新しい処刑人
かなり久々の投稿でっす。できればコメントお願いしまっす。
バレットは、息を切らさず土を蹴る。前にドミニク、そして後ろにジョルノが乗って手綱を持っている。前から過ぎ去る風に、ドミニクの髪から甘くていい香りが乗ってくる。ジョルノは少し顔を赤らめながら、先を急いだ。
「ねぇ、あんな所に城の兵がいるわ!30人はいる……」
人や馬の通り道を、隙間がない程に詰めて歩いている。ジョルノ達は、兵達と同じ山道を通っていた。(このままではいずれ対峙してしまう。遠回りをしようにも、この山道で、斜面が急な場所では危険だ)
ジョルノは手綱を引き、バレットを止めた。
「ドミニク、俺が今から奴等に一人でここまで来たように思わせ、話をしてくる。もし戦闘が始まったら一緒に戦ってくれないか?」
「それ女の子に言う言葉?まぁ一般人じゃぁないけど……」
「そうじゃないよ。俺は、君を頼りにしているんだ。」するとドミニクの頬は少し赤くなり、黙って頷いた。
「じゃぁ行って来る!」
ジョルノはバレットを進めさせた。
しばらくして、
『そこの者、止まれぃ!』
先頭の兵が言った。どうやらこの隊の長のようだ。全員銀色の鎧は、まるで岩を装備しているかのようだった。
「私の名はジョルノ・ツェペリだ。処刑人である……」
『皆まで言わずとも分かるさ。貴様を父親殺しの罪で、この場を持って処刑する。』
「な!何を言っている。私ではない」
『お前しかいないんだよ!あの日現場にいたのは貴様だけ、そして貴様がいない間に部屋を調べたところ、凶器のナイフが見つかった』
「違う!誰かが俺を羽目ようとしているんだ。そもそも国王はどうした?命令を下したのか?」
兵は微笑して言った。『もちろん。これが証明文書だ。あの方は大変お怒りになっていらっしゃる。さぁ剣を抜け!我ら国王特殊部隊、ノーマ隊。参る!』
兵達が一斉に剣を抜いた。ジョルノは素早くバレットから飛び降り、来た道を戻るように促した。そして処刑刀を抜いた。呪が発動し、赤い光が溢れ出た。
兵が走りながら距離を詰めて来た。30人分の金属音が重なって迫って来る。
「はぁぁ……」
ジョルノは剣を肩に掛けるように上げ、一番早く来た兵を斬りおろした。呪の力は鎧や盾を無視し、空を斬っているような切れ味だった。
(10人。後20!)
そのとき、後ろから隊長が斬りかかってきていて、反応が出来なかった。
『てぇやぁ!』
「くっ……」
しかし、ジョルノに斬りかかる寸前に、ドミニクが入って、拳で剣の腹を殴り、弾き返した。
『早い……な何だ貴様は』
「ジョルノの恋人よ!なーんちゃって」
ドミニクはよろけ気味の隊長の腹を思い切り殴った。そして声をあげる暇もなく倒れ込んだ。
「ヒィィ!こいつら強すぎる!撤退だ。」兵達が手負いの仲間を見捨てて逃げようとしたとき、
「させるかっ」
ジョルノが剣で地面を強く斬り上げ、弾け飛んだ無数の石を兵達に命中させた。
「すごい!まとめて命中させるなんて」
兵達は気を失っていたが、1人は意識があり、石が当たった場所を触って呻いていた。そして、ジョルノはその兵に剣を突き立てたまま近付き、質問した。
「無駄な抵抗はするなよ!城はどうなっている?それと貴様らのような部隊は無かったはずだ」
兵は溜め息混じりに答えた
「……城には新しく処刑人に選ばれたお方がいる!そしてお前達ツェペリ家の地位は剥奪された」
「そんな!……誰だ?その処刑人は」
ジョルノは剣を鞘に納めた。相手は抵抗する気力が無かったからだ。
「新しい死刑執行人の名は、ルシファー・アジ・ダハーカ様だ。」
「ダハーカ?何処かで聞いたような……」「まぁあのお方より強い人間はいないだろうな!お前達がどう足掻こうが……」
ジョルノは兵の顔を思い切り殴った。兵は小さく呻いて気絶した。
「ドミニク、先を急ごう」
「うん。バレットを連れくる」
ドミニクが走っていった後、妙な胸騒ぎがした。
一方その頃。ジョルノの母国であるバロン国では、処刑人ルシファーの就任式典が行われていた。そして、ルシファーが民を前に、少し高い台に乗り、演説した。「みなさんこんにちは。御存じでしょうが、私は新しい死刑執行人、処刑人です。罪を犯した者を裁き、国の平和を維持します。ですが、私とて人を殺めることはしたくはありません。しかし次々と悪事をはたらく者が増え、民が恐れるようなことを見逃すようなことは出来ません。近々戦をします。相手は我が国のレジスタンスです。しかし、勝機は十分にあります。ご安心下さい!」 拍手がなった。しかし、中にはどよめきの声も聞こえた。
ルシファーの髪は、夜のように黒く、さらりとした長い髪だった。人を見透かすような不思議な目で、表情を読み取るには無理があった。そして、きれいに整った顔は、通り過ぎる女性を振り返らせた。
式が終わり、城内をルシファーが一人で歩いていると、前方から二人の男がやって来た。一人は城の警備兵で、もう一人は、この建物には到底似つかない中途半端な服装だった。
「ルシファー様、情報新聞の記者が参りました」
兵はセリフを棒読みしたかのようだ。
『初めまして!私はルールーと申します。あなたのことで取材をさせて頂きたいのですが』
「……えぇ、いいでしょう」
ルールーはその言葉を待っていたかのようだ。
『ありがとうございます。では、女性が気になっている服装ですが、国王から授かったものですか?』ルシファーの服は貴族が着る服を動きやすくしたもので、いろいろな刺繍や装飾が施されていて鮮やかだった。
「えぇ、そうです」
『では左腕にはめている腕輪はあなたのですか?』
その腕輪は血のように赤く、ぴったりと付いていた。文字を彫った後があったのだが、色を塗っていなかったので、何を意味するのかが分からなかった。
「これは私の物です。血の色を表現していて、人を殺める意味の深さを忘れないようにするためです」
『なるほど、それでは……』
そのとき、ルールーは自然と目が会った。そして、真っ黒な瞳がこちらの目をしっかりと捕らえていた。
「もう……いいですよね!」
ルールーは目線をずらすことが出来なかった。まるで石像になったかのように、指一つ動かすことが出来なかった。
「それでは、失礼します」
ルシファーは足早にその場を去った。「……おい、あんた!ルシファー様にお礼の挨拶をしないなんて失礼じゃないか!聞いてるのか?」
兵がルールーの体を揺さぶると、再び動くことができるようになった。
『っは!はぁ、はぁ、息が詰まるかと思った!でも、感覚は鮮明で研ぎ澄まされていて……(ブツブツ)』
それを聞いた兵が顔をしかめ、
「何を言っているんだ!まぁ、無理もない。あぁ言う地位の高い方に会うのは初めてだろう。えらく緊張したものだな。さあ、そろそろお引き取り願おうか!私も早く持ち場に戻らなくては」
そう言ってルールーの肩を押しながら出口に連れて行った。
7話目乞うご期待