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異世界で本当にチートなのは知識だった。  作者: 新高山 のぼる
現代戦を取り入れてみたら?
25/46

一に情報、二にお金

男爵に任命され、侵攻作戦が俺に一任というか丸投げされた翌日。

皇都の我が家で目覚めた俺はそれでも気分が良かった。

たった半月ほどしか留守にしていなかったが、やっぱり我が家が一番だ。

起こしに来てくれた桜香はとても綺麗になっていたし、そんな綺麗な子に起こされて気分が悪いわけがなかった。


食生活が良くなったせいか、全体的にふっくらとしたが、全然気にならない程スマートな体形である。

まあ、それまでが痩せすぎだったのだが。

久しぶりに全員で食べる朝食。桜香達3人は半月前とは見違えて綺麗になっていた。

また、勉強にも励んでいた様で、読み書きはもちろん簡単な計算もできるようになっていた。

成長期と言ってもどれだけ努力したのか計り知れない。

聞けば、これまでできなかった勉強をさせてもらって、楽しくて仕方なかったそうだ。

前の世界で嫌々勉強させられていた俺にとっては、勉強ができるということが贅沢だとは考えてもみなかった。

たとえ小さな子供でも、こちらの世界の貧しい農村部では勉強する時間があるのなら働くべきで、働かざる者食うべからずだったようだ。

そんな感じで、やる気満々で勉強した結果、かなりできる娘達になっていた。

時間計算もできるようになっていたので、俺の計画もそろそろ実行に移せそうだ。

今日は一日礼儀作法について、小次郎さんと梅さんに桜香達の教育をお願いして俺は城へ出勤した。



皇城の俺の執務室に入ると小枝子さんが前と変わらぬ挨拶をしてくれて、俺がいない間の連絡事項を受けとった。

そして、机の上に積まれた書類の山と格闘する事となる。


昼食の後、ようやく解放された事務処理にかなりの疲労を感じていたが、やる事があったので馬車で町に繰り出す。


初めに訪れたのは侍所であった。

訪れた理由はもちろん調査依頼である。

皇都エメラルドにある侍所「サウザンエメラシー皇国支部」は障子の扉を開けると左にカウンター、右に座敷があるどう見ても冒険者ギルドの和風版だ。

今回も前回と同じようにカウンターで依頼をしようとしたが、職員に別室に案内されて、そこでの依頼となった。

貴族になったからか、有名になったからか、単に前回は将軍として認識されていなかったためかは判らないがとりあえず、上客として認識されたみたいだ。

今回はお金は持って来ていない。

依頼内容が多く、複雑になったため、料金の設定が解らなかったためだ。

その点でも、相談できる個室での対応はありがたかった。

お金は後日鉄次さんにでも持って来て貰おうと思っている。


対応に当たってくれた上級の侍所職員である『代官』という職の男性に依頼を説明する。

別にギルドマスターとかではなくあくまでも上級職員でその上に所長がいるらしい。この人がギルドマスターぽい。

依頼は前回と同様、地形調査だ。

もちろん場所は今度の戦場である鷹ヶ城以北から帝国領華南部の最初の街である『重京ジュウキン』周辺までである。

地形調査と共に資源調査もお願いする予定だ。

こちらは言うまでもなく、占領後に利用できる地下資源や森林資源が目当てだ。

そして特に欲しいのが鉄とゴムだ。

今後領地運営を行い、技術力で繁栄させるにはこの2つがどうしても欲しかった。

鉄は既存の鉱石として認識されているが、ゴムはまだ見つかっていない。どういった物かを説明して探してもらうつもりだ。


そして最後に魔物やモンスターの生息状況だ。

これも将来村を建設する際に脅威になる魔物やモンスターの状況を知りたかったためだ。

帝国兵等に見つかった場合は、資源調査と獣の生息状況の調査は素直に答えても良いが、地形調査については出来るだけ隠ぺいしてもらうようにお願いする。

もちろん命の危険があればすべて答える事を了承した。

これは侍所としての要求でそれを飲んだ形だ。

そのから、依頼主の名前だが、これは公開してもらう。もちろん、敵に答えるのも了承した。

