチート能力とも思ったが、そういえば鍬や竹を持った時にいやに軽いなと思った事から、単純に重力が地球よりも弱いだけかもしれない。
そんな事を門の前で座り込みながら考えていると、通りかかった鍬を持った左衛門さんが心配そうに話しかけてきてくれた。
汗だくで座り込んでいるから病気にでもなったのかと心配してくれたそうだ。
だが、デカ熊に襲われたと聞くと左衛門さんの方が病気にでもなったのではないかと思うくらい顔を青ざめて聞き返してきた。
「もしかして、その熊の左目に傷はなかったかい?」
「ええ、よくわかりましたね。たしかに、あの熊の左目には傷がありました。」
「やっぱりか、そいつは『アイアンクロー』だ。まだ収穫前なのに、今年は来るのが早いな。
こうしちゃいられない。直ぐに村長に知らせないと。にいちゃんも直ぐに来てくれ。」
そう言って村長さんの家に向かって歩き出す左衛門さん。左衛門さんの後について村長さんの家に向かうが左衛門さんは結構な早足だった。
村長さんの家に着くと、珍しく村長さんが家にいた。
どうやら役所に出す書類を書いているらしく、ちゃぶ台の上に書きかけの紙が結構な数散らばっていて、ペンを持った村長さんが左衛門さんから話を聞いていた。
そうペンだ。てっきりこの時代感から文字は筆で書くのかと思っていたが、村長さんは万年筆みたいな物を持っていた。
ちゃぶ台にはインク壺の様な物が置いてあることからこれを付けて書くのだろうが、この世界、かなり和洋折衷な感じた。
左衛門さんの話を聞き終えた村長さんは、俺にも説明を求めて来たのでありのままを話すと、
「そうか、まいったな。こんなに早く現れるとは。」
と、ペンを置きながら、本当に困ったという感じでつぶやいた。
「もう一度侍処に依頼したらどうですか。」
「確かに、明日ゼノンの街までいかなければならないから、一応依頼は出しておくか。
だが、3年前に一度Cランクの侍が討伐に失敗しているから、今回の依頼は高くつくぞ。」
「でも、村長。奴が村に現れれば高くつくでは済まないですよ。」
「確かにな。だれか依頼を受けてくれる侍がいればいいがな。まあ、明日依頼を出しておくよ。報告ありがとうだったな左衛門。」
「いえいえ、こちらも生活にかかわる事ですから。」
そう言って左衛門さんは帰って行った。
俺はというと、その後、書類を書き終えた村長さんに昼食を取りながら、先ほどの話の内容について色々と説明を受けた。
まず、『アイアンクロー』だが、これは熊の種類ではなくて固有名詞らしい。
熊の種類は『ビッククロー』と言って、この辺りでは比較的多くみられる種類で現れると村人数人で狩りに出て、肉は食用に、毛皮は臨時収入になるそうだが、アイアンクローは村人数人では歯が立たず、大きな木をもなぎ倒すその爪の強靭さから鉄の爪と名づけられたそうだ。
3年前に村の木こりが1名アイアンクローに重傷を負わせられた時。街の侍処に討伐を依頼したらしい。
侍処とは、主に荒事専門の何でも屋で、よくゲームに出て来る冒険者ギルドの様な所らしい。薬草採取や魔物の討伐報酬で生計を立てるといったあれだ。
ちなみに、その冒険者の事を侍と呼ぶらしい。
で、国に使えている軍人はと言えば騎士と言うのだそうだ。
その侍(ランクがCだったらしい。ランクCだと熟練の侍とみていいらしい。)が来てくれて討伐に向かったらしいが、結果は返り討ち。
侍は何とかアイアンクローの左目に斬りつける事に成功したが、大ケガをして村に帰って来たそうだ。
それ以来、毎年冬場になると村周辺に現れては村人を困らしていたらしいが、今回はまだ秋も早いうちからの出現とあって、村長さんももう一度依頼を出す事にしたらしい。
