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異世界で本当にチートなのは知識だった。  作者: 新高山 のぼる
ヒントは常に歴史にあり。だからチートなんです。
32/46

チートな街造り

 鷹ヶ城を占領した時も思ったが、占領するよりも占領した後の方が大変だ。

 しかも、今回は前回みたいに他人に投げる訳にもいかず、自分ですべてしなければならない。

 さらに言うなら、占領後は自分達の事だけを考えていれば良い城と違って、今回は住民が暮らしている街の面倒をみなければならない。

 領主になるのだから当たり前だが、街の管理などゲームでしかした事がない素人にはきつそうだ。

 それでも、事前に色々と準備しておいたおかげで何とかなっている。

 しかし、この状況は生まれてから一番の困難である。



 重京の街を無事占領した俺は、とりあえずの居場所として政庁の執務室を選んだ。

 この街の行政のトップ達は、要塞陥落と共に逃げ出していたので、政庁の中には現地人のスタッフしか残っていなかった。

 とりあえず、当面は人員不足がはなはだしいので、彼らはそのままこれまで通りに働いてもらう事にして、現状のこの街の情報把握から始める事にしたのだが、これがとんでもなく大変だった。

 なぜなら、政庁はこの街の人口さえ正確に把握していなかったのだから。

 それだけではない。この街は帝国に占領されてすでに数年たっているにも関わらず、いまだに軍政が敷かれていた。

 しかも、法律なんてあって無い様な常に戒厳令状態。

 まったく勘弁してほしい。


 初めにこの現状を理解した時は途方に暮れそうになった。

 しかし、呆然となったその一瞬の暇さえもなく、押し寄せる報告と書類の山に対応していく事となった。

 占領直後からここ、元方面軍司令執務室に詰めて今や陽は完全に落ちて外は真っ暗闇である。しかし、この部屋に入ってくる人間の数は一向に減らない。

 俺の部下たちはこの街の現状を確認して報告してくるし、政庁のスタッフは今後しなければいけないであろう面倒事を持ちこんで来てくれる。

 しかし、そのほぼすべては必要な事であり、何一つおろそかにはできない。

 ようやく事態が収束に向かったのは、一睡もできぬまま夜が明け、お日様がほぼ真上に来た時であった。


 しかし、事前にある程度準備をしていなければ、ここまで早く事態を収束できなかったであろう。

 事前情報から必要と思われる事項をピックアップし、対応策を書類にまとめておいた為、類似案件に関してはこの書類を渡して終わりだった。

 占領後の各部隊の行動もあらかじめ命令書を幾パターンか用意して作っていたので、各部隊の行動も迅速に行えた。

 作っている最中はまだ占領もしていないのに、もう占領後を事を考えるのかと、自分自身疑問に思っていた。『獲らぬ狸の皮算用』になるのではないかと。

 しかし、実際に占領してみて、やっておいて良かったと胸を撫でおろした。



 昼食後、国王様と赤穂様に詳細を報告するため、占領直後に送った早馬の第1報に続いて、第2報を送り出した。

 第2報を無事書き終えた時点で、すでに眠気はピークを通り越していたが、どうしても街を見ておかなくてはいけない気がしたのと、しなければいけない事があって街に出た。



 政庁の庭は庭園とまではいかないが、公園並みに整備されていた。

 今は無数のテントが並んでいる。言うまでも無く、俺の騎士団員の物だ。

 使える建物が予想以上に少なくて、中隊長以上は何とか政庁内に部屋を確保できたのだが、一般兵には当面はこれで我慢してもらう事になった。

 政庁前の通りは皇国と帝国をつなぐ街道が南北に真っ直ぐ貫いている大通りだ。

 しかし、これほどの街なのに、通りに活気はない。営業している店もまばらで所々に崩れ落ちている建物も見受けられる。

 別に、俺が占領したからではない。元々こうだったのだ。

 そんな閑散とした通りを北に向けて進む。


 所々で、崩れ落ちた建物を片付けて小さな小屋を作っている者たちがいる。

 白い鉢巻をつけ、右手に腕章よろしく白い布を巻きつけている者達だ。