本来は公開しなくても良いのだそうだが、公開したのは侍の命を少しでも助けるためだ。

まず間違いなく敵は依頼主を気にする。

そして、依頼主さえわかれば素直に話したと信じて裏を見破れなくなるだろう。そういった意図である。


本当はこれらの依頼をおえた時点でお暇する予定だったが、代官がとんでもない提案をしてきた。

それは、この依頼が出ていることを華南部の侍所に知らせてはどうかというものである。

聞けば帝国占領前の河南国にも侍所があり、帝国領となってからもそれは維持され、こちらの侍所とも交流がたまにだがあるそうだ。

そのよしみで、『鷹ヶ城と重京の間の山岳部で男爵将軍が資源調査と魔獣の生息状況の依頼を出した。』と伝えれば侍たちの生存率も上がるし、依頼費も抑えられるという。

もちろん、こちらの状況がばれるのだが、誰か一人でも侍が敵に見つかればばれる事なので、初めからばらしておいて依頼費を抑えるのもありだと思う。

地形調査をしている事は教えないでもらうので、それを隠す意味でも効果的だ。なのでその案に乗る事にした。

兵は増えるが、収入はあまり変わらず、軍資金に不安がある中で、節約できるなら節約したいと言う思惑もある。

資源調査等を開示する事によって敵は領土侵攻を知る事になる。

そして、すでに重京までは帝国の領土とも皇国の領土ともいえない空白地帯となっている。

この情報を帝国が知ったとしても、皇国が侵攻を考えており、侵攻による資源の獲得を狙っていると分かるだろう。

しかし、そんなことは鷹ヶ城を占領した時点で予想がついている事であり、それを裏付けるだけである。

つまり、知らせたからと言ってたいした事ないのだ。


そして、一応隠ぺいしている地形調査だが、俺にとっては重要だが、それが敵にとって重要な情報かどうかは不明である。

少なくとも、俺以外の皇国の将軍には重要な情報ではないらしい。

戦闘とはあくまで騎士同士の力の差が勝敗の差であり、そこにそれ以外の条件は存在しないというのが一般的だ。

が、そんなことはありえないと俺は知っている。

日本人として育った俺は少数で多数の強敵に打ち勝つと言う勝利に魅力を感じる。

その為には地形を利用するのが一番だと古人達が証明してくれている。桶狭間しかり、鵯越しかりである。

最近ようやく事の重要性に赤穂様が気付いてくれたみたいだが、その他の将軍は全く理解していないだろう。

単純に攻城戦では守る方が有利と理解していても、その他の場所ではそれを理解しようともしていないのはかなり疑問である。

あんたら、山の斜面とかで戦闘した事ないんかいと突っ込みたくなる。

しかし、皇国がこの状況だから、帝国もそうだと決めつけるのは良くない。

なぜなら帝国は既に何十年と周辺諸国との戦争を続けて大きくなっているのだ、その事に気が付いているかもしれない。

だからここはあえて慎重に行動すべきである。



侍所を出て次に向かったのは4軒の大店だ。

それぞれに持参した戦利品のリストを渡す。

そして、それらを明日の午後、俺の駐屯地で競売にかけると知らせた。

そう、鷹ヶ城で収得した財宝類を高く売る方法として、4軒の大店で競売させるという事を思いついたのだ。

何せ結構な量と質の財宝があり、俺には相場は解らないと来れば競売が一番手っ取り早い。

ただ、談合されると売却額が下がるので、一番多く金額を使ってくれた大店には次の作戦で必要な物資の購入依頼を出すという餌を付けた。

どうせ必要な物資を調達しなければならないし、一石二鳥になればという考えだ。

因みに、前回の依頼での調達品の競争結果だが、甲乙つけがたかった。つまり、引き分けだった。

それも合わせて各大店に伝えておいた。

実際、談合したかのように製品にバラツキがなかった。

良い方に解釈すれば、すべての大店が頑張ったという事だろう。

伊達に皇都に大きな店を構えていないというところか。


因みに鷹ヶ城で収得した財宝は今、駐屯地の倉庫に入れてある。

いくら金に目がくらんだ盗賊たちでも騎士団の駐屯地は襲わないだろう。

現在20人位しか騎士がいないとしてもだ。

一応、競売が終わるまではガルガラに警備として泊まり込みをしてもらってもしるし。


競売は初め午前中に行う予定だった。

