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鮮烈な出会い
第一印象は、『とても綺麗な人』だった。有り体かも知れないけれど、藍原上総にとっては、この世に生を享けて十五年…本当に初めての感覚だったのだ。
当時中学三年生だった上総が、幼馴染みである少女と行った、志望高校の文化祭。
そこで上総は、『あの人』に出会ったのだ。
抜けるように白く透明な肌、生まれつきなのか、微かに灰がかった色の髪、六月にしては爽やかに吹いていた風に身を任せるかのように、ぼんやりと佇む、華奢な体躯。
その人が、そばに駆け寄ってきた友人らしき存在に気付き、浮かべた儚い笑み。
全てが、上総の頭に、心に、鮮烈な印象を与えた。もっと近くで、『あの人』を見たいと思った。
別の高校も視野に入れていた上総は、この文化祭での出来事をきっかけに、進路希望を明確に定めた。
名前すら知らない『あの人』の近くに行くために、私立夕凪羅学園への進学を。
――それが自分の平凡だった人生を、根底から覆すことになるなんて、当然知らないままに。