 彼らは、街を占領した時に白旗を振っていた守備部隊だ。

 今の俺の騎士団には捕虜として拘束する余裕はなく、また、反乱を起こされてもたまらない。結果、武装解除して、警棒を持たせ、治安維持に使う事にした。

 彼らはこの街に詳しい。この街出身者がほとんどだから当たり前だ。

 街の他の住民からすれば、強者の犬と映るかもしれないが、俺の騎士団に向かう憎悪を一手に引き受けてもらう事も考慮に入れて雇った。

 賃金もかなり低額で雇えたし、俺の騎士団は今後、帝国からの攻撃に備えなければならないので、足らない人員を確保できた感じだ。

 彼らを雇った事により、ますます、俺の騎士団は軍事に特化し、彼らは治安維持、いわゆる警察官の任務に当たる事となった。

 もちろん、今まではどうだったか分からないが、今後はきちんと犯罪者のみを取り締まってもらい、法律と証拠重視の行動をとるように厳命してある。

 それを守らなければ、俺の騎士団に取り締まられる。


 そんな彼ら、以後警察官と呼ぶが、彼らは今、自分たちの詰所を作っているのである。

 元々は城壁の詰所に詰めていたのだが、もちろんそこは俺の騎士団にあけ渡してもらう。

 なので、彼らには新しい詰所を街の随所に作って貰っているのだ。そう、交番のように。

 これで、彼らが反乱を起こさない限り治安についてはある程度安心だろう。

 もっとも、切羽詰って兵になり、俺の占領と共に降伏した彼らが、自分の首を絞める様な行動(反乱)はたとえ帝国の間者がいたとしてもしないと思うが。



 大通りをさらに北へと進むと、通り沿いの大きな空地についた。

 ここは元々大きな教会が建っていたらしいが、俺たちが占領した際は既に瓦礫の山と化していた。

 何故だか理由は定かではないが、帝国では宗教は禁止されているらしい。

 なので、こういった教会跡は大概瓦礫と化している。

 もっとも、教会でなくても瓦礫と化している建物は数多いのだが。


 そしてここ、重京で一番大きかった教会が建っていた場所を第三大隊は綺麗に瓦礫を撤去して広場にしていた。

 たった一日でこれだけの瓦礫を片付けたのだから素直に驚く。

 撤去した瓦礫は城門の外に運ばれていた。

 今後、街のあちこちにある瓦礫は一度街の外に集めてそこで選別。使える材料を再利用する予定だ。

 この場所を片付けた第三大隊は、半数は既にこのような瓦礫の撤去にあたり、残りはこの場所で明日からの作業に向けて準備をしていた。

 その作業に補給部隊や司厨部隊の一部も参加している。

 これらの作業は事前に計画し、命令書も作って置いたものだが、計画より早く進行しているようだ。



 作業状況に満足してそのまま通りを北上し、街の外へ出る。

 城壁の外はしばらくは草原の様になっているが、直ぐに湿地帯になり、沼があちこちに点在している。

 街の近くはまだ大丈夫だが、しばらく北上するとワニに似たモンスターや巨大なオタマジャクシの魔獣が出るらしい。

 そんな湿地帯と草原との境目付近、そこで俺は馬をおりる。


 この先は沼の関係で街道も蛇行しているが、ここまでは街の北門から一直線だった。

 街中の大通りも一直線なのでここから街の南門(皇国側の門)まで街道は一直線という事になる。

 そして、この地点。街の北門から約1kmのこの場所に俺は新たにこの街のシンボルを建設する事にしたのだ。

 街のシンボルにして俺の権力を誇示する物。

 さらに重要な防御拠点としてこの場所に要塞を建設する事にしたのである。

 ただ、要塞といっても城を造るのではない。

 街の城門と一体化した、それでいて基地機能を有する物である。

 たいそうな言い方をしたが、つまり巨大な城門を建設しようという事だ。

 この場所に城門を造るという事は、街をこの場所まで広げるということでもある。


 重京の街は昨日少し見ただけだが、かなり人口過多だ。

 周辺の村々から人が流入した為だと思うが、瓦礫のだらけのスラム街に人々が所狭しと住んでいた。

 それに加えて、将来的にはこの街に俺の騎士団の家族や皇国からの移住者も受け居いれるつもりだ。

 そうするとどう考えても現状の重京の広さでは足りないのだ。