しかし、一件目の大店で有る事に思い当たり急きょ午後に回した。

そして、4軒目を出た所で大慌てで城へと戻ったのである。

思い出したもの。それは国王様に金髪デブの金ピカ剣を献上し忘れた!という事である。

皇城の執務室に大急ぎで戻ってから直ぐに小枝子さんに明日朝一で国王様への面会の約束をとって貰えるようにお願いする。

小枝子さんもその話を聞いて直ぐに出て行った。

何処に行ったのかはわからないが、何処に行けば約束がもらえるのか俺には分からなかったので、帰って来たら聞いてみようと思う。

そして、小枝子さんは意外と早く戻ってきて、明日、朝一とはいかなかったが、午前中に国王様が会って下さるそうだ。

それを聞いて少し安心した。

因みに、国王様への面会希望は宮内局が執務室の2階にあるそうで、そこで申請すれば良いらしい。

将軍が急用だと告げると直ぐに国王様に時間をとって貰えるように調整してくれたらしい。

まあ、急いではいたが、特に急用ではなかったのだが、まあいいか。会ってから何か言い訳しよう。

こうして俺の領地獲得に向けての準備第1日目が終了した。




次の日の朝。この日起こしに来てくれたのは百合花だった。

耳元で声を掛けてくれたらしく。意識が覚醒する前に、石鹸の良い香りを感じる。

目を開けると百合花の長いストレートの髪が鼻先まで伸びていた。

可愛い笑顔と共に正座してこちらを見つめる百合花の頭を撫でてしまったのは仕方がないと思う。

いつか彼女たちに手を出しそうで怖い。

前の世界なら間違いなく少女暴行で逮捕である。そしてロリコンのレッテルを張られる。

この世界では15歳で嫁に行くのは当たり前だし、手を出したからと言ってお咎めがある訳ではない。

しかも、彼女達は俺の奴隷な訳なので、むしろ手を出さない方がおかしいのであるが、やはり、前の世界の記憶がある為手を出そうとは思わなかった。

彼女達に手を出さない様に早く嫁をもらうべきかもしれない。

しかし、15歳の嫁さんをもらっても俺の中ではロリコンになるわけで、なんか意味のない気がする。


そんなアホな事を考えつつ身支度を整えて居間に行く。

昨日と同じ様に全員で食事をとり、食後に考えていた件を伝えた。

「今日は桜香と共に皇城に出勤する。」と。

桜香はもちろん大慌てだ。

小次郎さんは「時々貴族が奴隷を見せびらかすために連れて歩くことがある。」と言っていたが、かなり珍しい事には違いないみたいだ。

その後、小次郎さんと梅さんに桜香を借りても良いかと尋ねると、

「将軍の奴隷ですから私達に意見などありません。むしろこちらが借りている身です。」と言われて、桜香の皇城行きが決まった。

まあ、皇城だけでなく、1日一緒にいて貰う訳でだが。

そう、俺の計画とは桜香達奴隷を副官というか秘書として同行させることにある。

これで、一々忘れない様に自分でメモをとったり、忘れ物をして慌てる事がなくなるのである。

後々にはスケジュール管理をまかせたい。

まあ、戦場には連れて行けないので、副官も必要なのだがこれで雑事が1つ減ったのも確かだ。


そんな訳で、今日は桜香を連れて家を後にした。

桜香の服装は初めに着替えた時の無地の薄い赤色の着物というよそ行きの格好だ。

俺作成の、木の板に革を張ったバインダーとペンとインク壺のセット。そして数枚の紙束の入ったカバンを持たせてある。

着物にカバンという格好は、戦前の女学生を思わせる。

ただし、首につけた赤い首輪が異様に思えるが……。



俺達を乗せて家を出発した馬車はいったん駐屯地に向かう。

駐屯地ではガルガラに今日の午後に大店の人達が財宝を買いに来るので準備しておく旨を伝え、金ピカ剣を受け取って直ぐに後にする。

そして皇城に着いた。


馬車を降りてから執務室に着くまで、桜香は俺の直ぐ後ろをついて来ていた。

確か、上官の3歩左後ろだったか、そんな事を習った記憶がある。

今の桜香の位置取りもそれに近いようだ。小次郎さんに習ったのか、それとも人員管理課で教えられたかしたのだろう。

あまり多くはないが、すれ違う皇城の職員はいつもなら俺に対して軽く会釈をするのだが、今日は何人かの職員が俺に会釈をするのも忘れてこちらを見ているという場合があった。

