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マウンド。   作者:
4/15

第四話

丁寧に部室を掃除する。

ふと顔を上げると、壁に貼ってある書が目に入った。

いつ誰が貼ったのかは知らないけれど、古いものだと思う。

紙が黄ばんでいる。

書と言っても、きっと過去野球部に所属していた誰かが書道の授業中に書いたものなのだろうけれど。

【目指せ甲子園!】

上手いとは言えないけれど、豪快で迫力のある字だ。

(そういえば、初めてこの部室に入ったとき、これ見て思ったんだ)

頑張ろうって。

決して自分がプレイする訳ではないけれど。少しでも選手たちの力になれるように。

(頑張ろう)

掃除を終えて、部室を後にする。

あと15分で部活終了。

冬のため、最終下校時刻が早いのだ。

「おーし!今日は終わりだ!」

監督の声がグランドに響き、部員が集まり始めた。

休憩のときと同じように、お疲れさまと声をかけながらドリンクとタオルを渡していく。

「冬の間は体づくりを中心に練習を組む。体力がない奴は走り込みをして体力増強を測ること。」

ハイ!と返事が揃う。

「うちの敏腕マネージャーも復活したことだしな。気合い入れていくぞ!」

監督がほほ笑みながらそう言葉を続けた。

「三日も無断で休んでごめんなさい。迷惑をかけて本当にすみませんでした!!」

祐咲は監督と部員たちに頭を下げた。

辛いのは、ずっと一緒に頑張ってきた彼らも同じハズだ。

けれど、三日も休んだ祐咲を誰も責めなかった。

監督ですら、部活の時間から来たことに対し、明日からはちゃんと朝から学校来いよと言っただけだった。

皆の優しさが嬉しかった。

「全くだ。この三日間、俺たちがどれだけ苦労したと思ってる?」

江崎が口を開いた。

「部室は汚い。連絡は上手く回らない。挙句の果てに水野が作ったドリンクは不味くて飲めたもんじゃなかったな。」

笑いが起こった。

皆が口々に、あれはヤバイだろ。塩だったよな。塩分の取りすぎで死ぬとこだった。

水野お手製ドリンクの批評が飛び交う。

ひでー、一生懸命作ったのに、と水野が喚いている。

「まぁ、とにかく分かったことは、俺たちマネージャーがいなけりゃ何も出来ないってことだ。」

なさけねーキャプテンだな。

ドリンクの作り方くらいは練習しとくべきだったな。

明るい笑い声が祐咲を包む。

泣きそうになりながら笑った。

部員たちが着替えてる間に部誌を書く。

祐咲がいなかった三日間は、主将の江崎が書いてくれていたようだ。綺麗な字が綴ってある。

慎の死についても。

『俺たちは野球部のエースを。かけがえのない仲間を失った。』

と書かれていた。

(慎、皆が慎を必要としてくれてるよ)

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