 現在の重京の城壁はいびつな形の部分もあるが概ね1辺が1kmの四角形である。これを1辺が2kmまで拡張する予定だ。

 もちろん、普通に工事していたのでは時間が掛かり過ぎる。

 なのでどうしても俺が参加する必要があるのだ。



 街道の真ん中に立った俺は、両手を地面につけて魔力を送る。

 魔法が使えるようになってから、暇を見つけては魔力操作について訓練していた。

 その成果かどうか解らないが、使える魔力量が増えたのは確かである。

 これまでで1番多くの魔力を送る。

 大体俺の魔力量の8割がた送ったであろうか。ようやく魔力の量が満たされたのか周辺の地面が盛り上がり出した。

 盛り上がった地面はどんどん高くなり最終的に高さ10mに達した。

 街道を中心に高さ10m幅3m左右100mもの巨大な土壁が誕生したのだ。

 しかも、街道の左右10mは、土壁でなく石壁で街道の部分だけ1辺が5m四方の正方形に切り取られていた。

 さらにおまけとして、壁作成に必要な土を拝借したため、前面は幅10m深さ5mの堀も出来た。

 ちなみにこの堀、壁全面すべてに出来たので、現在街道はこの堀によって分断されている。

 城壁が完成したあかつきには跳ね橋でも設置する予定である。

 この光景を見て、俺の護衛にあたっていた本部要員は言葉も出ず、目を見開いていた。

 俺はといえば、1度に大量の魔力を消費して疲労困憊だ。

 慌てて持って来ておいた薬草入り餅を頬張った。


 しばらくして、魔力が少し回復したためか、もの凄い眠気が襲ってきたので足早に政庁に帰った。

 帰った後は、とりあえず腹に詰め込めるだけ食べ物を詰め込んで翌朝まで爆睡を決め込んだ。




 次の日の朝になっても、厄介事は終わっていなかった。というか、むしろ増えていた。

 昨日政庁の職員の残留を決めたのを聞きつけたためか、街の公務員と言うべき者達が面会に来ていたのだ。

 もちろん、来るのはお偉方だけだが、それでも10人は下らない数の面会希望が来ていた。

 中には早朝にも関わらず、すでに何人かは当人が来て待っているそうだ。

 まったくめんどくさい。

 とりあえず、今日は重要な案件がある為、彼らはさらに待たしておいて、朝食後直ぐに出かける。

 出かける先は、昨日第3大隊が整備していたあの大広場だ。



 広場に着くと、いや、着く前からだが、広場を先頭にもの凄い行列が出来ていた。

 街中の人間が集まったのではないかと思う行列である。

 まさに人、人、人である。

 そして、その行列の先頭である広場に到着する。

 そこでは大きな鍋がいくつも用意されていて、そこから人々に雑炊が提供されていた。そう、炊き出した。

 ろくな食事もせずにただスラムの道端に腰を下ろしているだけの住人。

 彼らがこの重京の住人のほとんどだった。

 言うまでも無く、この状況は犯罪の温床になる。

 その対策がこの炊き出しだ。

 だが、ただの炊き出しではない。他にも理由があるのだ。


 広場で雑炊の入った椀を受け取った人々は、食べ終わった後、椀を所定の位置に持っていく。

 その後はまた列に並び直したり、街に消えていくのかといえばそうではない。

 椀を返した女性は、そのまま椀を洗いはじめたり、材料を調理して空いた鍋で更に雑炊を作ったりと、この場で働き始める。

 まだ、料理もできそうにない子供たちは、椀を返すと、代わりに黄色い鉢巻をもらい、それを身に着けて行列の整理に当たり始める。

 もの凄い行列の割に俺がちゃんと広場に到達出来たのは、黄色い鉢巻をつけた子供たちが行列の整理をしていたために、街道がふさがれる等の障害が起こらなかったためだ。

 子供たちや、彼女達が作業を始めた為に、それまで作業に当たっていた騎士団員達はそれぞれ小隊ごとに次の作業を行うために移動して行く。

 そして、椀を返した男たちは次々とグループを組んで移動して行った。


 しばらく、途切れる事のない行列と食事を終えて仕事を始める住人、彼女達と入れ替わりに別の場所に移動をする騎士団員と住人達を指揮監督する騎士団員達を見ていると、大通りを石材を積んだ荷車や馬車が通過するようになった。