中には慌ててお辞儀をする者もいた。

桜香に見とれたのか、俺が奴隷を連れて歩いているのが珍しいのかは不明だが。たぶんどちらもだろう。


執務室に着くと、いつもの様に小枝子さんが挨拶をしてくれた。

ただし、頭を下げながらも、視線の先は桜香に向いているみたいだ。


「おはようございます。小枝子さん。この娘は桜香。私の奴隷ですが、今日から私のスケジュール管理を任せようと思って連れてきました。」

「すけじゅーる管理ですか?あの、それはいったいどういったものでしょうか?」

「私の予定を管理してもらうと言えば分りやすいのかな。今日は誰と何処で会う約束があるのか、何時何処に行かなければならないのか等を記録しておいてもらい、進言してもらうつもりだ。」

「それがすけじゅーるですか?」

「まあ、そんな感じだ。なので、小枝子さんも面会希望者とか私が時間を用意した方が良い連絡があれば桜香に伝えてください。もちろん、重要な件に関しては、今まで通り直接連絡してください。」

「分かりました。」

「後、桜香は常に私と行動を共にさせるつもりです。

これからは、私がここに来た時に、小枝子さんに必要な情報を桜香が伝える事が多くなると思いますがよろしくお願いします。

重要な件は私が念押すつもりですが。

それから、桜香を直接関係先に連絡させる事があると思いますので、小枝子さんの仕事を少し教えてやってもらえませんか。

特に、どういった事は何処に行けばいいのか等を。」

「分かりました。私としても、ここに将軍が居られない間の事を桜香さんに聞けるのでありがたいです。出来るだけ将軍の考えに沿えるようにいたします。」

「ありがとうございます。今日何か重要な件はありますか。」

「はい、国王様との面会は少し遅くなりそうですが、午前中には行えそうです。準備が出来れば誰か人を送ってくれるそうですので、その時にお願いします。」

「分かりました。後は?」

「はい、その他の件については桜香さんにお伝えします。」

「分かりました。よろしくお願いします。」


桜香が秘書をやる件については、とりあえずこれでよさそうだ。

そしていつもの様に書類をかたづける。

書類を片付け終わると、今度は侵攻作戦について検討する。


検討すると言っても今できるのは、前回書庫から借りて来て、必要な部分を書き写した資料や大店から提供してもらった情報を地図に起こしていくくらいだ。

前回は鷹ヶ城が作戦目標だったので、鷹ヶ城周辺までしか地図に起こしていなかったのである。

前回書庫から借りて来て、必要な部分を書き写した資料も鷹ヶ城周辺がほとんどだったので、改めて小枝子さんに必要な資料を借りて来て貰う。

勉強の為、桜香も同行させた。



大店からは旧河南国の知っている情報すべてをもらったので、こちらからは地図を起こせる。

しかし、地図に起こすにしても当面の作戦目標が問題だ。

侍所には旧河南国最南の街『重京』までの調査を依頼したが、情報を整理しているうちに、1回の作戦で重京を占領するのは難しい事が解って来た。


まず重京の位置だが、鷹ヶ城からさらに一昼夜離れていることが解った。

一昼夜寝ずに行軍してそこから戦闘する訳にはいかないので、途中で一泊する必要がありそうだ。

しかし、重京までの道のりは両サイドを険しい山に囲まれた山道の一本道。

十数人の商隊ならともかく、千人単位の騎士団が途中で野営するなど不可能だ。

仮に出来たとしても、街道に沿って細長く布陣等すれば、敵から見て格好の的だ。

碌に反撃できずに撃破されてしまう。


途中で中継地点として砦を設置して、同時に街道を整備。徐々に帝国領に侵攻していくのが最善の策かもしれない。

しかし、それだと時間が掛かり過ぎる。

状況からして、敵に時間を与えるのは得策でないように思える。

そう思うのは、こちらがほぼ俺の騎士団単独の作戦なのに対して、敵は国として防衛を行うであろうからだ。