なにせ、これからの時期、木こり達にとっては木の出荷の最盛期を迎え、村人たちも木の実やキノコといった山の幸を取りに山に入る事が多くなるために今アイアンクローに出てこられると本当に厄介なんだそうだ。
なので、村長さんは明日、街の役人に書類を出しに行くついでに侍処にアイアンクロー討伐の依頼を出す事にしたらしい。
で、俺はといえば、昼食をとった後ドクトルさんの鍛冶場に来ていた。
なぜかというと、村長さんにこれから山に入るには剣の一振りでも持っておかないと危険だと言われたからだ。
幸い、剣の代金は村長さんが出してくれるらしいので、それならばとドクトルさんの鍛冶場にやって来たのである。
俺が鍛冶場に入った時、ドクトルさんは鎌を打っている最中だった。
もうすでに形は出来終わっていて、素人が見てもこれは鎌だなと分かるようになっていた。あと少しで完成だろうから、しばらく声を掛けずにそのまま待っていることにした。
今のドクトルさんは真剣に真っ赤な鉄と格闘していて、とても話しかけられる状態ではないのだ。
完成寸前の仕上げが一番重要だとなんかで読んだ気もするし。
で、しばらくして打ち終わったのか真っ赤な鎌を水の張った桶に入れて急速に冷やしてひとしきり眺めた後、ドクトルさんはようやくこちらに向いて話しかけてきてくれた。
「待たしたな。もう直ぐ刈取りの時期だから少しでも在庫を増やそうと思って打ってたら少し真剣になり過ぎちまった。で、今日は何の用だい。」
「剣が欲しくて参りました。」
「剣?今まで剣を持っていなかったのかい。」
「ええ、まあ。」
「そうか、剣がなければ何かと不便だろう。村からも出られないしな。
今、ここにあるのは三本だ。どれもまあまあの出来だが、気に入ったのがなければ新しく打ってやる。
今持って来るからちょっと待ってな。」
そう言って、鍛冶場の奥の部屋に入って行ったドクトルさんが手に三本の剣を持って帰って来た。
「にいちゃんの戦闘スタイルを知らんからな。手に取ってみて貰っても構わんぞ。なんなら素振りでもしてみな。」
そう言って、三本の剣をさしだされた。
一本目はかなり大きい大剣で剣の刃の部分の長さだけでも2mはありそうだ。
厚みもかなりのもので、持って構えてみたが、何とか構えられるくらいだ。 この剣は背中に背負ったら何とか走れるだろうが手に持った状態じゃあ明らかに無理だ。なので、この剣は却下。
残り二本は大きさが違うだけでほとんど形は一緒だ。いわゆる剣で、両刃の結構厚みがあり、反りが全くないタイプ。
片方は両手で持つくらいの大きさで、もう片方は片手でも十分に振り回せるくらい小さい。
実際両方とも振ってみたが、両手剣の方は金属バット位の重さで両手だと結構簡単に扱えた。
片手でも何とか振れる感じだ。片手剣の方はほとんど重さを感じない位軽い。素早く振れるが、玩具みたいなのでこれも却下だ。
という訳で、オーソドックスな両手剣にしようと思ったが、刃の部分を確かめてみると、一向に斬れそうにない。
そういえば、こういった剣は、斬るのではなくて剣の重みで押しつぶすというか裂く感じが強いと聞いた覚えがある。
高校から部活で剣道をしていて、今では剣道三段になり陸自に入ってからも剣道の特訓をさせられていた俺は、その感覚に違和感を覚えた。
どうせなら、日本刀の方がしっくりくるのでそっちの方が良い。
まあ、竹刀ばっかりで真剣なんか持った事ないのだが。
という訳で、一か八かドクトルさんに聞いてみる事にする。
「あの。どれも良い剣なんですが、刀はないんでしょうか?」
「刀?なんだそれは?」