 この荷車らは俺が壊した要塞から石材を運んで来ているのだ。

 もちろん、運んでいるのは広場で雑炊を食べた男達だ。

 彼らは石材を北門の外へ運んでいる。

 彼らについて北門から街の外へ出る。

 行き着く先は、俺が昨日作った城門だ。そこでは、運んできた石材を城門側の土壁に沿って積み上げていく作業が行われていた。

 俺が昨日作った壁は城門付近以外は土で出来ている。石で作るより消費する魔力も必要な土の量も少ないからだ。

 特に、周囲が湿地で意外に使える土の量が少ない為、こうした処置になった。

 しかし、土だと流出してしまう。そこまで強く固めてないのだ。

 そこで、彼らの出番だ。

 彼らは、土壁に沿って石材を積み上げて城壁を作って貰うのである。

 こうして、少しずつであるが、城壁が石でコーティングされていく。


 そう、炊き出しの本当の理由は彼らを利用して城壁を作る事であった。

 そして、彼らが真面目に働く理由。

 それは、きちんと働けば夕方にはスープとパンが2つ貰えるからだ。

 真面目に働いた者には、監督している騎士団員から板がもらえる。

 さぼったり、雑炊を食べただけでいなくなった者達には、この板がもらえないので、夕飯は貰えない。

 パンが2つなのは広場にこられない(・・・・・)人にも食料を与えるためだ。

 そういった人は家族が持って帰ったパンを分け与えるだろう。



 作業は城壁を作る以外にもいくつかある。

石切り場での石材の切り出し。

街中の崩れた建物の撤去。

集めた瓦礫の選別。

スラム街の解体と新たな住居の整備。

水路の整備(上下水道)。

幹線の整備(街道の他にもう1つ街を南北に縦断する道。当面は馬車、荷車専用道路として城壁に石材を運ぶ。)。

城壁外の田んぼの開墾。

 これらが今から同時進行で進めていく作業だ。

 もちろん、これだけの量を炊き出しに来た男性だけでは無理なので、女性や子供も随時投入して行く予定だ。


 もっとも、これは住民たちでしてもらう作業で、騎士団員は別の作業に当たっている。

 俺が重京を運営していく中で、住民を味方に付けて、経済を回復させるために考えた策。

 それがこの、大規模公共事業だ。なかばニューディール政策のパクリだが、景気回復には持って来いだ。

 それに住民は、お腹が満たされればとりあえず満足してくれる。

 住民に好印象を与え、経済の回復に一役買い、犯罪発生率を下げる。まさに一石三鳥を狙った策だった。



 城壁横の土壁が、痩せすぎの男達によって少しずつ城壁に変わっていくのを見た後、昨日作った土壁の端まで行き、新たに土壁を作成した。

 昨日と同じ長さを造ったが、昨日と違ってすべて同じ土壁なので昨日ほどフラフラにはならなかった。

 それでも魔力の7割以上を持っていかれたので、帰ったらすぐに薬草茶のお世話にならなければならないレベルだ。

 あのお茶、初めは苦いだけだったが、昨日は砂糖を少し入れてみたら、紅茶風になってマシになった。

 それどころか、少し癖になりそうだ。というか、そう考えている時点でもうハマってしまっているのかもしれないが。



 政庁に帰ると、薬草茶(砂糖入り)を飲みながら、朝から政庁で待っているお役人の相手だ。

 政庁以外の建物で働いている部署の人間が来ているらしい。

 初めに執務室に入って来たのは「荷駄管理部」という部署らしく、馬車とそれをひく馬を管理しているらしい。

 馬車も客車と荷車の2種類があるようだ。

 街中の移動に使う馬車と物資輸送を引き受けていて、南門の外れの厩舎に部署を置いている。しかし、主な管理は馬の世話だとか。

 現在は、石材や瓦礫の運搬に使える馬車と馬(一部ロバの様な小さな馬もいた)は徴用しており、『街中の駅馬車』はお休みだとか。

 汚れ仕事が多い為か、トップも河南人の彼が指名されており、帝国人は政庁から指示するだけだったようだ。

 とりあえず、彼については暫定的にそのまま長を続けて貰い、『駅馬車』は街の整備に目処がつくまでお休み。馬の管理をお願いした。


 彼らの様に、街の維持に必要だと思う部署は、挨拶に来た河南人に暫定だが長を命じてそのまま業務をしてもらう事にしたが、そうならなかった部署もある。