まあ、帝国の状況を考えれば国としては無理だろうが、それでも方面軍的な単位で防衛するだろう。

まだまだ情報不足ではあるが、現状では俺の騎士団の増員と増員者の訓練が完了次第、侵攻を開始するのがベストだろう。

それでも、劣数の練度不足の部隊で奇襲をかけ成功させる必要がある。

奇襲を成功させなければ、勝利は難しいだろう。

その為には、もっと詳細な情報を集め、分析し、作戦を立てなければならない。まずは情報収集。それが重要である。


結局、小枝子さん達が書庫から借りて来て貰った資料を使っても、決定的な情報を得る事は出来ず、まだまだ勝てる見込みはなかった。

地図もまだまだ精度が低いと感じる物しかできず。後は侍達と捕虜からの情報待ちである。



もう直ぐ正午になろうかという時、ようやく国王様の使いの者が面会できると伝えて来た。

既に準備を整えていたので直ぐに本丸の指定された部屋に向かう。

部屋について直ぐに国王様がいらっしゃって、さっそく戦利品である金ピカ剣を献上した。

俺には無用の長物だったが国王様は気に入られたみたいだ。

まあ、見た目は金ピカで宝石まで散りばめられているからな。

でも俺にはそれが気に入らない。

武器はやはり質実剛健でなければかっこよくないと思う。

俺の青龍もシンプルイズベストでだから綺麗にみえる。


それから、国王様は侵攻作戦についても聞かれたが、こちらはまだ侵攻のめどさえ立っていない。

実際に行動を開始するのは1カ月以上後になってからだと説明した。

国王様からは全面的に協力はするが、出来るだけ早く侵攻の意志を見せて欲しいと言われた。

とりあえず善処すると答えておいたが、とんでもない事である。

侵攻の意志を見せたら奇襲できなくなるではないか。

少数で多数に勝利するには奇襲は絶対条件なのに……。



国王様に剣を献上した後直ぐに駐屯地に向かった。

駐屯地ではすでに競売の準備は終えており、兵舎の講義に使っていた数部屋に種類ごとに戦利品が並べられていた。

昼食は兵舎の食堂で食べた。

残念ながらここに残っている兵達は既に食事をとった後だったので、桜香とふたりで食事となった。まあ、なぜか桜香は喜んでいたが。


昼食後、少し応接室で待っているだけで、次々に大店の商人達が到着した。

皆大きなカバンを部下に持たせて、大店の旦那自らが出向いてきた。

たぶん、リストを見てこれは大きな取引になると感じたのだろう。

それに、ここでたくさん金を落とせば、さらに大きな取引につながるかもしれない。

そういう思惑も感じられる。まあ、その考えは間違っていない。

今度の作戦はかなり大がかりな物になるだろうから。なにせ侵攻作戦なのだから。


競売はリストの順番通りに滞りなく進められた。旦那自ら出向いてきた事もあってか、結構金離れが良い。

落札された物はその場で各商会の関係者が自分の馬車に運んでいく。

その横で4人の部下が必死で各大店毎の落札価格を書き留めて、合計金額を計算して行っている。

大店の方も部下に同じ計算をさせているみたいだから、後で両者を会わせて問題なければその金額を支払ってもらう予定だ。


現在の皇国は帝国により侵攻されてはいるものの比較的安定しており、端的に言えば平和だ。

その為、貴族や大商人等に対する貴金属類の需要も結構あるみたいで、かなりの高値で落札されていく。

特に、現在は国交がない為入手不可能な帝国産の陶器等は各大店が競った為、1セット金貨100枚になった物もあった。

そんなこんなで盛況のうちに終了した今回の戦利品競売会であるが、予想をはるかに上回る金貨2500枚程の臨時収入を得る事が出来た。

そして今回最も売り上げに貢献してくれた大店『三島屋』に、今回の侵攻に必要な物資の発注をすることが決まった。


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