「えっと、大きさはこの両手剣位なんですが、片刃で反りが入った物です。」
「片刃?それに反っているだと。」
「はい、やっぱりないですか。」
「いや、有る。有るには有る。」
「有るんですか?」
「ああ、ちょっと待ってな。」
そう言ってドクトルさんはまた鍛冶場の奥の部屋に入って行った。
しばらくして、黒い細長い箱を持って戻って来た。
「にいちゃんが言っていてのはこの剣の事かい?」
箱を開けながらドクトルさんが聞いてくる。箱の中には一振りの青い刀が入っていた。
「そんです。これが刀です。」
「にいちゃんの故郷の剣かい。」
「ええ、私の故郷じゃあ剣と言えば刀でした。触っても良いですか?」
そう言って手を伸ばして刀を取ろうとした時、ドクトルさんが大声をあげた。
「待ちな。」
俺は慌てて手を引っ込める。
「実はな、この剣は呪われているんだ。」
「呪われている?」
「ああ、この剣はな、有る貴族様が処分してくれと儂の所に持ってきたんだ。
なんでも、この剣を手に入れてから、血なまぐさい事件が続いたんだとさ。
で、儂に処分してくれって事だった。
まあ、儂も呪いだの迷信などは信じない方だったから、引き受けたのさ。
で、鋳潰そうとしたんだが、どんなに熱しても叩いても、一向に潰せなかった。それどころか傷一つつかないんだ。
それはもう、呪われているとしか考えられない位だった。
慌てた儂は貴族様に変えそうとしたんだが、一度引き取ったんだからそちらで引き取ってくれと突っ返されてな、結局今まで倉庫に入れっぱなしで忘れておったよ。」
「そうだったんですか。ところで、ドクトルさんはその刀を引き取ってから何か血なまぐさい事件とか起こったんですか?」
「ん?そういえば、特に何も起こっとらんな。」
「じゃあ、その刀が呪われているってわけじゃないんじゃないですか?」
「ふむ、確かにそうじゃの。儂はてっきり形を変えられんから呪われていると思いこんどっただけかもな。」
「それに、ドクトルさんがどんなにやっても、形が変わらない刀って、それってものすごく良い刀なんじゃないですか?」
「確かに、そういう風に考えることもできるか。」
「その刀、手にとっても良いですか。」
「ふむ、まあ、良いじゃろう。しかし、呪われても責任もたんぞ。」
何とか許可を貰えたので、その青い刀を持たして貰った。少し構えてみる。
さっき持った両手剣と同じ位の重さの様に感じる。大きさ自体はかなり小さいのに…
「変じゃろ。」
ドクトルさんが意味ありげに聞いてきた。
「ええ、少し重たいですかね。」
「そうなんじゃ。色や特性から、元鉄は青鉄だと思うのじゃが、なぜか同じ大きさの青鉄よりも重いんじゃよ。」
「青鉄?」
「ああ、青鉄じゃ。」
「青鉄って元々青い鉄なんですか?」
「?にいちゃんとこにはなかったのかい青鉄。」
「ええ、鉄は銀色でした。」
「銀色って、白鉄かい?」
「白鉄?鉄って何種類もあるんですか?」
「鉄は黒、青、白の3種類あるだろう。」
「いえ、鉄は一種類でした。」
「そうかい。一種類しかなかったのか。じゃあ簡単に説明しておくか。
まず黒鉄。これは魔力を一切通さないが、とても固くて重い。その代り柔軟性に欠けて欠けやすい。
ハンマー等はこれで作るな。
青鉄は1方向にだけ魔力を通す。あまり重くはないが、それほど固くもない。
柔軟性は結構あって薄く細くすれば木と同じ位にしなる。生活用品はほとんどこれだな。一番安価だし。
あと魔力を通す伝達線にも使われることがある。
白鉄は魔力を良く通す。てか、魔力を通しやすい。しかも軽いから魔法使いの杖の材料として重宝されている。