 1つは『人員管理部』というところだ。

 挨拶に来たのは目つきの鋭い痩せすぎの男だった。

 業務の説明をさせると、いわゆる人種差別の維持管理で、本人ももの凄い人種差別主義者だった。

 平気で「亜人は穢れている」だとか、拷問がどうとか言うのでその場で警備に当たっていた第1大隊の人間に取り押さえさせて、政庁の地下になぜかあった牢屋に投獄した。

 彼の中では人種差別は当然で、なぜ亜人を拷問し殺した位で投獄されるのか納得いかないようだったが、その発想はかなり危険なので、残念だが、早々に処刑せざるを得ないかもしれない。

 彼を投獄後、すぐさま第1大隊の1個中隊を派遣して人員管理部を襲撃。職員全員を逮捕した。

 彼らの処遇は当面先送りにするが、問題を抱え込んだことには違いなかった。


 その他、『財務部』という主に徴税を行う部署もあったが、挨拶に来た人間は河南人なのに太っているわ、身に着けている者も豪華だわで明らかに『オレ横領してました』的な人間だったのですぐさま解雇を言い渡した。

 後日に『財務部』を視察したが、ほぼ全員が横領に大なり小なりかかわっていたし、徴税も主に街ではなく今はない村からで、資料もいい加減だったので、全員解雇することになった。

 結果、財務部は建物だけが残ったのだ。


 そして、面会者最後の人間は侍所の所長だった。

 彼は『長尚』と名乗り今後の付き合いについて良好な関係でいたいといわゆる『ごまをすって』きた。

 必要があれば依頼を出すと言ったら納得したのか帰って行ったが、たかがそんな用件で時間を取らないで欲しい。

 ちなみに、皇都の侍所からの連絡は彼の所に来る前に要塞に伝わったみたいだ。

 皇都の連絡員が要塞前で捕まったのが原因らしい。

 俺が動くと分かっていてもなお、要塞からでて偵察などを行わなかったのはいかがなものか。

 まあ、彼自身も、皇国が攻めて来るのはもっと後だと思っていたようだが。



 色々あったが、なんとか面会人をさばいた後、今度は書類の山と格闘する。

 これらは政庁職員からの物と、騎士団からの物がある。

 騎士団からの物は重要案件だけだが、政庁からの物がめんどくさい。

 上級職員がほとんどいない為、現場の書類が俺の所まで回ってくる。

 とりあえず、この書類を何とかしたら、何人か目についた物を昇任させないと俺が倒れそうだ。

 それから、一刻も早く使える奴を見つけないと。

 内政の人員確保が急務になった。俺の補佐役のできる内政に詳しい人物を。

 その為に、騎士団に指示を出す事にした。


 日が落ちてようやく書類の山を何とかし、その書類の文面や質問の内容などから、使えそうなやつを数人ピックアップして、昇任させる事を伝える書類を書き終わった所で炊き出しの報告書が回ってきた。

 最終的に、炊き出しによる公共事業に参加した人数は1万人を超えていた。

 作業に従事した証に配っていた板が足りなくなり急きょ製作する事態になったそうだが、予想以上の人数の為作業は順調にはかどったそうだ。

 今日は様子見で作業も城壁造りと瓦礫の撤去選別しか行わなかったそうだが、順次拡大していくようである。

 また、一部不正受給があったそうで、その対策も進めていく旨が書かれてあった。

 この件は、責任者に任命している鉄次さんに一任することにして、次の報告書にうつる。

 しかし、鉄次さんもかなり仕事を掛け持ちさせているので大変だろう。早急にこちらの人員の確保も必要になりそうだ。

 公共事業以外の作業に従事している小隊の小隊長には、俺が直接命令を出しているが、使える小隊長を選別して中隊長職を作らないといけないかもしれない。

 もしくは、鉄次さんを副将軍として分離させて、第3大隊長を新たに任命するか。

 その方が良いかもしれない。鉄次さんにはオールマイティー職として手元に置いておくのが正解か。

 まあ、それは鉄次さんと要相談だ。

 そんな感じで、今日も夜遅くまで執務室にこもる事になった。


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