だが、かなり柔らかいから剣として使うにはいまいちだな。
柔軟性がなく曲がったら戻ってこない。
大体そんな感じだ。
一般的な剣は黒に幾らか青を混ぜて作るが、片手剣とか軽くないといけない物には白を混ぜて軽くする。
俺の配合は大剣で大体黒8青2。両手剣なら黒7青3。片手剣は黒6青2白2といったとこなんだが。」
「だったら、この刀がさっきの両手剣よりも重いはずがない?」
「そうなんだ。それもあって呪われていると思ってたんだ。」
なるほど、でもそれなら、呪われているってより素材が違うって考えた方が納得がいくんだけどな。
「この刀。どうやって青鉄だって解ったんですか。」
「そりゃお前、この色で魔力を通すのは俺は青鉄しか知らねえからな。」
なるほど、でも、もしかしたら、ドクトルさんの知らない素材で出来てる可能性もある。という事ですか。
この世界がファンタジーならオリハルコンやらミスリルやら不思議金属があってもおかしくないし。
そう考えながら刀を振ってみる。重みといい、握り手といい、いやにしっくりくる。
とても手になじんで振りやすい。青白く輝く刀身がとても綺麗だし切れ味も凄そうである。
「これって譲って貰えます。」
「その剣かい。まあ、にいちゃんが呪いの事を気にしないって言うなら譲ってもいいぞ。
にいちゃんには装填場の修復やらふいごとやらを貰ったりと世話になっとるしな。」
「ほんとですか、ありがとうございます。」
「ふむ。別に儂が持っていても倉庫に入れっぱなしにしとくだけじゃしな。」
っという訳で、刀を箱ごと貰ってしまった。
しかも「お代は装填場の修復とふいごの製作で十分だからいらない」と言われたので、
ありがたくその申し出も受けた。
村長さんに代金を払ってもらうよりもその方が気が楽だし。
その後、何度もお礼を言ってドクトルさんがの鍛冶場を後にした。
その夜は、夜遅くまで村長さんと刀について話し合った。
こちらの人々は買った剣に名前を付けるらしく、村長さんも愛用の両手剣に「ビックインパクト」という名前をつけていた。由来については聞けなかった。
なので、俺もこの刀に名前を付ける事にした。
ドクトルさんが引き取るときには名前は教えて貰ってないらしいので。
で、名前だが、第一印象から『青龍』と名付ける事にした。
因みに青龍は箱に入っていた為か、鞘がなく今はまだ剝き身だ。
明日木の加工がうまい左衛門さんに鞘は作ってもらうことになった。
左衛門さん、畑仕事が専門と思っていたが、そんな技術もあったのですね。
次の日の朝。村長さんは朝早くから村唯一の商店の荷馬車に乗って街に出発して行った。
村長さんを見送った後、さっそく左衛門さんの家を訪ねる。
左衛門さんはそろそろ畑に出かけるかなと言いた感じだったが、俺の話を聞いて直ぐに鞘の製作に掛かってくれた。
囲炉裏のある部屋で時々木をあぶりながらノミで木を削っていく。
さすがに村の木工を任されているだけあって大工でもやっていけるくらい、というか農業の方が副業なんじゃないですかと思うくらいの腕だった。
そして、鞘は昼前には完成した。
渡された鞘は、青龍をぴったりと包み込んで、まさに完璧な作りだった。
代金に村長さんから預かった銀貨を1枚渡そうとすると
この前畑の岩を除けて貰ったのでその分で良いと言われ、お礼をさんざん言って村長の家に帰った。
もちろん、銀貨は後で村長さんに返した。
結局この青い龍は村の人たちの好意でお金を全く払わずに手に入れた。
まあ、俺がやった事に対する対価だと言ってくれているのでそんなに気は遣わなくて済むが、
つくづくこのような小さな村では持ちつ持たれずなんだなと実感した。